テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※一番初めの話から見ることをおすすめします。
できるだけ原作と一緒にするため、人格崩壊の可能性あり。
数学担当の男の先生が入ってきて、授業が始まった。
俺は適当にノートを広げて、横目であっとくんを観察する。
あっとくんが隣りにいるのに、授業どころじゃない。
あー……幸せ。
「それじゃあ、指名されたら答えるように」
教師のそんな声が聞こえた途端、教室の空気が変わった。
ピリついたというか、緊張が走ったのがわかった。
ああそうか……こいつ、たしか……。
あんまり授業に出席しない俺でも知ってる。
普通に考えて解けないような難題を生徒に突きつけて、答えられなければ罰として雑用を手伝わせるという、姑息なことをしてくる奴だ。
しかも、気の弱そうな生徒ばかり狙っているらしい。だから、俺は一度も当てられたことがない。
さらにタチが悪いことに、気に入ってる女子生徒も当てないらしい。
こいつに狙われるのは、害がなさそうな奴。
黒板に、教科書に書いていないだろう数式を書き出した教師。
書き終わり、キョロキョロと教室を見渡すふりをしているけど、こいつの考えなんて見え透いていた。
たぶん、もう当たる奴は決まってる。
「それじゃあ編入生、この問題解いてみろ」
途端、教室内は安堵と笑い声に包まれた。
「先生、編入生いじめちゃかわいそうじゃん〜」
とくに女子生徒たちが、くすくすと笑っている耳障りな声が聞こえた。
あっとくん……さっそく女子どもに嫌われたのかも。
あっとくんの隣の席に座るななもりとかいう男。こいつはたしか有名な奴だ。
双子も顔は悪くないから、ちょっとは人気なんだろう。
急に入ってきた地味な編入生が、そんな奴らと仲よくしてたら……性根の腐った女子たちは面白くないだろうな。
「はっ、かわいそ。こんな問題まだやってないじゃん」
「さすがに性格悪いやんなあいつ」
後ろから、双子の声が聞こえた。
こいつら、マジであとで絞めるか。
ななもりとかいう男は、心配そうにあっとくんのほうを見ている。
あっとくんが立ち上がり、教室はますます騒がしくなった。
「やばい、わからなくて困ってるよ」
「かわいそ〜」
「あんなん解けるわけないのにね」
うぜぇ……全員物理的に黙らせてやりたい。
でも、俺がそんなことをする必要ないだろ。
黙らせなくても……たぶんこいつら、数秒後には全員黙ってる。
「d=2b-aです」
すぱっと、そう即答したあっとくん。
その場にいる誰もが、口を閉ざした。
あっとくんは――お前らが思っている何倍も賢い人間だからな。
頭が切れるだけではなく、“ケンカも”だけど。
サラが有名なのは、その美しさももちろんだけど……いくつもの伝説を残してるから。
あっとくんの強さは圧倒的だ。
幼いころに同じ空手教室に通っていたけど、あっとくんには一度も勝てたことがない。
あっとくん以外には負けたことがないのに、あっとくんには手も足も出ない。
空手以外にも武術をいくつも習っていたあっとくんが強いのは当然のことで、この学園にあっとくんに勝てる奴なんて存在しないだろう。
……いや、ひとりだけ……“nobleのトップ”はわからないが、間違いなくあっとくんの力はトップクラスだ。
シーンと、あっとくんの回答に面白いくらい静まる教室。
当たり前だ。こんな問題に即答できるなんて、どうかしてると思う。
俺でも数分くらいはかかる。ここにいる他の奴らなんて、解くことすらできないだろう。
「……へ?」
長い沈黙のあと、教師の間抜けな声が響いた。
おかしすぎて、笑いそうになる。
あっとくんは、驚いている教師に、きょとんと不思議そうな表情を向けていた。
「あれ?途中式もいりますか?黒板に書いたほうがいいですか……?」
ふっ、たぶんあっとくんだけが、この状況をわかってない。
まあこれで……誰もあっとくんをバカになんて、できなくなっただろ。
「せ、正解だ……座り、なさい」
悔しそうに言った教師。
「……マジかよ」
双子が、驚き余ってか声を漏らす。
「つ、次の問題!黄緑あっきぃ、答えろ!」
うわ……。
八つ当たりのように、双子の片方を指名した教師。
突然のことに顔が真っ赤になっていて、俺は耐えきれず「ははっ」と笑った。
当てられた双子の片割れも、まさか当てられると思っていなかったのかおどおどしている。
「は、はぁ……?わかるわけないじゃん……」
自業自得だ。つーか、恥ずかしい奴。
俺は笑うのをこらえて、必死に正解を導こうとしているそいつを見た。
「x=12だぞ……」
お人好しなあっとくんが、ぼそっと答えを教えてあげた。
そのまま答えた双子の片割れに、教師はまた顔をしかめる。
「ちっ……」
案の定正解だったようで、それ以上何も言ってこなかった。
いい大人が……救いようがないほどダサいな……。
あっとくんが、安心したように双子に笑顔を向けている。
本当に、どこまでもお人好し。まあ……そんなとこが、昔から好きなんだけど。
「……べ、別におしえてくれなくても解けたかんね!」
教師に聞こえないくらいの声で逆ギレしている双子の片割れは、教えてもらったことが悔しかったのか、再び顔を真っ赤にしていた。
「よ、余計なことすんじゃねーよ!」
「そ、そうだよな、じゃましてごめん」
……あーもう、流石に我慢ならねー。
俺は軽くそいつの席を蹴り。言葉を吐いた。
「おい、素直に礼も言えないのか?お前がバカなのが悪いんだろうが。あっとくんに八つ当たりすんじゃねーぞ」
くっそ恥ずかしい男だな……。
しかもあっとくんが怒らないのをいいことに、好きかって言いやがって……。
あっとくんは、俺が守る。
「……っ!」
双子の片割れは、怯えたように顔を青くした。
赤くなったり青くなったり忙しない奴だと思いながら、睨みつける。
「ロ、ロゼ落ちついて……!」
あっとくんは俺を止めたあと、「て、手伝いくらいならするよ」とそいつに笑顔を向けた。
お人好しも、ここまで来ると考えもんだ。
……けど、昔からあっとくんは、困ってる奴は放おっておけない奴だったな。
昔から……なんにも変わってない。
俺が好きな、愛おしいあっとくんのままだ。
あっとくんのおかげで苛立ちも消えた。……というのに。
「……ちっ」
何が不満なのか、舌打ちした双子の片割れ。
俺の中の何かがブチッと切れ、勢いよく立ち上がった。
「舌打ちばっかうるせーやつだな……今すぐ表出ろ!!」
「ロ、ロゼっ……!」
怒鳴る俺と、怯える双子と、なだめるあっとくん。
あわや授業をぶち壊す勢いだったが、あっとくんがあまりにも必死に止めるので、俺はなんとか正気を保った。
今回はあっとくんに免じて許してやるが、覚えとけ。
あっとくんが許しても、あっとくんをバカにする奴は俺が許さないからな。
永愛
18
820
コメント
7件
俺この作品好きすぎる! 最後のロゼくんカッコよすぎる

stprも総長様も好きだからこの作品神

このお話最高かよ!好みすぎる!