テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
3
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「え?なんで?俺、兄さん以外の人からチョコ貰っても、一ミリも嬉しくないし」
「っ……!」
衆人環視の中で、さらりと特大の爆弾を投げつけるのをやめろ!!
心臓に悪すぎる。
俺が慌てて直哉の口を両手で塞ごうと手を伸ばすと
直哉は俺の焦りっぷりを見て、ふっと意地悪そうに目を細めて笑った。
「兄さん、照れてる?可愛いね」
「誰のせいだと思ってんだよ、このバカ!」
◆◇◆◇
昼休み
俺は自分の教室の机に、完全に突っ伏していた。
「おい相川、どしたんだ?朝からずっと死にそうな顔して」
「いや、別に何でも……」
心配して声をかけてくれる友人の言葉も、今の俺の耳には適当な雑音としてしか入ってこなかった。
理由? ……そんなの、自分でもよく分からない。
ただ、朝のあの光景───
女子生徒たちに囲まれ、チヤホヤされ
ロッカーが破裂しそうになっている直哉の姿を思い出すたびに
胸の奥がモヤモヤとした黒い感情で満たされていくのだ。
付き合っているんだから自分だけを見ていて当然、なんて傲慢なことは思っていない。
……いや、嘘だ。
本当はちょっとだけ、いや、かなり思っている。
だって、あいつは俺の恋人なのに、モテすぎなんだよ。
悶々と考えていた、その時だった。
「兄さ~ん」
「げっ……」
また来た。
ガラリと引き戸が開いた瞬間、2年の教室の入り口がパッと華やぐ。
直哉が姿を現しただけで、クラスの女子たちが色めき立つのが分かった。
ほんと、存在自体が兵器かよ。
直哉は一直線に俺の席まで歩いてくると、周囲の目も気にせず
当たり前のように俺の机の横に膝をついてしゃがみ込んだ。
上目遣いで、じっと俺を見上げてくる。
「ねぇ、兄さん。今日、俺にチョコくれる?」
「はぁ!? やるわけねぇだろそんなもん」
「なんで?欲しいんだけど」
「なんでって、めんどくさいから」
「え? でも、俺ら恋人じゃん!」
「こ、声がデカいんだよ!」
その瞬間、ガヤガヤとしていたクラスが一瞬で静まり返った。
終わった。完全に終わった。
クラスメイトたちの「え……? いま恋人って言った……?」という驚愕の視線が突き刺さる。
俺が血の気を失って青ざめる中、直哉だけはケロッとした顔で、何食わぬ顔をして付け足した。
「────っていうくらい、仲が良い『兄弟』って意味だけど」
(後付けがすぎるだろ!!)
周囲の連中が「なんだ、焦った〜! 本当に仲良いな、お前ら!」と笑い声に変えてくれたから
良かったものの、俺の寿命は確実に数年縮んだ。
生きた心地がしない。
すると、直哉は再び俺をじっと見上げて
今度は声を落として、トーンの低い、真剣な声で言った。
「……冗談じゃなくて、俺、兄さんから欲しい。兄さん以外のは、全部いらないから」
真っ直ぐに、吸い込まれそうな瞳で見つめられて、胸の奥が変な音を立てて跳ねた。
だから、そんな捨てられた子犬みたいな
それでいて男らしい顔をするのは反則だって言ってるだろ。
「……気が向いたら、な」
結局、俺はそれだけ言って、再び机に顔を伏せることしかできなかった。
◆◇◆◇
放課後
駅前のコンビニのお菓子コーナーの前で、俺は真顔のまま立ち尽くしていた。