コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
続きです!!
日帝視点
アメリカ「これは、どこで手に入れたんだ?」
灯りを中心に向かい合うように2人は座り込んだ。
日帝「待って…私の質問が終わっていない」
アメリカ「まだあるのか?」
日帝「あるに決まってるだろう!!まず、熊に会った時だ。何故お前は恐竜だったんだ?」
アメリカ「ああ…そんなこともあったかな…」
日帝「覚えていないのか?」
アメリカ「いや…覚えているさ。だが、あのときの女が日帝だと知ったのは書庫で会ったときだ。俺は”狩り”に夢中だったからな…」
日帝「狩り?」
アメリカ「ああ。たまにむしゃくしゃするとやりたくなるんだよ、あの熊も食い殺してやった」
日帝はその光景を想像して少しぞっとした。
アメリカ「そして書庫であのときの女だと確信した俺は君を誘い込んだ」
日帝「…どうして?」
日帝が灯りに照らされたアメリカの顔を見つめた。アメリカは美しい眼差しを向けていた。
アメリカ「君を食わせようとした。探られたら困るからな」
日帝「…」
アメリカ「悲鳴を上げると思ったんだが…そうでもなかったな」
日帝「いや…そうは思えなくて」
アメリカ「何?」
日帝「貴方の目、熊のような殺気を感じなかったから…」
アメリカ「…」
今度はアメリカが黙る番だった。
日帝「別に言いたくないなら言わなくていい。私は現に食われていないのだから」
アメリカが日帝を睨みつける。しかし、それは拗ねた子供がやるそれだったので、日帝は全く恐くなかった。
アメリカ「…君が…、お前が扉に立ったときに、母親に見えた」
日帝「…え?」
アメリカ「俺を見つけてくれた、母親に似ていたからだ」
意外な答えに日帝は再び驚いた。
アメリカ「マザコンとか言ったら今度こそ食うぞ」
日帝「…言わないよ」
日帝は泣きそうな顔をしていた。
日帝「言わないよ…」
その顔は嬉しそうにも見えるし、何かに押しつぶされそうな苦しみを持っているようにも見えた。
アメリカ「…今度は俺の番だ。日帝。君は何者だ?」
日帝は灯りを見ながら少しずつ話し始めた。
日帝「私は、この村で生まれてこの村以外は行ったことがない。そしてこれからも出るつもりはない」
アメリカ「ふん…つまらない奴。」
予想通りの答えに日帝は苦笑した。
日帝「ああ、そうかもしれない。だが、これが私の罰だ」
アメリカ「…罰?」
日帝「そうだ。私は弟を殺した十字架を背負っているからだ」
アメリカ「…それで?」
アメリカは素っ気ない返答をしたが、目はしっかり日帝を見ていた。
日帝には弟が「いた」。まだお互い思春期を迎える前の頃、ある日弟が「森に行きたい」と言ったのだ。
母親「グリズリーが出るかもしれないのよ?行ってはいけないわ」
日帝「大丈夫よ母さん、この時期は冬眠しているでしょう?はさみ罠も置いてあるし、会わないわ」
日本「そーだそーだ!!」
姉弟で抗議され、母親は折れた。
母親「仕方ないわね…暗くなる前に帰りなさいよ?」
日本&日帝「「はあい!!」」
お互い手を握って姉弟は森の中に入っていった。
日帝「そこで、グリズリーに会った…。冬眠し損ねたから腹を空かせていたのだろう…ちょうどお前が食い殺した熊のような目をしていた」
アメリカ「…」
日帝「私はパニックになっていた…”日本を守らなければいけない”という気持ちを”自分が助かればいい”という気持ちが責め合っていた…」
日帝の頬から一筋の涙がつう、と流れた。
日帝「グリズリーに足を引っかかれた瞬間、私は反射的に弟をグリズリーに向かって押したんだ。」
涙が堰を切って次々と流れる。
日帝「グリズリーが弟を食べているのを見ているしかできなかった…だんだん弟の声が聞こえなくなって…私は意識を飛ばした。その後、助けられたけど高熱が4日続いて、熱が下がったときに枕元に「神器」があった…これは、神からの”啓示”だと思ったの。”罰の代わりに人々を救え”という、免罪符であり十字架をあの時に受け取ったのよ…」
日帝は泣いて腫れた目を拭った。
アメリカ「日帝」
話し終えて一呼吸置いてアメリカが呼びかけた。視線を上げるとアメリカは手を少し広げていた。
アメリカ「来い…日帝」
アメリカは人間になってもなお美しく、何故か安心感を感じさせる人間だった。引き寄せられるように少し寄ると、背後に尾が回って軽く押された。アメリカの腕の中は以前感じた温もりを感じた。
日帝「どうしてお前の中は安心するんだろうな…」
アメリカ「それは俺だからだ。「王様」に包まれている気分はいいだろう?」
日帝「馬鹿か…」
くすくすとお互いに笑い合う様は姉弟のような、母子のような、恋人のような完成された存在のようにも見えた。