ショウタの言うレンの家はすぐに見つかった。名前で聞き込みをすると、レンは、本名を目黒蓮といい、近所でも有名なお屋敷の主人のようだった。
評判通りに、大きな家だ。
日課のジョギングでたまに通りがかるその立派な門に備え付けられたインターホンを俺はこの時初めて鳴らした。
腕の中には黒い首輪を付けた白猫を抱えている。
🖤『はい、どちら様ですか』
💛「岩本といいます。目黒さん、もしかして、飼い猫を探されていませんか?」
そう言うと、いきなり、会話が途切れ、中から黒髪で和装の端正な顔立ちの男が現れた。
飼い主の気配を感じたのか、腕の中のショウタが、俺の胸に隠れるように頭を押し付けてきている。
🖤「翔太!」
💛「おたくの飼い猫ですか」
🖤「そうです!ありがとうございます!ああ、翔太、おいで?」
蓮さんは、俺から強引にショウタを奪おうとするので、それは止めた。
💛「ちょっと、お話、いいですか」
蓮さんの家は、外観だけでなく、門の中の敷地も広々としていた。玄関へと向かう道すがら、よく手入れされた庭木があちこちに見えた。長い踏み石の先に、和風の大きな玄関があって、引き戸を開けると、すっきりとした中に品の良い調度品が所々に嫌味なく飾られていた。
棚の上に置いてある高そうな焼き物の花瓶には、紫色の紫陽花が見事に活けてあった。
💛「失礼ですが、見た感じお若いのに、こんな大きなお宅に一人でお住まいなんですか」
🖤「父の家を譲り受けただけです」
💛「そうなんですね」
🖤「父の後を継いで、今は華道の家元をやっています。父を亡くして、俺の家族は飼い猫の翔太だけなもんですから、いや、本当によく連れて来てくださいました」
💛「いえ」
🖤「どうぞ。お上がりください」
💛「お邪魔します」
そのまま、応接間に通され、対面で蓮さんと向かい合った。
ショウタは俺の膝の上で大人しくしている。
蓮さんのショウタを見る目が異様に熱っぽいのが気になった。
💛「あの、この猫なんですが…」
🖤「見たんですか」
💛「……………」
🖤「会ったんでしょう、俺の、翔太に」
💛「……はい」
そう言うと、蓮さんは、ソファの背に凭れ、大きく息を吐いた。
🖤「おかしいと思われるかもしれませんが、翔太は俺の恋人なんです」
💛「恋人?」
あまりに一方的な物言いに、思わず眉を顰めてしまった。俺のとげとげしい雰囲気に気づいたのだろう、蓮さんの顔が怒りでほんの少し赤くなる。
🖤「あなたは、翔太を猫だと思ってるんですか?」
💛「正直、よくわからないんですが…」
🖤「よろしい。今夜は泊まって行ってください。夜、3人で話し合いましょう」
💛「……わかりました」
その時。
ショウタが顔を上げて、ニャン、と鳴いた。
蓮さんが、そんなショウタをただただ愛おしく見つめているのがなんだかとても印象に残った。
コメント
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和服の端正な顔立ちののくだりでめっちゃ想像できたわ華道の家元のめめ🖤
めめが華道の家元、なんかめっちゃ似合うね 私の夜伽の時もそうだったけど、めめに落ち着いたしゃべりをさせようとするとおじ感出てしまうのはなぜなのか