テラーノベル
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「一ノ瀬さん、ちょっとええかな?」
放課後、蓮が練習で不在の隙を狙って、栞は女子生徒数人に呼び出された。彼女たちは学園3位のイケメン、扇蓮の熱狂的なファンたちだ。
「あんた、最近蓮くんにベタベタしすぎじゃない? 自分、鏡見たことある?」 「蓮くんは特別な人なんよ。あんたみたいな地味な子が隣におったら、蓮くんの格が下がるわ」
体育館裏。絵に描いたような「嫉妬による呼び出し」に、栞は震える。 「私は、別にそんなつもりじゃ……」 「言い訳せんといて! 蓮くんはうちらの――」
「――おい。誰が俺の所有物にケチつけてええ言うたんや?」
冷徹な声が響き、女子生徒たちが悲鳴を上げて振り返る。そこには、バスケの練習着にパーカーを羽織った蓮が立っていた。 いつもなら女子に振りまく甘い笑顔は一切ない。その瞳は、まるで路傍の石を見るかのように冷え切っていた。
「あ……蓮くん! これは違うの、この子が蓮くんに迷惑かけてるから……!」
「迷惑? 自分の存在が俺の視界に入る方が、よっぽど迷惑やわ」 蓮はゆっくりと歩み寄り、震える栞の肩を抱き寄せた。そして、ファンたちを鼻で笑う。
「自分ら、勘違いしとるんちゃうか。俺が誰を隣に置くかは、俺が決めることや。一ノ瀬さんは、俺が『ええ』と言うた女や。それを否定するんは、俺の審美眼を否定しとるのと同じやぞ?」
直哉自認の彼にとって、自分の選んだものを貶されることは最大の侮辱だ。 「三歩下がってついて来いとも言わん。この子は俺の後ろにおればええ。自分らは、その後ろ姿すら拝ませへん場所へ消えろ。二度と、俺の女に触るな。……不愉快や」
その圧倒的な威圧感に、ファンたちは一言も返せず逃げ出した。
「……ふぅ。怖かったな、一ノ瀬さん」 さっきまでの冷酷さが嘘のように、蓮は栞の顔を覗き込み、ニカッと不敵に笑う。 「まぁ、俺に惚れるんは罪やからしゃあないけど、自分は俺だけ見てりゃええんよ。な?」
「ちょっと待て。誰が『俺の女』だ。聞き捨てならねぇな」
そこに、イチゴ牛乳を飲み干した竜と、なぜか「除菌スプレー」を手にした透が現れる。
「扇、貴様の不浄な手が一ノ瀬に触れている。即座に離れろ。……一ノ瀬、奴の毒に当てられていないか? 清めてやる」 (シュッシュッと栞の周りにスプレーを撒く透)
「おい蓮、お前やりすぎ。一ノ瀬が引きつってんじゃねーか。……ほら一ノ瀬、あんな派手なのより、俺と一緒にジャンプの発売日並びに行こうぜ」
助けてくれたはずの蓮、潔癖すぎる執事の透、そしてマイペースすぎる王者の竜。 栞の平和な日常は、さらに遠のいていくのであった。
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