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それでは、
どうぞっ。
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忙しい日々が続き、交換日記を開く時間も少しずつ遅くなっていた。
それでも、ページが空白のまま終わる日は一度もなかった。
ある夜、來亜がノートを開くと、柚葉の字でこんな一文が書かれていた。
『もし交換日記が今日で終わりだと言われたら、少し寂しいです。
書くことがなくても、來亜に向けてペンを持つ時間が好きだから。』
その言葉に、來亜はしばらく返事を書けなかった。
代わりに小さく笑って、ページの下へゆっくり文字を並べる。
『私も同じ気持ちです。
でも、ノートが終わっても話せるから大丈夫。
……そう思っているのに、やっぱり少し寂しい。』
翌朝、柚葉はその返事を読んで何も言わなかった。
ただ目が合った瞬間、照れくさそうに笑っただけだった。
その日のレッスンは珍しく早く終わった。
宿舎に戻ると、窓の外には夕焼けが広がっている。
🩵「今日は屋上、夜じゃなくてもきれいかもしれませんね。」
柚葉のその一言で、二人は飲み物を片手に階段を上った。
屋上にはまだ明るさが残り、街並みがゆっくりオレンジ色に染まっていく。
🤍「夜しか来たことなかった。」
🩵「私もです。」
並んでフェンスにもたれ、遠くの景色を眺める。
🩵「來亜。」
🤍「うん?」
🩵「私、前は静かな時間が苦手でした。」
🤍「どうして?」
🩵「何も話していないと、相手に退屈させている気がして。」
來亜は少し考えてから答える。
🤍「今は?」
🩵「今は平気です。」
柚葉は空を見上げたまま続けた。
🩵「來亜となら、黙っていても落ち着きます。」
その言葉に返事はしなかった。
言葉を重ねるより、その静けさを大事にしたかった。
やがて夕焼けは群青色へ変わり、一番星が姿を見せる。
帰ろうとしたとき、柚葉がふと立ち止まった。
🩵「約束をしてもいいですか。」
🤍「どんな?」
🩵「特別な約束じゃありません。」
少し笑ってから続ける。
🩵「眠れない夜があったら屋上へ行くこと。」
🩵「もし相手がいたら、一緒に座ること。」
🩵「もしいなくても、『今日は先に寝たんだな』と思って帰ること。」
來亜も笑った。
🤍「それ、約束というより習慣になりそう。」
🩵「そのくらいがいいです。」
🤍「じゃあ守る。」
小指を差し出すことも、握手をすることもなかった。
ただ二人は顔を見合わせてうなずいた。
約束をしないような、でも確かに心に残る約束。
その夜の交換日記には、たった一行だけが書かれていた。
『今日は文字より景色のほうがたくさん話してくれました。』
その下に、來亜も短く返す。
『だから今日は、この一行で十分です。』
ページを閉じると、ノートの厚みは最初よりずっと増えていた。
書き込まれた文字の分だけ、二人の間には説明のいらない時間が積み重なっていた。
next…
とるて。
49
まぅ。
14
漬物🥒
37
コメント
1件
ゆあ。🕊️さん、こんにちは。第3話、読み終わりました。 交換日記が終わっても話せるのに寂しい、という気持ち、すごく分かります。物理的じゃなくて、その“時間そのもの”が好きなんだなあって。屋上での「黙っていても落ち着く」という柚葉さんの言葉が、もうそれだけで二人の距離感を全部語ってて、じんと来ました。「今日は文字より景色のほうがたくさん話してくれました」の一文が特に好きです。いいエピソードでした。