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「う……」
部屋を出た途端(とたん)、これまでとなにか違う異質な空気に神経が凍りつく。
それもそのはず。あたしは塩水を口に含んだらけして出してはいけないというルールを破ったんだ。明澄が突き落としたせいだけど。
迫るようなゾワゾワする感覚に首を振り、あたしは辺りを見わたした。
2階にはあたしの部屋、両親の部屋、物置と和室がある。
せめて場所くらい聞いておけばよかったかと後悔したが、あんなわけのわからない通話はもうしたくない。自力で探そう。
まずはあたしの部屋の隣、両親の部屋のドアノブに手をかけた。
「お母さんとお父さんいるのかな……」
いるならすぐにでも叩き起こしたい。助けてほしい。が、
「いないか……」
落胆の息を吐く。
中に足を踏み入れ、クローゼットの中やベッドの下までのぞいたが明澄はいなかった。
次に入ったのは物置部屋だ。ここは隠れやすそうだけど、ぶつかったらすぐに物が落ちてきてしまう。片付けは家族みんな苦手だ。
「明澄ー……」
小さく声を出すが反応はない。
ここでもない……となると残るは和室だけだ。
早く見つけないとうさっちと出くわしてしまうかもしれない。
あたしはそろそろと足を進めた。
「……ん?」
和室のふすまの前になにかがポロポロと落ちている。
近づいて見てみると、それは米粒のようだった。
なんでここに米粒が? うさっちから漏れたのかな。
疑問は残るが放っておくことにし、あたしはふすまを開けた。
「……! 明澄!」
明澄は壁に背をつけてうずくまっていた。あたしが駆けよると、ピクリと反応して顔を上げる。
「…………」
その瞳は憔悴(しょうすい)したように虚(うつ)ろだった。
あたしはこれまでの怒りを飲みこみ、しゃがんで語りかける。
「いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえず終わらせるよ。逃げてばかりじゃ死ん」
ガッ!
「え……」
平衡(へいこう)感覚を保てず、あたしはその場に倒れる。
な、なぐられた……?
わけがわからないまま明澄に目を向ける。そして驚愕(きょうがく)と恐怖に目を見開いた。
明澄じゃない。
それは明澄の姿をしたナニカだと、本能的に察した。なんで今まで気づかなかったんだろう。
そのナニカはシャワーヘッドを片手にケタケタと笑った。
「きみノしんゆうのマネ、ジョウズだったデショ?」