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葛葉視点
正直、実感なかった。
体育館で名前呼ばれて、
立って、礼して、証書もらって。
(はいはい、終わり終わり)
……のはずだった。
視線の先、二年の列。
赤い髪がすぐ見つかる。
ローレンは、まっすぐこっちを見てた。
目が合った瞬間、少しだけ笑う。
(……ずる)
こんな日に限って、
胸が変にうるさい。
式が終わって、校舎に戻る。
後輩たちが写真だの寄せ書きだので騒いでる中、
俺は抜け出した。
行き先は、いつもの屋上。
(来るだろ)
フェンスにもたれて待ってると、
案の定、足音。
「くっさん」
振り向くと、ローレン。
制服のまま。
まだ、先輩後輩の距離。
「来ると思ってた」
「先輩、顔に出てる笑」
笑う余裕あんの、今日だけだぞ。
「なぁ」
少し間を置いてから言う。
「今日でさ」
「うん」
「俺、学校いなくなるわけじゃん」
ローレンは黙って聞いてる。
「でも」
視線を逸らさずに続ける。
「終わりじゃないから」
一歩近づく。
「卒業しても」
低く、はっきり。
「俺は、ローレンの彼氏だろ」
ローレンの目が、揺れた。
⸻
ローレン視点
今日で、終わる。
でも、全部が終わるわけじゃない。
分かってる。
分かってるのに。
銀髪の先輩が、
もう「制服姿」で校舎を歩かないと思うと、
胸の奥が締めつけられる。
屋上で、先輩が言った。
「俺は、ローレンの彼氏だろ」
その言葉が、
証書よりずっと重かった。
「……うん、」
声が少し震える。
「俺の彼氏、です」
風が吹いて、
先輩の銀髪が揺れる。
「ローレン」
「ん、」
「俺さ」
少し照れたように。
「努力嫌いだけど」
「知ってる」
「お前と続く努力なら」
間を置いて。
「やってもいい」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「……それ」
「ん」
「告白、だよ」
先輩は笑う。
「今さらだろ」
でも、その笑顔は、
今までで一番大人だった。
人の気配はない。
最後の校舎。
最後の放課後。
ほんの一瞬、
唇が触れるだけ。
「……っ」
「記念」
「ずるい、ずるいよ先輩っ……」
先輩は楽しそうに言った。
「卒業生の特権」
⸻
下校のチャイムが鳴る。
「行くか」
「うん」
並んで階段を降りる。
制服と、制服。
今日で変わるものもある。
でも。
「ローレン」
「これからも」
一瞬だけ、真剣な目。
「俺の隣、空けとけよ」
ローレンは、はっきり答えた。
「空けない」
「は?」
「俺が、そこにいるから」
夕焼けの校門。
先輩と後輩じゃない。
恋人同士としての、始まりだった。
コメント
1件
ずっと幸せでいてくれ!