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二
場面は飛んで、がやがやとした喧騒に満ちる二年教室。
今は昼休みで皆が皆自由に過ごしていた。騒ぎ立てる者、机に突っ伏す者。あるいは食堂に向かいご飯を食べに行く者など。その様子は様々だ。
かくいう僕もその内の一人。まあ当たり前なのだが……。僕は自分で用意したお弁当を食しているところだった。
弁当に入っているハンバーグをつつきながら思う。
――――煮込み足りなかったか………………。
「……まあいいか」
そう、呟いた時。
「何がいいんだ?凛九」
僕の目の前に、ある人が椅子を引いてやってきた。長身でモデル体型、鼻筋はスラッと伸び目は切れ長、サラッとした髪を靡かせるこのイケメンは、陰山柊という。僕の親友だ。
――――改めて見るとやっぱイケメンだな、なんて思考も程々に返答する。
「いや、ただ単にハンバーグの煮込みが足りなかったなって思っただけだよ。良かったら食べる?」
「おっ、いいのか?じゃあ遠慮無くいただくぜ?」
僕の提案に、柊は目を輝かせ確認を取った。どうぞどうぞとジェスチャーをし、箸で彼の弁当箱の蓋に乗せる。
「よっしゃ。サンキュ!」
柊は礼を言い食べ掛けだった弁当に再び取り掛かる。
「そういえば、今日はお弁当箱違うね」
「んっ?――――――っ、ゴホン。あ、ああ、ゴホン。そうだな、今日は珍しく妹が作ってくれてさ。それのおかげでというか、妹チョイスの箱になったよ」
咳払いと発声を済ませて柊は言った。
「ああなるほどね。もしかしてプレゼントとかだったんじゃない?雛美ちゃんのチョイスだったらもう少し可愛いのになりそうな気がする」
雛美――――――――彼の妹はピンクやパステルカラーが好みだった記憶がある。まあ好みが変わったならそれまでだが。箱を見ると、彼のイメージっぽい青配色に、花の紋様――――――――彼はキリッとした見た目とは裏腹にお花を愛でるのが趣味――――――――柊の嗜好に完全に合わせたお弁当箱だ。
「………………」
柊は箱を凝視する。
「…………。確かにな。そうかもしれない」
やがて重々しく頷いた。
――――結構天然だよな、柊って…………。いや、天然というか、自分に興味が無いだけというか…………。彼はそうやって贈り物に気付かないことが多々ある。彼の中では、自分の優先順位が限りなく低いのだろう。自己肯定感が低いのとはまた違った、ただ単に他人を先に置きがちな性格なんだよな……。
「そういえば、柊ってもうすぐ誕生日だよな、だからじゃないか?実用的な物を送ってくれたんだよきっと。ま、彼女は彼女でわかりづらいのは認めるけどさ」
どっちの側にも立つ言葉を並べると、柊はニッと笑った。
「そうだな。ありがとよ、分かりやすく言ってくれて。帰ったら雛美に礼言っとくわ」
「うん。それがいいよ」
お互いに声を掛け合った時、教室にチャイムの音が鳴り響いた。
「おっと、予鈴か。じゃ、俺は席戻るわ」
柊はこちらに手を振って席へと戻っていく。
「…………?」
……………………その時、彼の席から黒い靄のようなものが見え揺らいだ、気がした。僕の気の疲れだと思うが、妙に不思議に思える。その後家路につき、途中妙な視線を感じながら床にはいった時、それも相まって脳裏から離れることはなかった。
この時の僕はまだ知らない。僕の眼が特別で、かつ人生を狂わせる代物だということに――――。