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これ、めっちゃ好きかも!!
うん!天才!
前々からフォローしてるんですけどこれが初コメです。ざっといいね400ぐらい押しましたヤバイですほんと好きです(いいね1000にした大罪人です)。他の方の返信であったのですが実話を元に作られたんですね…!!!大丈夫ですか…!?すまブラならぬブラすまってね☆
⚠︎⚠︎すまない先生受け、ブラック攻めです⚠︎⚠︎
⚠︎⚠︎嘔吐表現が苦手な方は回れ右でお願いします⚠︎⚠︎
⚠︎⚠︎いつものクールなブラックはどこにもいません⚠︎⚠︎
⚠⚠モブの先生が出てきます⚠⚠
それじゃあどうぞ~~
「ほら見てよ!部屋に露天風呂がついてるよ!」
「ほんとですね、これはラッキーです。」
ラッキーというのはまさにこのことを指すのだろう。
宿泊予定だった部屋が急遽使えなくなり、その旅館の一番高い部屋に案内された。
もちろん値段は変わらない。
その上、今回の宿泊費用は全て依頼人持ちだった。
「こんなに広い部屋、贅沢だね」
「そうですね、私の部屋は狭いですし」
「すまない先生の部屋と比べても広いんですか?」
「えー、どうだろ」
少ない荷物を整理し、ぐるりと部屋を一周する。
ビジネスホテルとは比べ物にならないほどゆとりのあるスペースで、広々としている。
すでに二人に課せられた依頼は終了しており、あとはリラックスするだけだった。
せっかくですので息抜きを、と宿泊を提案してくれた依頼人もさすがにここまで高級な部屋に泊まれるとは思っていなかっただろう。
格上げされたことは内緒だと囁き合いながら、自然と体は休息を求めていた。
すでに日が暮れて夜も更け始めた刻、丸1日の依頼を終えた二人は、はしゃぐには疲れていた。
「ご飯どうする?お腹減ったけど晩御飯終わってるよね」
「ルームサービスでも頼みましょうか」
その言葉に心が踊るのを実感しながら、机にあったメニュー表を覗く。
「私は先にお風呂に入りますよ」
ご飯よりも外に見える風呂釜が気になる。
部屋に入った時からソワソワしていたブラックが我先にと準備を進めるので、置いていかれないように「僕も」とついて行くと「一緒に入るんですか?」と呆れられた。
「いいじゃん、広いし」
脱衣所の先にある、完全プライベートな露天風呂。
温泉地としても知られているこの場所で、湧き出たお湯を独り占めできる極上の場所だった。
寒い寒いと言いながら、お湯が溢れる浴槽に足を滑り込ませる。
「あっつ」
熱湯だと勘違いするほど冷えきった体のせいで、足先がじんじんと痺れる。
寒空に凍えながら躊躇していると、ブラックは気持ちよさそうに全身をざぶんと沈ませた。
その姿を見て、少しずつお湯に入る。
彼の何倍もの時間をかけながら、ついに肩までお湯に浸かった時、一面の星空が見えた。
「うわ、すごいね」
「星が一面に広がってますね」
田舎の依頼先も悪くない。
濃い泉質のお湯で、独特な匂いを包まれながら蒸発していく湯気を眺める。
あっという間に冷めてしまいそうなほど外は寒いのに、湧き出る温泉は熱々だった。
会話はなかった、この非日常の雰囲気に飲まれていたことに加え、二人とも単純に疲れていた。癒されるように目の前の景色をぼーっと眺めていると、いつまでも浸かっていられそうな心地さが気持ちよかった。
どのくらい経っただろうか、星が最初の位置から僅かに移動していたのでそれなりの時間が経過していたのだろう。ずっと並んで座っていたブラックが、ざぶんと立ち上がった。
「そろそろ戻ります。すまない先生はどうしますか?」
「えー、もうちょっと」
もう少し、温まっていたかった。寒風で冷えきった体は、いつまでも温まっていれそうだった。
「そうですか、それじゃあ先に行ってますね。のぼせないように。」
「もちろん!」
湯気の奥に消えていく彼の背中を見つめながら、再び物思いに耽る。何も考えなくてもいいという状況に置かれると、普段は考えないようなことが脳裏によぎっては消えていく。
久しぶりに体験する落ち着いた時間が心地よかった。
だからだろうか、自分の体がのぼせてしまっているのに全く気がつかなかった。
そろそろブラックも着替えた頃だろうと、ルームサービスを一緒に注文すべく戻ろうと立ち上がった。
立ち上がって、一秒、二秒。さぁっと血の気が引いて、目の前が真っ暗になる。
(あ、やばい)
倒れる、と直感して即座にしゃがんだ。ちゃぷんと足はお湯に浸かったままだった。
少し明かりを取り戻した視界は、今度はチカチカと点滅する。とにかく、早くお湯から出ないと。
のぼせてしまったことは明らかだった。
ぐるぐると回る世界の中、手すりを辿ってなんとか浴槽の外に出る。
ポカポカした体が、熱を持ち出した体が、冷たい空気にさらされて冷えていく。
あまりの気持ち悪さに、動けないどころか吐き気さえしてきた。
完全にのぼせちゃったな。そう思いながら、どんどん重くなっていく頭にどうしようと思いを巡らせる。今、ここから動いたら絶対に吐く。いや、動かなくても吐くかもしれない。
すでに喉元までに感じている胃の中身を、必死に飲み下しながら考える。
とりあえず待つしかない、一旦体を冷まして、落ち着かせるしかない。
未だにチカチカした視界の中、はあはあ、と何故か息切れした体から出る息は白い。
ああ、吐くかもしれない。外で良かった。
そう思ったのと、ブラックの声が聞こえてきたのは同時だった。
「すまない先生、大丈夫ですか?」
前方から彼の声が聞こえて、目の前に影が落ちる。
「だいじょ、ばない」
口を開いたせいで、なんとか堪えていた吐き気がいとも簡単に決壊してしまう。何かを考える余裕もなく、ただひたすら悪心を流そうとした。
「え、ちょっと待ってください」
少し焦った彼の声が聞こえてきて、一瞬影が離れた気がする。
行かないで、と思った瞬間完全にブラックアウトした。目の前は何も見えず、耳元でキーンとなり水中にいるかのような音に溺れる。
倒れる、どうしよう。
方向感覚が全く分からなくなった時、気がついたらブラックが戻ってきていた。
安心していると、すぐそこに置いていたバスタオルとガウンをかけられる。
「のぼせました?すみません、気持ち悪いですよね。全部吐いてもらって大丈夫ですよ。」
のぼせないように注意したのは彼で、そのあとも浸かっていたのは完全に自分の責任なのに。背中と髪を拭きながら、優しい言葉を次々にかけてくれる。自分が惨めに感じるくらいに。
「すまない、ちょっと寄りかからせて…」
気持ち悪さに襲われたまま、その場で横になりたかった。
「え、」
「すまない、だいじょーぶだから、ちょっとだけ」
彼に体重を預けるように、体に重心を傾ける。
しっかり支えてくれるのを感じてからぎゅっと目を閉じた。
「水いります?」
前髪を拭くついでに、彼の手が額に触れる。
今濡れているのがお湯なのか、自分の汗なのか分からない。
まだ体の芯には湯船の温かさを感じられたけど、表面外の風に晒されて冷たかった。
「もう、ちょっと」
正直、水は欲しい。でも動きたくない。
今、彼がここから動いたら床に倒れる自信があった。
「冷えますからね、動けそうになったら教えてください」
ガウンをきちんと着させてくれるがままにぐったりとしていると、目の前のチカチカは随分良くなった。その代わり、今度はどくどくと頭が痛いことに気づく。
だけどいつまでも外には居たくない。
数分粘ったあと、一念発起して「部屋に戻る」と立ち上がると、案の定バランスを崩してよろめいた。
「待っててください、運ぶのでそのままでいてください」
何をこの歳にもなって、恥ずかしさと、申し訳なさと、情けさが一瞬頭を過ぎったが、
もう目の前で嘔吐してしまったから、どうでも良くなっていた。
それどころか体がひどく重かったのでどうでもよかった。
彼に完全に抱えられて運ばれる。
室内の生暖かい空気を感じながら、ベッドの上にそっと下ろされた。
「すまない…」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「水…欲しい」
起き上がる気力はなく、このまま沈んで眠ってしまいたかった。
だけどそれ以上に体が冷たさを欲している。
ブラックはすぐにキンキンに冷えた水を渡してくれた。
「ん、気持ちいい」
一気に飲み干したグラスを、返そうとした時、自分の指先が震えていることに気がついた。
「あ」
やばい。
そう直感したのは、体が本当に危ない状態であることに気がついてからだ。
「ブラック、」
視界の端に立っていた、彼の名前を発する間にも、急速に意識が遠のいていく。
「あめ」
さっきのブラックアウトとはまた違う。上から幕が降りるように景色が暗くなっていき、口が重くなっていく。
「ていけっとう」
最後の言葉はどこまで言えたのだろう。意識がどんどん沈んでいく中、空になったガラスが自分の手を離れ落ち、一瞬の時を経てガチャンと割れた音は聞こえた。
ここまで気が付けずに悪化させたのは久しぶりだった。
その後の記憶は途切れている。
気がついたら、知らないベッドにいた。
こういう経験は、普通の人はあまりしないらしい。
自分も随分久しぶりだった。
「すまない先生、気が付きましたか?」
体が重い、頭が痛い、気持ち悪い、最悪の起き抜けだけど、目の前の人のほっとした表情で彼の方がよほど最悪な経験をしたのだと察した。
「ブラック……」
すまない、これ、低血糖値発作で、昔説明したことはあったけど、ブラックの前で倒れたことはなかったよね。
僕も最近は上手くコントロール出来てたから、油断してた。
すまない、心配させたよね。
倒れる前、僕なにか言ってた?どうやってここまで連れてきてくれたの?
頭に浮かぶ言葉ならいくらでもあった。だけどそのどれも口にするのが面倒くさいほど、体調が最悪だった。
酷い発作の時はいつもこうだった。
「大丈夫ですよ、それよりも自分の心配をしてください」
言いたかった言葉を察して、一番安心出来る言葉を返してくれる。
ベッドからの景色を見渡すと、病院の一角のようだった。
多分現地の病院だろう。
「貴方が意識を失う前に「飴」って言ってたので、すぐに思い当たりまして…」
「ほら、依頼後に空腹で温泉に入って嘔吐してでしょう?心当たりしかなく、急いで糖分タブレットを口に入れたんですけどそれ以上することがなかったので医療関係などに詳しそうな銀さんに電話をしたら、もし全く反応が無いなら早く病院に連れていった方がいいと言われましてね。救急車に乗っている時も全然起きなかったので少し焦りましたよ。」
ああやっぱりそうだったのか。救急隊の方々に迷惑かけただろう。完全に自分の失態だった。
「だいぶ数値が低かったらしいですよ。意識ないくらいだったので。私も少し怒られました。すみません、気づけなくて」
「いや、それは、僕のせいだ」
悲しそうに微笑む彼に、ただ申し訳なさが募る。
違和感のある左腕を見ると、見慣れた点滴パックが繋がっていた。
「今ちょうど、日付を超えたぐらいの時間なんですけどもう少しかかるらしいですよ、これ」
滴下速度を眺めながらざっと計算すると、少なくともあと一時間はかかるようだった。
「すまない…」
「そう言う言葉はいいんですよ」
彼の顔を見るのが気まずくて、ふいと目を逸らしてしまう。
「とりあえず、朝まではここで様子見ですって。貴方はしんどいのでは?銀さんに連絡したら迎えに来ると仰っていたので、あと数時間ほどで到着するかと」
「え、それは」
「自分の担任が依頼先で救急車に運ばれたんですよ?心配してたのでゆっくり休んでください」
頭のドクドクする痛みが、僅かに強くなった気がする。
のぼせたと思っていたが、どこからが低血糖の症状だったのだろう。
考えてみれば、なぜ思い当たらなかったのか不思議なくらい、低血糖まっしっぐらな行為をしていた。
うっすらと感じた寒気から、ぶるりと布団の中で身震いをした。
深夜に到着した生徒によって、様子見から解放された夜明けに生徒の車に回収された。荷物を取りに旅館に寄ると、色々な人に心配されたらしい。
後部座席で横になっていたので直接は何も知らない。
運ばれた時も覚えてないから、横になっていた方が気楽だった。
もちろん体を起こすのがしんどかったのもある。
生徒には、ひどく心配された。
決定打は長時間浸かっていた温泉だったとはいえ、最大の原因は丸一日かかった依頼だった。
なんせ、すまないスクールに入ってからこんなふうに倒れたのは初めてだったから生徒も相当焦ったらしい。
何回か、低血糖の予兆で休ませてもらったりすることはあったけれど、倒れることなく調整出来ていた。
依頼とちょっとしたラッキーと。それらが全て悪い方に傾いてしまった。
きっと帰ったら生徒たちに説教されるだろう。
掛け布団をぎゅっと握る。ガタガタ揺れる車は、高速に乗ってすまないスクールへの帰路の最中だ。
うとうとしたり、うっすら起きたり。
遠慮して助手席に座ったブラックの顔を眺めながらぼーっとしていた。
車内は暖房で効いているはずだった。
それにふかふかの掛け布団を持ってきてくれていた。
なのに寒い。
学校まであとどのくらいだろう。
この角度では、窓からは明るくなった空しか見えない。
「どうしました?寒いですか?」
どんどん増していく寒気に耐えていると、ふと後ろを見たブラックが声をかけてくれた。
「ねぇ…あとどのくらい…?」
「あと二時間ぐらいですね」
「分かった」
「一回休憩しましょうか」
二時間は長いな、と思ったらブラックがすぐに提案してくれた。
しかも、「私ちょうど喉乾いてきたので」なんて配慮でしかないセリフを付け加えて。
運良く直ぐにあった大きめのサービスエリアで停まると、ブラックが誰よりも早く後ろのドアを開けに来た。
横になってた体を起こすと、心做しかぼーっとする。
それはのぼせとも低血糖とも違う、なんとなく気だるいような気分だった。
頭が痛いのと気分がすぐれないのは相変わらずだったけれど、もはや何が原因か分からない。
「…ない先生、外の空気吸いますか?」
はっとして彼に手を引かれて外に出ると、太陽が眩しくて空気が気持ちいい。
少し気分がスッキリした気がして、だけどブラックにピタッと額を触られた。
「…なんとなく熱い気がしますね、これから上がるかもしれませんね」
一歩一歩、足元が柔らかい感触だった。
体はふわふわしていた。
日光がぽかぽかと温かかったけれど、露天風呂の時とは真逆で、体の芯は凍えきっていた。
「寒い」
車に戻った途端、震えが止まらなくなった。手先はもちろん、体ぷるぷる震えて異常なほど寒気がする。ブラックが渡してくれた温かいペットボトルも、指が震えすぎて上手く持つことが出来なかった。
「隣、座ってほしい」
ブラックの体温が気持ちよかった。
しばらく止まらない震えに、再び走り出した車の中で背中をさすってくれた。
「薬があったらいいんですけどね、市販の薬はやめておいたほうがいいですからね」
車に乗っている別の先生が喋る。
僕はろくに反応する気力もなかった。
「他の薬たくさん飲まされましたよね?あと数時間だけ我慢しててくださいね。」
「学校に戻ったら医療関係の先生が診てくれるそうなので」
ブラックがそう優しい言葉をかけてくれたりしているお陰か震えが少し収まって、寒さから暑さまでの僅かな心地良さの中、ずっと眠れることが出来たのは彼のおかげだった。
またそこから数分経つと、今度は吐き気が増してきた。
「ぉぇ、っ、」
はあ、はあ、と荒い息が車内に響く。
その合間にも、嘔吐く音が聞こえる。
「きっつッ…」
目の前に広げられたビニール袋は、さっきからずっと空だ。
ツーと口元から伝う細い唾液以外、吐き出すものは何も無かった。
手の甲で口元を拭うと、体勢を起こして隣に座るブラックに寄りかかる。
目を閉じて気持ち悪さにしばらく耐えていると、彼はそっと口を開いた。
「一回、医療室まで頑張りませんか?」
クラクラする頭の中、彼の声がこだまする。
車内で目を覚ましたのは、学校につく直前。
寒気はほとんど感じられなく、ただただ気持ち悪かった。
「すまない先生、結構熱が高いと思いますよ」
握ったブラックの手が驚くほど冷たくて、ひんやりと気持ちよかった。
学校ではすでに先生が準備していることから、着いてまずは医療室に連れていかれる予定だった。
その前に動けないほどの吐き気に襲われる前までは。
胃の中身はとっくの昔にすっからかんだった。ずっと続いていた気持ち悪さから点滴以外の水分を摂っていなかったので、出てくるものは何も無い。それでも襲いかかる絶え間ない吐き気は、のぼせていた時よりもよっぽど辛かった。
「すまない…外、出る」
いつまで経っても埒が明かない。しばらく睨めっこしていた空の袋に別れを告げて、停車していた路肩に足を踏み出す。
日差しが眩しい。
目が眩む。
突然立てなくなるくらいクラクラとして、その場にしゃがみこんでしまった。
「すまない先生!?」
後ろから続こうとしたブラックに、慌てて支えられる。
昨日から数えて何回だろう。
なんて考えながら、立ち上がる気力もなかった。
「すまない…ちょっと……歩けない、かも」
もう一度だけ、気合いを入れて立ってみる。しかし立ち上がっただけで頭が支えられなくて、一歩踏み出す前に逆戻りだった。本当にしんどい。
早く横になりたいと思いながら、再び込み上げてくる吐き気を飲み込む。
「どんな感じですか?車椅子持ってきましょうか?」
「ん……むり」
弱音とか恥ずかしいとかどうでも良かった。
ただ一刻でも早く横になりたかった。
気配がなかった別の先生はどうやら車椅子を取りに行っていたようで、しばらくして医療関係の先生と銀さんが来た。
車外で倒れている自分を見て驚いたようだったけど、動けないだけだとブラックが説明してくれた。
動けないっていうのも十分大事なんだろうけど。
「先生!聞こえてますか?」
銀さんの声にホッと頷く。
流石銀さん、病人相手になると余計に優しくなる。
車椅子までなんとか座ると、誰かが押してくれた。
もう目は開けたくない。
「これ熱酷いな、相当高いぞ、あとは低血糖の影響だな」
「一旦検査して点滴しましょうか、脱水もしてますし」
二人が何か喋っているが僕にはあまり聞こえていなかった。
ぽわぽわとした意識の中、ほらこっちですよとベッドを案内されて、身を任せるように横になった気がする。
しんどい、気持ち悪い。
周りの気を配る余裕もなく、自分の体調だけ考えていたらいつの間にか眠っていた。
「げほっげほっ」
自分の咳で目を覚ますと、ずっと重かった体は随分軽くなっていた。
完全に風邪をひくルートに入ってしまっていたけれど、熱は少し下がったのか倦怠感はあまり残っていなかった。
「すまない先生…!」
おはようございます、と部屋を覗く彼に「着替えたい」と伝える。
汗でびしょ濡れになっていた服は、いつの間にか部屋に置いてあったパジャマに変わっていて、気付かぬうちに誰かが着替えさせてくれていたらしい。
「シャワー浴びます?お湯も沸かしましょうか?」
ニヤけた彼は意地悪な口調で質問する。
「いや…いいです。」
当分の間は。
あの温泉の泉質、体に合わなかったんだろうな。
日々鍛えているのに、こんなところで倒れたことが今更ながら恥ずかしい。
沸々と湧いてきた申し訳なさの感情に気づかないふりをして、ベッドの上で三角座りになったら背中に湿った服がべっとりとした。
せっかく誰かが着替えさせてくれたのにもう汗でそのパジャマは濡れていた。
「はぁ」
無意識に漏れたため息に、喉のいがいがが刺激される。
これはまた長引きそうだな、と僕はもう一度ため息をつくのであった。
❦ℯꫛᎴ❧