「恥ずかしくて言わなかった」
キスをしながら、この人の近くにいたいとか、あなたが必要だという気持ちが湧きあがってきた時、エレベーターが目的のフロアに到着した。
紀坂(きさか)が顔を離し、目を開けると、すぐ間近で視線が重なる。
だけどドアが開いたことで、彼がそちらを向き、視線が外れた途端に寂しくなった。
紀坂とこれで終わりたくない。
だけど 日比野(ひびの)と別れる決意ができていない今、それを口にすることはできなかった。
廊下を歩き、エントランスのガラス扉の向こうにタクシーが見えた。
先に出て行った紀坂は、運転席側へまわり、なにか話しかけた後でこちらを向いた。
「じゃあ、気をつけて帰って。もう酔い潰れないように」
言ってほんの小さく笑う紀坂は、冗談っぽくたしなめているけど、心配してくれているのはわかる。
「ご迷惑おかけしました。……色々とありがとうございました」
私***********************
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