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マサラタウンに夕風靡くー
ポケモントレーナーへの道が故郷の少年・レッドの瞳を耀かせる夢の旅路、片田舎の研究所に複数のモンスターボールが集う。虫取り小僧の一人が沈みかけの太陽を後光に浴びて家路に着いた、他意は無い。長閑な時間と優しくて懐かしい追い風がエース・キャップの頭頂部を柔らかに摩る……明日は出発の日。
「レッド、草むらに入ってはいけないと言ったでしょう。野生のポケモンが現れるのよ」
「マサラを出る」
ママがクリームシチューを作っていた、この町も暮れる……隣のオーキド博士に聞いてみたい事が沢山。今夜は寝よう、夢の中へと。
「ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界のあらゆる住処に棲む小さな生き物……全150匹の図鑑を完成させた者だけが名乗る事の出来る“最高な称号”……Are you OK?」
明晰夢を見た、未来のオレ自身の姿? 周りに沢山の友人達……皆がトレーナー。肩に乗っている見知らぬ黄色い鼠のポケモンが言葉を喋ったー
「起きろ、ママが心配してるぞ」
「え……?」
朝。何時もの斜陽の光がカーテンの隙間から優しくオレを照らす、いよいよ今日だ! ベッドから飛び上がりパジャマを着替え鞄とモンスターボールを腰に掛け階段を降りた。
「どうしても行くのね、今更止めはしない」
「研究所でパートナー貰うんだ。自転車の空気は?」
ママが洗濯物を乾かし静かに微笑む、どこか儚げだった。
「オレ行くよ。冒険の大舞台が待ってるんだ」
玄関のドアーをノックする音。博士!?
「よぅライバル! 早くポケモンバトルしようぜ、マザコンの性格叩き直してやるよ」
グリーンが前髪を向かい風にはためながらオレを見下ろしていた、ピジョン?
「早く進化しろ。ヒーローは伊達じゃないぜ」
ママが調理しに台所のキッチンに立った、何も言わなかった。
「行きなさい。偶にはパソコンのビデオ動画で近況報告」
「ありがとう、お母さん!」
グリーンは腕を組んで相変わらずキザだった。食パンを咥え研究所の扉を開けた瞬間、ポケモンの鳴き声が聞こえたー
「これこれ。我が儘な子じゃ、グリーン! 手を貸してくれ」
「遅ェ。草、火、水。どのタイプを選ぶ? 弱点次第」
オーキド博士はパソコンに文章を打ちながらデータを算出している、他意は無い。
「レッドよ。旅立ちの日じゃな、これがポケモン図鑑だ……一体選べ」
フシギダネ。ヒトカゲ。ゼニガメ。小さな瞳でオレを不思議そうに眺めている、研究員が歩み寄って来た。
「マサラを発つ二人のトレーナー……世界は広いよ少年達。最も私の声など届かない、か」
「決めた! フシギダネ。博士、いい!?」
「大事に育てろよ。ポケモンナンバー№001じゃな」
グリーンはヒトカゲをボールの中に入れた、早速!?
「行け、バトル・ファイトの鐘の音色がマサラの風を誘う。まだ見ぬ新天地の境界へ」
「俺のピジョンに勝てるか、レッド!」
草むらから鼠が一匹、二人の仲違いの輪の中に邪魔をする。博士と研究員は慌ててモンスターボールを投げたー
「№025=ピカチュウじゃな。レッド! 二匹目の相棒だ」
「サンキュー博士! グリーン、飛行タイプは電気が弱点だぜ。ピカチュウ、電気ショック!!」
マサラタウンに雷鳴轟く、風雲急を告げる白昼夢の戦い。二対二のタッグバトル! 勝つのは俺だー
「ピジョン、風起こし! ヒトカゲ、火の粉!」
「寄生木の種、どうする?」
フシギダネ……そうか、草タイプの特性! レッドは外に出て快晴な青空の下、ソーラービームを解き放った!
「チッ、姑息な奴なのは俺のミスか」
研究員はレッドの右手を天に翳した、オーキド博士はポケモンマスターの詩を詠む。
朱き魂
新価を刻む“友”の誓い
言葉の壁を超えた、世界地図は
心の故郷を玉の中へと夢の片道切符に?
少年は伝説を紡ぎ、神話を遊び尽くす
相棒は君の名を馳せる“明日無き未来のしるべ”
いつも一緒、ずっと一緒
絆を試す、好奇心を僕らだけの思い出から
クロス・オーバーの森羅万象を実現させた奇跡
「勝利」「ゲーム」「№151?」
未知が満ちてる……愛の浪漫
生命の鼓動よ。終わり無き魂の輪舞曲よ
現実に成るキミノトナリ
「レッド。グリーン。来なさい」
図鑑に載った二体のポケモンがオレの腰のベルトで騒いでいる……始まりの地。オレの手持ちは【フシギダネ】、【ピカチュウ】! 草むらの声が犇めき背中を押す進化への邁進のロードの道、レッドは自転車を駆るー
「じゃあな。俺のクロ星でいいぜ! カント―地方を遊び尽くす……ピジョン、空を飛べ!」
あの方角はトキワの森、オレも黙っちゃいられないー元気にマサラの草むらを闊歩する朝の光景が背中を押してくれている。目指せ150匹の図鑑完成とポケモンマスターへの道。モンスターボールが弾けた!? ピカチュウがほっぺたに電気を溜めて今にも大喧嘩しそうだった。
「そういう系」
気性の荒い子ネズミだな、ボールの中を嫌がっている……良しーお前もこの目で確かめろ、伝説の紡がれる瞬間を!
「行こうぜピカチュウ!」
思い出せない夢の続きと偉大なる航路がまだ見ぬトレーナーの意志の強さの総称、まずは経験値とLEVEL上げの特訓の下積み時代だ。フシギダネ、大丈夫か?
「ダネダネ~」
ジムリーダーを倒してバッヂを手に入れなきゃ、夢のまた夢ーグリーンの事だ……好戦的で頭の切れるライバルならオレと同じ考え方。草むらの茂みは野生のモンスターで溢れ返っている、まだ見ぬポケモン、覚悟しろ!
「モンスターボール」
コラッタとポッポをGETした! ポケモンセンターのパソコンにデータを入力する、老人が話しかけてきた。
「君もポケモントレーナーなのかい」
「はい、セキエイ高原で四天王を倒す未来の“神”です」
老人は杖を突きながら顎鬚を掻いた、両手にはきずぐすりとふしぎなアメ?
「持って行きなさい。旅は借金をしてでも行くべき、私のただの戯言だ」
「ありがとうございます!」
エースキャップは真紅の証、情熱のレッド! オレの名と同じ夢見がちなビッグ・ドリーマーの永遠の輝きだっ! トキワシティは平和な街だった。若者は気付いてる、バトルの興奮と共に暮らす最高な喜びにー
「気を付けてゆけ。どんな荒波の向かい風にも歯を食いしばって強く生きろ、その傷はかけがえの無い君の生きた証と礎になる」
「オーキド博士みたいに詩でも書いたら読みますよ。失礼、風が呼んでるんでー」
「若さは宝さ。健闘を祈るぞ」
冒険の舞台は出揃った。カント―はオレがコンプリートする、空海大地……ポケモン。お母さんの編んでくれた上着とピカチュウ達、頼もしき仲間、どっからでもかかってこい!
「ピカピカ」
ジムリーダーを倒せ? LEVELを上げなきゃ風の噂じゃタケシは岩・地面タイプ使い、手持ちの相棒達じゃ相性がイマイチ。この辺でGET出来る分布図は……と。水と草が弱点、良し!
「フシギダネ、やれるか?」
ニドラン♀、♂とエスパータイプのケーシィetc。ソーラービームでイチコロさ、新しい技や特性も覚えなきゃ強くなれないー150のまだ見ぬ奇跡が大舞台で待っている……戦え!
「レッド。調子はどうじゃ?」
寄り道してはパソコン越しの博士と連絡を取り合う、グリーンの奴、バッヂを四つも取ったのか!? 出し遅れた、負けないぜ。
「ふむふむ。地図を見ろ、バランスよく六匹のメンバーを揃えるのだ……色々なタイプと出会え」
「ピカチュウは中々の強さですよ」
店内のポケモンセンターは静かで穏やかな時間が流れている、図鑑の液晶画面は午後三時半を過ぎていた。世間は今でもめまぐるしく動く彼等との共生ー待ってろよ世界!
「今夜の宿を探しておけ。ポケモンと一緒に休むのもトレーナーの仕事だ」
「お金あるかな。財布はっと」
「おてつたびはどうじゃ? 元気なお前にピッタリだぞ。仕事は仕事、バトルはバトル……見切りとけじめをつけて進めよ」
「さすが、良い事言う。メモっと」
「達者でな。グリーンもわしの自慢の孫じゃ、互いに刺激し合って旅をせよ」
あっという間に太陽は沈み夜が訪れる……一番はピカチュウ! 電磁波としっぽを振る技を覚えたてだった。後のメンバーも本調子、明日にでもタケシを倒せるかも?
「ピカピカ」
早く寝ろ? そうだな、レポートをまとめて……晩御飯のカレーもみんなで食べてお腹一杯! 温かいベッドの中で何度も噛みしめる、今というサイコーな日々を。
「ピカピカ!」「ダネダネ~」
ポケモン同士のコミュニケーションの会話も絆を深める良い機会だ……オレは睡魔に駆られ夢の中へと落ちていった。明日は必ずやって来る、見てろよグリーン。
「レッド。自転車はどうしたの? 危ない真似しちゃだめよ、体が資本なんだから」
「ピカピカ!」
「まあ怖い、物騒な魔物ね! マサラにはいつ帰って来るの? あなたの好きなご飯を作ってあげる」
「ダネダネ」
「夢みたいって? そう……博士も心配してたわよ。偶には顔見せなさい」
? バトル・ファイトの鐘の音色は!? ポケモンマスターへの道は!? まだまだ……レポートの続きがあるのさーお母さんは下がってて見てて、行くぜグリーン!
「ピカチュウ、100万ボルト!!」
「……」
斜陽が鼻先を擽る小春日和。夢の内容は憶えていない、ニビシティへの一本道が新世界の足跡を刻む技マシンとの出会いを祝福しては、眼前を塞ぐ巨大な山々に戸惑いを隠せないレッドは自転車での通過を諦める。
「新手のポケモンか? デケェ~」
ピカチュウの電気ショックにもびくともしない、回り道だ。フシギダネの居合切りが活路を見出した、あれがオツキミ山? あなぬけのヒモとフラッシュの秘伝マシンが最大の一手の武器……風がオレ達を導く、カント―なんて狭い。ポケモンジムに名乗り出ようー入り口付近のDJが語りかけて来た!
「夢見る兄ちゃん俺が怖いか? 一筋縄では通らせねェ、トレーナーの端くれならビビってんじゃねーぞ! タイマン張ろうぜ、Get ready!?」
見物客が観戦者となって視線を集めた、ここで格好良い所見せたらテレビ局の取材でも殺到するかも、そしたら有名人! 右肩のピカチュウのフォローの声で我に返った。
「なかなかやるな。イシツブテ、頭突き!」
レッドは勝利を確信した、弱点タイプは草一筋! フシギダネのLEVELは爆上げ。バトル・ファイトは熱を帯びて激走する勝利と敗北の讃美歌をどこまでも奏でる……順風満帆、そしてー
「よく辿り着いた。俺がジムリーダーのタケシだ、バッヂが欲しいか? 少年」
「オレ等と戦ってくれ、男のロマンに二言は無い!」
勝負! ジムに風雲急告げる、問答無用……“本気”と書いてマジと読む。全員参加の激しい攻防の末、最期のポケモンと火花を散らす!
「イワーク、岩雪崩!」
「攻略法は……コレだッ」
ソーラービーム一発、斃した……タケシが両手を叩き笑顔を浮かべた。君の勝ちだ!
「旅路はこれからだよ。お守りとして使え、必ず役に立つ」
フシギダネ達もよく頑張ってくれた。攻略完了ーボロボロのグローブと砂埃がオレの船出を祈ってくれている。ピカチュウは帽子の上でバッヂを掲げていた、いつまでも……
グリーンの姿あり、オツキミ山を抜けて太陽の日差しを目一杯浴びた彼等に待ち受ける運命とは? ポケモンマスターへの階段を昇り続けるレッドよ、君に幸あれ! まだ見ぬトレーナーとの夢の共演=大冒険の大海原へと“伝説”は約束された、マストの帆を射して舵を切れ! 一番、二番道路の草むらは君の庭。埃被った地図を広げて序章が眼下に広がる異界の地を示している……パソコン画面の母と父、オーキド博士は笑顔を浮かべて手を振った。世界は広いー快晴の青空の下、自転車で駆けてゆく子々孫々の若獅子、ココニアリ!
「ヘェ……赤い男子、レッド」
「マサラなんて田舎過ぎ。農業やってろ」
「俺っちの方が進化したもんねー、四天王ショボ」
「努力見せてみろ。好きこそものの?」
いつか描いた近未来、憧れのスポットライトを浴びて進化したレッドを待ち受けるまだ見ぬ強敵=親友達。ピカチュウはほっぺたを抓った、夢じゃ無い! ボールの中は浪漫で溢れ返っている……幻のポケモンが森羅万象をめくるめく新時代の行方を創り上げた証明と新しい歴史の叙事詩の絆を繋ぐ!
「ロケット団団長サカキ様。ミュウツーは依然としてカプセルの中です」
「手に入れるまで帰って来るな」
「はっ!」
敵意が牙を剥くー神化への一方通行線上のGのアリアは一期一会の邂逅を心待ちにしている、軌跡はとうに起こした。シンフォニーは尊き存在……永遠の友情を抱き寄せては【胎動】を呼び覚ます! レッドはエースキャップの鍔をグローブ越しに吹いた。