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「 ね、あなたの名前は? 」
「 僕は、ノートン・キャンベル 」
「 ノートンさん!よろしくね 」
僕は軽くお辞儀した。
メルという女が来てから数日経つ。
日にちが経つにつれて捜索をする人達が洞窟に入ってくることが多くなった。
きっとメルを追ってきた奴らだろう。
まだ僕とメルがここにいることは知られていないようだが、捜索をする人達の足音は少しずつ近づいている気がした。
ここがバレるのも時間の問題だ。
1週間後にはメルは捕まって刑務所にでも入れられるのだろうか。
「 見て!!ノートンさん!! 」
「 薬の色が変わった!!初めて見る色だよ!! 」
「 よかったな 」
僕は見向きもせず作業をしていた。
そんな僕を見てもメルは気にも止めていないようだ。
僕に興味があるのか、ないのか。
僕に話しかけはするが、干渉はしてこなかった。
ここ最近の生活は悪くないな、なんて思い始めていた。
「 …お前、気にしないのか 」
「 何を? 」
「 捜索隊がこの辺りをうろつき回ってる 」
「 お前を探しているんだろう? 」
「 そうだね 」
「 捕まりたくはないけど、ここが見つかったら潔く捕まろうかなって思ってるよ 」
「 … 」
少しモヤッとしてしまった。
本当にメルはそれを望んでいるのだろうか。
「 お前はそれでいいのか? 」
「 …いいよ 」
「 …ッ、嘘をつくな 」
僕は思わず彼女に近づき胸ぐらを掴んだ。
「 わっ!?急にどうしたの…? 」
彼女はぽかんとしながら僕に問いかける。
「 本当は捕まりたくないんだろう? 」
「 何故そうやって諦めるんだ 」
「 んー… 」
「 逃げる場所なんてもうないからかな 」
「 こんなに隠れるのに適してる場所までバレたら、次はどこに逃げればいいかわからないし 」
「 … 」
「 私は罪人だし、いっそ捕まってそのまま死んだら少しは罪を償えるかなって思ってさ 」
「 …そうかよ 」
僕は乱暴に胸ぐらを離し、また作業に取りかかった。
少しの間、メルは僕のことを見つめていたが、しばらくしてまた実験を始めた。
thank you for reading ᩚ