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また1日、1日経っていく。
ゆっくり、ゆっくり時間は進んでいく。
捜索隊の足音は迫るばかり。
メルは気にせず実験をしている。
君の時間だけ、止まっている感じがした。
時間も経って、捜索隊も近づいてきて、僕の心だって… 変わっているのに。
君だけ何も変わらないまま。
「 ね、見て! 」
「 …なんだ 」
「 この色、凄くノートンさんって感じ! 」
「 この色のどこに僕を感じるか分からないな 」
「 私には感じるの! 」
そう言ってメルはその薬を一気に飲み干した。
「 …は? 」
「 お前、その薬に石を入れてたんじゃ… 」
「 大丈夫だよ、ちょっとしか入れてないし 」
「 どう考えても大丈夫じゃないだろう!? 」
「 今すぐ吐き出せ!! 」
メルは落ち着いていた。
「 大丈夫だって 」
「 そのうちどうにかなるでしょ 」
「 ならないだろ…! 」
「 ノートンさんの前で飲んじゃったのがダメだったねぇ 」
「 まぁ忘れてよ 」
メルはヘラヘラしながらそう言った。
僕は更に問いかけることなどできなかった。
言葉に詰まった。
少しの間沈黙が続き、メルが口を開いた。
「 ノートンさん、お金欲しい? 」
「 欲しいに決まってるだろ 」
「 急になんだ 」
「 じゃあ、私がノートンさんのお金になるよ 」
「 …は? 」
「 お前、何を言ってるんだ…? 」
僕には言っていることが理解できなかった。
理解したくなかった。
メルは、自分の体を僕に売ると言う意味で言ったということなんて、
理解したくなかった。
「 … 」
「 ノートンさん? 」
言葉が出なかった。
なぜ君は平気でいられる?
なぜ平気でそんなことを言える?
それに、出会ってからまだそんなに経っていないやつに何故そんなことを言えるのか?
この人は本当に自分の命などどうでもいいと思っているんだ。
僕は、何故…君に、生きて欲しいと、思ってしまうのか。
自分が分からない。
メルのことも分からない。
何も分からない。
「 答えは、いつか出してね 」
「 私が捕まる前に 」
メルは少し微笑んで実験に戻ってしまった。
僕はその場に座り込んだまま、動けなかった。
今度は君が変わって、先に進んでいるような気がした。
そして、僕だけが止まっている気がした。
人というものは、こんなにも他人を変えてしまうものなのだろうか。
その日は、視界がずっとボヤけていた。
目を擦っても、擦っても、視界はまたすぐボヤける。
僕の足元は濡れ続けていた。
thank you for reading ᩚ