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今年の冬、雪山で遭難した。登山が大好きな友達に付き合わされ、遭難した。
彼は頑張って出口を探そうとし、どんどん迷っていく。
夜になっても諦めない。腹もすかして、喉も枯らして、助けを求める。
夜は暗いものだから、足元がよく見えない。懐中電灯を照らしながらでも彼は川に落ちた。
雪山で、氷の中。彼は必死に泳いで陸まで上がってきた。川の水は冷たかったみたい。
彼は疲れたのか、真っ白い地面に座って「休憩しよう」と言ってきた。僕は了承した。
彼はその内暑いと言い出した。ものすごく暑いと。そして、分厚い防寒具を脱いでいく。
トチ狂ったかのように。服を全て脱ぎ切って、裸になって、雪の中に埋もれて行った。
救助が来た後も彼は見つからなかった。僕は何処にあるかわからない彼の死体に手を合わせ、こう呟いた。「僕の我儘、聞いてくれてありがとう。そして、川に突き落としてごめんね。」
今年の冬、彼は死んだ。
矛盾脱衣−おしまい。