何故このオッサンがいる?「夢に出てきたオッサン!?」「失礼だな!夢じゃない。」夢じゃないなら背中の傷はなぜないんだろう。そう思っていると。
「背中の傷がないことか気になるだろ?」心を読む能力でもあるのだろうか、いやありそうだが。
そう考えているとオッサンは話し始めた。「信仰心を持つ人間の血液中に聖なる銀を取り込ませると能力が発現する。注射器では重い銀を注入できねえからな、ああするしかねえんだ。」「背中の傷は」「発現する瞬間に消える。原理は知らねえ。多分エンペラーもだ。」かなり信じがたい。なら私の能力は何なのだ。自分もわからないのに本当にあるのだろうか。
「まあこれ食って元気だせ。」出されたのは具のないシチュー。その質素さに思わず涙ぐむ。「クッソー」と言いながら食べてみると意外と美味しいのがわかる。
具がないから癖がなく、食べやすい。とろみもあって具があれば普通のシチューと遜色ないだろう。でもやっぱり質素過ぎて、腹の足しにはならない。
平らげて泣く泣く「ごちそうさま。」という。「少ねえか!ガハハ!」そう言って食器を下げに行くタスク。
戻ったタスクは言った「最初は誰も自分の能力なんざ分かんねえ。誰が見てもな。でもそのうち気づくさ。命が危なくなったときいきなり発現したり、ふと使えたり。人それぞれだな。」
聞いて気になったことを聞いてみる。「エンペラーの能力ってどんなものなんだ?」「知らない。」「は?」思わず聞き返すと「何個かあるのか。はたまた一つの能力で切り盛りできるのか。とにかくわからない。ボスは教えもしないし、知ってるやつはもうすでに肉塊だよ。」ゾッとした。
「お前に取っちゃ知らんが、いい知らせだ。」ぼーっとしてると話しかけられた。
「お前にはチームに入ってもらう。まあ俺のチームだが。安心しろ話はつけてあるしいい奴らばっかだ。」安心しろなんて言われてもこの状況で安心なんて無理な話だ。
「おまえの体力が回復したら紹介するよ。それまではゆっくりしてな。」
そう言われ、ゆっくりするが休まっている気は全くと行っていいほどしない。
そんな休みとは言えない休みを、知らない組織の、知らない建物の中で過ごしたのだった。
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