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「そんな、無茶苦茶なことをおっしゃられても――」

「おまえは気持ちよさを感じる。俺は夢の番人として、活動できるエネルギーを得られる。まさに、ウィン・ウィンの関係が成り立つということさ」


若い男の心を揺さぶる言葉を選んで、優しく語りかけた。それなのに目の前で立ち竦む顔色は、暗く渋い表情のままだった。


「……おまえの名前は?」


ここは重い空気を変えなければ思い立ち、あえて違うことを訊ねてみる。


「名前っ、あのっ、古川敦士(あつし)です」

「敦士か。いい名前だな」

「えっと、夢の番人さまのお名前は何ですか?」


(自分の本名を名乗ったところで、それは意味をなさないだろう――)


「残念ながら名はない。夢の中で生きるものに、名など必要ないからな」

「そうですか」

「そう、夢の中だから大丈夫だ。誰にも知られることはない」


言いながら若い男に向かって、細長い両腕を差し出した。


「敦士、こっちへ来い。さあ……」

「でも――」

「俺は人の温かみを、夢の中でしか感じることができないんだ。現実世界ではこの躰はすべてをすり抜けてしまうせいで、何も感じられなくてな。自分に降り注ぐ日差しの暖かさや、通り抜ける風さえもわからない。だから今こうして、おまえの躰の温かみを感じたい」


涙ながらに訴えてみたら、後退りしていた足が自分に向かって歩を進める。やがて無言のまま、ぎゅっと躰を抱きしめられた。迷うことなく若い男の躰に、すがりつくように抱きつく。


「夢の番人さま、すごく躰が冷たくなってます。大丈夫ですか?」


自分を温めるように、躰に回された手が背中を擦ってきた。鼻腔に感じる若い男の香り――そして肌が直接重なった部分から、熱が伝わってくる。その瞬間に後孔が疼きはじめて、じわりと湿り気が帯びていくのを感じた。


「敦士、おまえの熱を俺に分けてくれ。冷え切った躰を温めて……」


形のいい耳元に震える声で告げると、抱きしめられた躰が勢いよく引き離された。

若い男に拒絶されたと思った矢先に、大きなてのひらが自分の頬にごしごし触れる。手荒な感じで涙が拭われたことに、驚きを隠せなかった。

歪んだ関係~夢で逢えたら~

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