「… もう、ここまでかな。」
辺りは暗くなり始めていた。
死ぬのが怖い。けど、気分は楽だった。
最後にこんなものを見れたのだから、満足しているのかもしれない。
でも、みんなに会いたい。
1人で 死ぬなんて。
体の痛みより、死への恐怖より、1人のまま最後を迎えることが怖かった。
…ずっと、独りだった。
……眠い。
「ドォン!」
「…っ…!?」
大きな破壊音と衝撃破が突き抜ける。
『ダンジョンの中には、外敵を駆除するための魔生物を生み出すものもある。』
「ガー…ディアン…!」
ダンジョンの守護者。ダンジョンボス。
通常の魔獣とはことなり、ダンジョンが宝を守るために生み出す”個”。
全長は…半球の高さの数倍ほど…。
なんで、このタイミングで… !。
さっき歩いていた時は音もしなかったはず…。
敵の姿が視界に入ったが、視界は既にかすんでおり、詳細な形は分からない。
どうせこの体では戦うことも逃げることもできない。
少女の視線は、自分を脅かす巨獣より、精巧なだけの球体に向いた。
ずっと 1人だった。
崖から、落ちてからのことじゃない。
私には 小さい頃の記憶がない。
両親はいつかに他界していて、家族といえるのは、
2つ上の兄だけだった。
覚えている最初の記憶は、11のとき、 兄が私を庇って死んだところ。
私は 家族と過ごした時間も 家族の名前も 何も覚えてない。
退屈だった。
家族がいないというだけで 覚えてないというだけで
嫌煙され 憚られた。
1人で いることが辛かったわけじゃない。
誰も、私を____
巨獣は”外敵”へと体を向ける。
球体は、守られていた。
球体は、不変だった。
球体は、常に一つだけだった。
__檻から 連れ出して くれなかった。
巨獣の爪が、振り下ろされる。
「お前も ずっと1人じゃ 寂しいよね。」
それを 手に 取る。
(パチッ)
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