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カールがぶるぶる首を横に振って、激しく拒否したので、動きを止めてやった。

「カール、早く言わないと――わかるよな?」

「あまり……ふぅ、私を虐めないでください。我慢するのが、本当につらいんです」

「俺だってつらいんだぞ。お預け食らったままなんだからな」

綺麗なカーブを描いた頬に、キスを落とした。唇に感じるカールの皮膚はすごく熱く、恥ずかしがっているのがわかる。

「申し訳ございません。あのですね」

「うん?」

「私が過去の気持ちを告げることで、アンドレア様が不快に思われ、嫌うなんてことを」

「嫌わない、むしろ好きになるかもな」

言いながらぎゅっと腕に力を込めて、カールを抱きしめてやった。カールは両手で俺の腕に触れ、優しく撫で擦る。

「アンドレア様は、私がほしい言葉ばかり仰います。それをお返ししたいと、常々に思っているのに、なかなかできそうにありません」

「なにを言ってるんだ。今こうして腕を撫でられている時点で、返されている気分だぞ」

「これだけで?」

恐るおそる振り返り、俺の顔色を窺うカールに笑ってみせた。

「ああ。言葉にしなくても、伝わる想いはある。だから、そんなことを気にするな」

カールは、俺の腕に触れていた手で袖口を掴み、暗く沈んだ声で告げる。

「アンドレア様がパーティーやお茶会などで、ご令嬢たちと仲睦まじくしているのを見ているときに」

「うん?」

「とても不愉快な感情を、胸の中に抱いておりました。私はいつも一番近くにいることのできる存在なのにと」

「そうだな。おまえは、いつも俺の傍にいた。彼女らと喋るよりも、カールのほうが盛り上がるのは間違いなしだ」

軽快な口調で告げたら、カールは掴んでいる袖口をくいくい引っ張り、ジト目で俺を見る。

「それはアンドレア様が、私から注意を受ける行為で、ムダに盛り上がることでしょうか?」

「それもそうだが、今みたいにこうしてくっついてるだけでも、盛り上がっているだろう?」

「確かに一部分が、随分と盛り上がっているのを感じます」

振り返っていた顔が戻り、表情が読めなくなったが、ご機嫌ななめなのは口調でわかる。

「それで、カールは彼女たちと盛り上がっている俺を見て、呪いでもかけようと考えたりしたのか?」

カールの機嫌を直すために、話をもとに戻した。

「そうですね、私は自分に、それをかけました。アンドレア様と接しているときは、絶対に気持ちを悟られないように、感情を絶対に殺すという呪いです」

憂鬱をまざまざと感じさせるカールの声に、俺まで感情が引きずられて、暗くなってしまう。

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