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「すんません、シックス。我儘聞いて貰って……ほんと、大丈夫でしたか?」
「い、いえ。私も久しぶりに、直接? お話したかったですし。それにファイブのお陰で、またエイトにお声掛けするきっかけが作れましたから」
リアルの方でも色々あって悩む事が多かったのだが。
本日、担当さんを通して連絡をくれた555。
どうやら賞金首の新装備の事で相談というか、そっちに関わる事例でoctopus8に相談したい事があるらしく。
前回私達が繋がりを持ったと聞いた彼が、私に仲介役を頼んで来たのだ。
そんな訳で、オープンフィールドとは違う仮想空間に6keyでログイン。
すると既に555は待っており、二人揃って雑談を繰り広げていると。
「す、すみません遅れました! 本当にすみません!」
本当にちょっとだけ送れて、octopus8が同じ場所へログインして来る。
相も変わらずシスター衣装に身を包み、パタパタと慌てながら此方へ走って来る姿は、とてもじゃないが賞金首の一人には見えないが。
「ちょっとだけ、お久し振りです。本日はお時間を頂いてしまって――」
「いえいえいえ! シックスからの呼び出しだったら、いつでもどこでもOKですので! ホント、嬉し過ぎて担当さんにしつこく嘘じゃないか確認したくらいです!」
とか何とか、改めて二人揃ってペコペコし始めてしまった。
私と同じような性格だから、接しやすい。というはあるんだけども。
やっぱり最初は、お互いこういう感じになってしまうのは仕方ないと言うもの。
これもまた、コミュ症のお決まりなのです……。
「あ~えぇと。むしろそういう事になりますと、俺の方が申し訳なかったっていうか。お二人共、今日は時間を作って貰って本当にありがとうございます」
ちょっとだけ困った様な笑みを浮かべてはいるものの、この中で一番コミュニケーション能力が高い555。
私とエイトではいつまで経ってもお互いに頭を下げていそうだったので、正直助かった。
「あ、ぁ、えっと! 初めまして! octopus8って言います! 今日は人と関わるきっかけを作って頂いて、本当にありがとうござい――じゃなかった。た、担当さんから聞いた話では、私に何か相談があるって。私なんかでお役に立てる事があれば、何でも聞いて下さい!」
「お、おぉ……エイトは全然喋らないって噂だったので、どうやってトークを引き出そうか悩んでたんですけど。めっちゃ普通に喋ってくれるじゃないっすか! ありがとうございます!」
「いえいえいえ! こちらこそ! あ、あのっ! 煩かったら、言って下さいね? その時は、黙ります……ので」
「いやいやいや! むしろガンガン喋っちゃって下さい! その為に来てもらったんすから!」
多分彼女、私とこういう所も似ているんだと思う。
喋って良いという環境と、喋りたい内容が被った時だけ、いっぱい喋れる。
分かる、すっごく分かる……とか何とか、一人でウンウンと頷いてしまった。
そんでもって、普段全く喋らないと噂されていたoctopus8、元々の名をsilent。
その彼女が普通に喋り始めた事に安心したのか。
555の方もホッとした顔を浮かべてからは、もういつものテンションに戻ってしまった。
何でも今後控えている“賞金首の新装備”の件で、ファイブが狙っているのは改造系のスキルを向上させる様なアイテム各種。
しかしながら、わざわざ運営から用意される“特別な物”と考えると……適当な物では、インパクトが薄いと考えたそうだ。
もっと簡単に言うのなら、彼が作ろうとしている改造車など、その他新規乗り物各種。
今の段階では難しいと本人は想像している様だが、クラフトの達人であるエイトなら今でも自力で作れてしまうのでは? という、質問をしたかった様だ。
そしてそれが可能となるのなら、どうすれば良いのか。
これらを聞いた上で、諸金首として用意される“特別”はどんな物が良いのか。
こういうのを、クラフト専門科同士で相談したかったみたいで。
「そう、ですね……私は、乗り物専門という訳ではありませんけど……けど、さっきファイブが言っていた能力を付与させるのなら、現状でも可能だと思います」
「マジすか!? ちょっと詳しく聞いていいですか? どうしても現実でも出来る加工ありきで考えちゃって、結構行き詰まる事が多いんすよね……この車だと、この辺が限界かぁ~みたいな」
「そうですね、この際“車やバイク”と言った固定観念を捨てた方が幅も広がると思います。要はベースになっている物の部品を変える、追加するにしても個体をそのままに残そうとし過ぎているからこそ、制限を自分で掛けてしまっている状態かなって――」
相変らず、というかなんというか。
大人って何でこんなに会話が上手になんだろうと不思議に思う事がある。
555はちゃんと相手の話しやすい話題、そして順序を整えて一つ一つ聞いて行くし。
喋り始めたoctopus8に関しても、やはり専門という事もあり相手に伝える事を最優先にしている御様子。
そして何より、二人共発想力が物凄い。
今でも555の質問に対して、即興とはいえ相手の納得する様なアイディアを連発しているoctopus8。
これに対し、ではこの場合は? という具合に、彼女の内容を理解した上で別の懸念点を織り交ぜつつ話が広がっていくという。
ちょっと話が難し過ぎて、私はポカンと見つめる事しか出来なかったが。
「現実には無い都合の良すぎる足回りとか、まだ実装されてない各種パーツとか強請ろうかと思ってましたけど……エイトの話を聞いてたら、どっちかというと作業効率を上げる“自分の為の道具”の方が良さそうな気がして来たっす」
「ですです! 私もちょっと悩んだんですけど、使い切りの何かより、ずっと使えて便利な方が良いのかなって。それにコレはゲームですから、現実では凄く難しい事だってプログラミングで何とかなっちゃうんですよ!」
「ちなみに、エイトはもうおねだり決まったんすか?」
「私は、身に着けるロボットアームをお願いしました。追加の腕です、本格的にタコさんになります。難しいクラフトは自分でやれば良いので、だったら爆弾を設置する手間をそっちにやってもらえないかなって」
「か、考えましたね!? 確かに、ゲームなら自動でやってくれる腕とか実装出来そう! ていうか格好良いっすねソレ! 腕いっぱいあって、指示した通りに爆弾設置してくれるなら、今までの何倍火力が上がるんだって話じゃないっすか! てか名前と合ってる! うわぁぁ良いなぁぁ! 俺ももっと良く考えよ!?」
物凄く、盛り上がっていらっしゃる。
とはいえ、そうか。
彼女の話を聞いていて思ったけど、やっぱり“賞金首の武器”ってなると……他のプレイヤーがこぞって欲しがるような物の方が良いのか。
SFチックというか、現実に無い物でも良いって事は、彼女の言っている追加アームだって有りなのだろう。
それらの不思議装備が一般に実装されるまでの間、もしもエイトを倒せばソレが手に入るとなれば。
多分、これまで以上にoctopus8という賞金首を求める声は強くなると予想される。
だって、自分も使ってみたいから。
そういう意味で、私も“皆が憧れる様な何か”を見つけないといけないって事なのか……。
「うぅ~む、そういうのが、今度の映画で見つかると良いんだけど……」
話を聞きながら、ポツリとそんな事を洩らしてみると。
二人はバッと此方を振り返り。
「もしかして、シックスも“新しい武装”のネタ探しっすか?」
何だかテンションが上がったらしい555が、ズイズイっと此方に寄って来て。
反対側からは、何だか目をキラキラさせたoctopus8が迫って来る。
「あ、あの、私も結構映画とか好きでして。どんなモノを見る予定なのか、教えて頂いても良いですか? もしもファイブの言う通り“ネタ探し”であれば、いっぱいオススメしたい映画がありまして……」
お二人、早くも凄く仲良くなった様で何よりです。
仲介役としては、とても嬉しい結果ではあるのだけども。
私もまた、お喋りに慣れていない人間でして。
急に二人からグイグイ来られて、しかも盛り上がっている所に急に巻き込まれると、結構思考回路が止まると言いますか。
「そ、そういう意味でもあるというか。詳しそうな人に相談した結果、今度……一緒に観に行く事になりまして。今放映中のヤツで、私はあんまり詳しくないんですけど。参考になるからって……」
タジタジになりながらも、どうにかそう答えてみると。
二人の賞金首が、更にズイッと此方に迫って来てから。
「「デートですか!?」」
「ち、違います! 異性ではありますけど、そういうのじゃなくて。一緒に映画観るだけだって……言われて」
「「デートですね!」」
どうしてこう、皆こういう話題には凄く食いつくのだろう。
まぁ何というか……本日初対面であった筈のお二人が、とても楽しそうなので良かったデス、ハイ。
柘榴とAI

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コメント
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第91話、読み終わりました!3人の賞金首がそれぞれのペースで会話している様子がとてもほっこりしましたね。特にoctopus8が「喋っていい環境」だとぽつぽつ話し出す感じ、すごく共感しました。シックスの「デートですか!」の流れも微笑ましくて、コミュ障同士がちょっとずつ距離を縮めていくこの雰囲気、とても好きです。