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檻のなかのアイドル

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檻のなかのアイドル

9 - episode9ー崩されるステージー

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2025年06月29日

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ステージの上、照明の熱と歓声がこさめの耳を包む。
🎼☔️(いける。今日は大丈夫……)


薬も飲んだ。フェロモンも抑えてある。

ただの撮影イベント。踊るわけじゃない、立って笑って喋るだけ。

そう、何も問題ないはずだった。


……なのに。


「こさめくん、顔色悪くない?」


スタッフの声が、遠くに聞こえる。

気づけば、世界が少しずつ傾いていた。


🎼☔️「……っ、あれ……?」


足元がふらつく。

視界の端が滲んで、頭が重い。


🎼☔️(うそ……さっきまで……平気だったのに……)


「こさめくん!? 座って、今すぐ!」


慌てて駆け寄ってきたスタッフに支えられながら、

こさめは楽屋のソファに崩れるように倒れ込んだ。


汗がにじむ額。早すぎる心音。

喉の奥からこみ上げる、αを求めるような熱。


🎼☔️(……まさか、ヒートじゃ……)


でも、違った。


これは――番になったあとの“副作用”。


αの匂いを過度に欲する身体に変わった自分が、

薬やストレス、距離によって平衡を崩してしまう現象。

番に刻まれたΩには、ときおり起こる。


🎼☔️「……っ、なつくん……」


助けて、とは言えなかった。

でもその名を呟いたとき、ドアが勢いよく開いた。


🎼🍍「こさめ!」


なつが駆け込んでくる。

視線が交差した瞬間、こさめの全身から張りつめた糸が切れる。


🎼☔️「……っ、なつくん……おそく、ないよね……?」


🎼🍍「遅いわけないだろ。呼ばれたらすぐ来る。番だからな」


そう言って、なつはすぐに周囲のスタッフを追い出すように指示した。


🎼🍍「すみません、うちの子、ちょっと持病があって。

このまま控室で安静にさせます。

イベントのことは事務所に対応させますので」


低く、丁寧で、でも抗えない威圧感。

スタッフは一瞬で従い、ドアが閉められた。


ふたりきりの空間。


なつは無言で、こさめを抱き寄せた。


🎼🍍「また、こうなる前に言えって、言ったよな」


🎼☔️「……でも、仕事……したかったから……」


🎼🍍「無理してステージ立って、お前が壊れたら意味ないだろ。

俺が守ってんだよ、お前の全部」


🎼☔️「……なつくんのこと、呼んだのに……ちょっと、こわくて……」


🎼🍍「怖いのは当然。俺の番なんだもんな。

でも、絶対見捨てない。

お前が崩れても、泣いても、どんなに弱くなっても――

俺だけは、お前のそばにいるから」


こさめは、なつの胸に顔をうずめた。

独特のαの匂いが、身体の奥に入り込んでいく。


🎼☔️(このにおいがないと、もうまともに呼吸もできない)


🎼☔️「こさめ……もう、アイドルやめなきゃダメかな……」


ぽつりと漏らしたその言葉に、なつは目を伏せた。


🎼🍍「……やめた方が、お前の身体のためにはいい。

でも、やめさせない」


🎼☔️「……え……」


🎼🍍「お前が笑っていられる場所、奪いたくない。

お前が、自分で立ってられるなら……ステージは残す」


🎼☔️「なつくん……」


🎼🍍「でも、その代わり。

全部、俺に預けろ。体調も、スケジュールも、心も。

少しでも危ないと思ったら、俺が即座に止める。

それでもいいなら、――アイドル続けていい」


こさめは、迷わずうなずいた。


🎼☔️「……うん。お願い、なつくん。こさめ、全部あずける……」


🎼☔️(これが依存でも、支配でも――

それで立っていられるなら、こさめはそれでいい)


なつは静かに笑って、

こさめの首元に軽くキスを落とした。


番として、支配者として、マネージャーとして。

このΩを、生かすのは自分しかいない。


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