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「オレがどれだけ透子のこと好きか全然わかってない」
「・・・え?」
樹の言ったその言葉は、私が思っていた言葉と正反対の言葉で。
「オレはずっと透子のこと本気だった。最初に出会った時から。そしてもちろん今も」
「えっ?ちょっと待って。言ってる意味がわかんない・・」
樹の言ってることが想像と違いすぎて、頭の整理がつかない。
「透子。ちゃんとオレを見て」
不安そうにしている私の両肩をギュッ握って顔を近づけ、じっと目を見つめられる。
「オレは。透子のことが、ずっとずっと好きだった」
ゆっくりと力強く伝えて来るその言葉。
「だって・・樹、ずっと報われない相手がいるって・・」
「そうだよ」
「じゃあ、なんで・・」
「まだわかんない?」
「どういうこと・・?」
「透子とあの日出会う前から、オレはずっと透子が好きだった」
「・・え?」
「報われない相手は・・透子」
「・・・え!?」
まさかの言葉が連続して完全に頭がついていかない。
え?あの日出会った時より前?
ずっと樹が・・?
「だから。透子よりもオレの方が透子を好きで仕方ないし、オレの方が透子をずっと本気にさせたかった」
その樹の言葉はまったく想像していなかった言葉で。
樹がずっと好きでいてくれただなんて思いもしなかった。
「なら、なんで最初から言ってくれなかったの・・?」
そしたら、こんな回り道しなくても済んだかもしれないのに・・・。
「言ったら透子好きになった? 最初から好きだって言っても、恋愛に後ろ向きな透子がそれでオレを相手にした?」
「それは・・・」
正直あの時あんな風に出会ったから軽い感じで始められた。
まだあの時は全然そんな気持ちになってもいなかった。
「オレは透子のこと本気だった分、透子にも本気になってほしかったし、いい加減な気持ちで好きになってほしくもなかった。ちゃんとオレのこと知って好きになってほしかった」
確かに、ここまで樹が距離を縮めてくれなかったら、最初から本当のこと言われても好きにならなかったかもしれない。
今、樹がどういう人かがわかってるから、好きになれたのかもしれない。
「だから透子が心配になる理由なんて一つもないから。全部透子の勘違い。オレにはずっとこれからも透子だけ」
私の目を見て優しく真っ直ぐ気持ちを伝えてくれる。
「わかった?」
「・・・わかった」
そこまで気持ち伝えてくれたら、今はもう素直にそう言うしかない。
「だからオレを信じて」
ずっと視線を外さず伝えて来る言葉が、ずっと不安だった気持ちをどんどん溶かしていく。
「透子」
そして優しく名前を呼ぶ。
「好きだ」
一番欲しかったその言葉。
一番知りたかった樹の気持ち。
「透子は?」
そうだ。
樹が私に言わなかったように、私もちゃんと樹にその言葉を伝えてなかった。
ちゃんと私の気持ちも樹に伝えなきゃ。
「好き・・・。私も、樹が好き」
今まで伝えられなかったその言葉。
樹の気持ちがわからなくて躊躇してたその言葉。
だけど今は素直に自信を持って伝えられる。
この気持ちを、この言葉から、この見つめる眼差しから、どうか伝わってほしい。
今はこんなに樹が好きだということを。
今はこんなに樹に夢中だということを。
「ようやく聞けた。その言葉」
樹がそう言って優しくフッと笑う。
「え?」
「ずっとずっと欲しくて仕方なかった言葉」
嬉しそうに微笑みながら、そう言ったと同時に目の前に落ちて来る甘いKiss。
今までとは違うそのKissはどんな時より優しくて甘くて。
樹の気持ちがその唇から伝わってくる。
なんの迷いもなく受け入れられる樹の気持ちとその唇。
何度も唇を重ねて、一瞬離れる唇。
私を抱き締めたまま目の前にある樹の顔。
そのまま見つめたまま樹の口が開く。
「透子・・・。透子の全部オレにちょうだい。透子の全部が欲しい」
こんなにも色気ある目で表情で、唇で、そんなことを言われて、これ以上もう心臓が持たない。
だけど、樹がもっと欲しくてたまらない。
「いいよ。私も樹の全部が欲しい」
そう呟いて今度は樹に自分から顔を寄せて樹の唇に自分の唇を重ねる。
もっと私を求めて。
もっと私を好きになって。
これ以上私が不安にならないように。
樹でもっともっといっぱいになるように。
もっともっと樹の愛をちょうだい。
この抱き締め合ってるこの腕からこの唇から、お互いの愛しく想う感情が溢れ出て来る。
唇を重ねたまま、そのまま後ろのベッドへと樹が腰を抱いたまま促され、二人で倒れ込む。
もう二人の想いを隠さずに、お互いの求めるままこの身を委ねるだけ。
長いキスの後に、唇から首筋へと樹の想いが移動する。
そのあと身体中に広がる樹の唇と樹の想い。
唇が優しく触れていくその場所は、どんどん熱を増していって、身体中にその熱も樹への想いも広がっていく。
樹のその想いを一つ残さず感じたくて、必死にその想いを身体を受けとめる。
樹が自分を求めてくれることが何よりも嬉しくて、何よりも幸せで。
身体中にその幸せを刻んでいく。
樹の想いを、感触を、この身体中にその幸せを刻み付けていく。
これからどんなことがあっても、この幸せを忘れないように。
樹のこの想いを忘れないように。
そしてこの受け止める身体全身から、自分の想いが樹に届くように、想いを重ねて身体全身で求め返す。
途中で何度も名前を呼ぶその声も。
私に触れるその手も身体も。
愛しそうに見つめてくるその目も。
すべてがこんなにも嬉しくて愛しくて。
気持ちも身体も一つに繋がる樹とのすべてを。
このすべての樹を、すべての時間の幸せを噛みしめる。
ずっと、ずっと。
この幸せを。
ずっと、ずっと。
「このネックレス。今日の誕生日に渡したくて、急いで透子の為に作った」
ベッドで樹の隣りに寄り添っていると、そんなことを樹が言い出して驚く。
「えっ?これ作ってくれたの?」
「そっ。完全オリジナル。オレが透子をイメージして透子につけてほしいデザイン考えて、透子を想って作ったネックレス」
「えっ、そんなすごいのなんて思ってなかった」
「オレの愛どれだけ大きいと思ってんの?どうしても今日の誕生日に透子に渡したくてなんとか間に合わせた」
嬉しすぎる言葉ばかりが次々出てきて、私は静かに幸せを噛みしめる。
「ありがと・・ホントに。すごく、すごく嬉しい」
隣りの樹に気持ちが伝わるように、想いを込めて抱き付く。
私にはこんなことでしか気持ちを伝えられないけど。
でもこれから私もちゃんと樹に気持ちを伝えていくね。
「透子が喜んでくれてよかった」
樹も嬉しそうに微笑んでくれる。
「何かあったり、寂しくなったら、そのネックレスでオレを思い出して」
「わかった。樹だと思って大切にする」
「うん。そのネックレスと一緒に透子のことずっと守るから」
「ふふ。大袈裟」
その言葉だけで私は充分幸せな気持ちになる。
私を想って、私のことを考えて作ってくれたこのネックレス。
ずっとずっと大切にする。
「いや。ホントこれから何があるかわからないから」
「う、うん・・?」
その言葉はただの例えなのか、何か意味があるのかはわからないけれど。
でも、今はきっとどんなことでも受け止められる。
「ねぇ透子」
「ん?」
「どんなことがあってもずっとオレを好きでいて?」
隣りでそんな言葉を伝えて来る樹。
優しく何気ないその言葉だけど、でもどこか不安そうで。
「わかった。ずっと樹を好きでいる」
だから私はなぜそんな不安そうにしているかわからないけど、そんな樹の不安を無くしたくて、笑顔で樹に真っすぐそう答える。
「絶対ね」
「わかった。絶対」
念を押してくる樹が可愛くて、つい笑って答える。
そしてその気持ちが伝わるように隣の樹にギュッと抱きつく。
何も言葉にしなくても、この腕から気持ちが伝わるように。
もう、きっと、大丈夫。
もう離れたりしない。