テラーノベル
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2話 夜のお茶
夜風が渡る中庭のベンチに、太宰は心地よさそうに腰を下ろしていた。
ベリアンが運んできたトレーには、湯気を立てる一客のティーカップ。「お口に合うかはわかりませんが」と添えられたそのハーブティーからは、どこか心を落ち着かせる清涼な香りが漂っていた。
「ほう……これはいい香りだ。うずまきで飲む紅茶も悪くないが、こういう静寂と一緒に味わうお茶というのも悪くないね」
太宰はカップを傾け、ひとくち口に含むと、満足そうに目を細めた。その姿を、ベリアンは少し離れた場所から姿勢を崩さずに見守っている。
「……随分と達観されているのですね。見知らぬ場所に飛ばされ、怪しい執事に見られているというのに、恐れや焦りを一切感じられない」
ベリアンの問いかけに、太宰はカップをソーサーに戻しながら、いたずらっぽく微笑んだ。
「なに、絶望や混乱なんてものは、生きていると勝手に向こうからやってくるものさ。それにね……君のその目を見ればわかる。君は『主様』と呼ばれる人物と、この屋敷の平和を守ることに誇りと執着を持っている。無意味な殺生や危害を好むタチじゃない」
太宰の言葉はどこまでも軽やかだったが、その洞察力はルベルの核心を正確に突いていた。ルベルは微かに目を見張り、それからくすりと小さく苦笑した。
「……お見通し、というわけですか。ヨコハマという街がどのような場所かは存じませんが、貴方のようなお方を相手に回すのは、さぞ骨が折れるでしょうね」
「ははは! それは探偵社の国木田くんに聞かせてあげたい言葉だね。きっと涙を流して同意するよ」
ベリアンは口に手を当て、同情するかのうに笑った「その国木田さんという方はさぞ大変なんでしょうかね、同情致します…」と。太宰は笑いながら「出会ったばかりなのに、言うね〜、君」「私のとこにもあなたのような方がいて、その同僚がよく世話をしていましたから」「おお…それはそれは、その人も大変だね〜、国木田くんと話が合いそうだ、フフッ」
楽しそうに笑う太宰だったが、ふと空を見上げると、その瞳に宿る色がわずかに変わった。月を覆っていた雲が払われ、庭園に満ちる光が揺らぎ始める。空間の境界が、まるで水面に落としたインクのように滲み始めていた。
「おや……どうやらお迎えの時間らしい」
太宰の手足が、光の粒子となってゆっくりと透け始めていく。元の世界へと引き戻される現象が始まったのだ。
太宰はベンチから立ち上がると、着ているコートの埃を払うように整え、ベリアンに向き直った。
「短い時間だったけれど、楽しい夜だったよ、ベリアンくん。君の淹れてくれたお茶は実に美味しかった」
「……お役に立てたのなら幸いです。太宰様」
ベリアンは胸に手を当て、完璧な角度で一礼した。異世界の闖入者に対するものではなく、一人の特別な客人に送る、真摯な執事の礼節をもって。
「君たちの戦う理由……その『主様』という存在が、これからも君たちの救いであり続けることを祈っているよ」
光が強くなり、太宰の姿が完全に消え去る寸前、彼はいつもの掴みどころのない笑顔でひらひらと手を振った。
「じゃあね。次に会うときは、もう少し死にやすく、景気のいい話でもしようじゃないか」
「——遠慮させていただきます」
静まり返った中庭に、ベリアンの短い答えだけが残された。
光が収まり、そこにはただ、誰もいなくなったベンチと、かすかにハーブの香りが残る空のカップがあるだけだった。ベリアンは静かにトレーへカップを回収すると、主様が眠る本館の方へと視線を向けた。
「……さて、夜回りもこれで終わりですね。主様が目覚められる前に、早くもどりましょう」
ベリアンはいつもの落ち着いて整った表情に戻り、静かな足取りでデビルズパレスの暗がりへと消えていった。
🦋。:°ஐ..*✨☆*。⋆*ೄ。:✨°ஐ..*☆*。🦋
どうも、主です
とても楽しそうなお茶会でしたね
ここで主様を紹介します
可愛いね
この子のおめめはこんな感じ
美しい…
設定とかは次の話で紹介します
ではまた*˙︶˙*)ノ”
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#文スト中原中也夢
茉莉(まつり)
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コメント
1件
第2話、素敵なお茶会でしたね🌷 太宰さんの飄々とした雰囲気と、ベリアンの真摯な執事らしさが絶妙に交わっていて、読んでいて心地よかったです。特に「遠慮させていただきます」というベリアンの返しが、堅苦しさを感じさせない軽やかさと距離感の両方を表していて、思わず笑ってしまいました。お互いに相手を読みながら、それでも楽しそうに会話している空気が伝わってきますね。次回の主様の紹介も楽しみにしています〜✨