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「じゃあ、今日だけ恋人ってことで」
そう言ったのは、私の幼なじみの白瀬あおいだった
「……は?」
放課後の教室
帰る準備をしていた私は突然の提案に固まる
「あたしのお母さんさ、「早く彼氏作りなさい!」って最近うるさくて…つい“いる”って言っちゃったの」
「それでなんで私なの」
「だって都合よかったし」
「最低」
そう返したのにあおいは悪びれもせず笑う 昔からそうだ
人を振り回すのが得意で、最後には押し切ってくる
「お願い!今日だけ!ご飯食べるだけだから!」
「……ほんとに今日だけ?」
「うんうん」
その返事が信用ならない
けれど結局、私は断れなかった
「えぇ!?美羽ちゃんが恋人さん!?」
玄関を開けた瞬間あおいのお母さんが目を輝かせた
「いつも娘がお世話になってます〜!」
「い、いえ……」
なんで私が挨拶されてるんだろう
隣を見るとあおいは平然としている
むしろ楽しそう
「ほら美羽、手」コソッ
「……え?」コソッ
「恋人なんだから」コソッ
いきなり言われ心臓の音が速くなる
机の下に差し出された手
いつも見慣れてるはずなのに今日はやけに意識してしまう
「はやくっ!」
「……っ///」
そっと触れると、あおいが指を絡めてくる恋人繋ぎ
一気に顔が熱くなった
「仲いいねぇ〜!」
「でしょ?」
あおいは平気そうに笑う
ずるい
こんなの……私だけ意識してるみたいじゃん
ご飯を食べさせてもらった後私たちはあおいの部屋へ逃げ込もうとするとあおいのお母さんに
「私は女の子同士でも気にしないわよ!」
と私にしか聞こえない声でウィンクしてきた
あおいのお母さんごめんなさい!ほんとに付き合ってるわけじゃないんですっ!
「お疲れ」
「……疲れた…」
「演技うまかったじゃん」
「……」
ベッドに座るあおいを睨む
けれど本人はどこ吹く風だ
「でもさ」
あおいがぽつりと呟く
「美羽って意外と恋人っぽかった」
「……は?」
「手繋いだときとか!顔真っ赤だったし笑」
「それは……///!」
完全にからかわれてる
わかってるのに言い返せない
「……あ、あおいは平気そうだったね」
何か言い返さなきゃと考えて出た言葉がこれだった
するとあおいが少しだけ目を丸くする
「平気じゃないけど」
「え…」
「めちゃくちゃ緊張してた」
「嘘!?」
「ほんと」
そんな風には見えなかった
だってあおいはずっと余裕そう楽しそうで
でも……
「……手、離したくなかった///」
私が言ったひと言で部屋が静かになる
心臓の音だけがうるさい
「……演技、じゃなくて?」
「う、うん///」
「……私も最初は演技だったよ」
「……そっか」
「でも途中から、わかんなくなった」
その言葉に、胸がぎゅっとなる
「美羽と恋人っていうの、思ったよりしっくりきて」
あおいがこちらを見る
真っ直ぐな目
「このまま本当に付き合えたらいいのにって思った」
頭が真っ白になった
昔からずっと一緒だった
隣にいるのが当たり前で
だから気づかなかった
いや、気づかないふりをしてたのかもしれない
「……ずるいよ///」
「え?」
「あおいのそういう所ほんとずるい……////」
顔が熱い
でも、逃げたくなかった
「私だって……今日、ずっとドキドキしてた」
「手繋いだ時も、お母さんに「恋人」って呼ばれた時も……嬉しかったし//」
「あおい……」
「だから、その……」
「……契約じゃなくても…いい、かな?』
一瞬の静寂
「っわ、私もっ///!」
「じゃあ!」
「よ、よろしくお願いします////」
そうして私達は本当のカップルになった
次の話…………10♡
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牙央