テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
14,397
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
モノクロの戦争の記録映像。凄惨な突撃。倒れていく日本兵。
イギリスさん「クレイジー。実に呆れた。私は本当に呆れているよ。……科学的な事実を確認させてくれ。日本人の80パーセントから90パーセントが、いわゆる恐怖遺伝子……セロトニントランスポーター遺伝子の『S型』を持っている。そうだね?」
日本さん「はい。事実です。対して、欧米の方々が恐怖遺伝子を保有する割合は50パーセント以下です」
イギリスさん「オーケー。ならば、君たちは我々よりもずっと臆病で、不安を感じやすい。セロトニンが少なく、死を恐れる、ということだ。……それなのに、なぜ映像の彼らは、死に向かって走れるんだ?なぜ無謀なカミカゼアタックを?」
映像。銃弾の嵐の中で、日本兵の一団が銃弾を浴び、泥水に溶けるように倒れていく。
日本さん「……怖かったからです。あの場所では、個としての死よりも、集団の和を乱すことの方が、彼らには耐え難い恐怖だった」
イギリスさん「アンビリーバボー。君たちは『恐怖』を燃料にして、死の機械を動かしたということだ。……私は理解したよ。我々の先祖が、君たちの統治を早々に切り上げた理由を。
映像は止まり、静寂だけが残る。
イギリスさん「個人は、恐怖や欲望で支配することはできる。だが、個ではない『恐怖する集合体』を支配することは不可能だ。……恐ろしい。君たちの先祖は、我々に恐怖を刻んだ。恐怖に震える人間が、最も無謀な兵器に変わるという悪夢をだ」
日本さん「ナムの頃には、もうお忘れだったようですが」
イギリスさんは肩をすくめる。その目は、笑っていない。
イギリスさん「そのようだ。我々は忘れっぽい。特にあの子はな。……だが、今、私の目の前の君も、その90パーセントのうちの一人なんだろう? 」
日本さんは何も答えず、ただ静かに座っている。
その静寂は、止まった映像と同じ、深い闇のようだった。