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「マジで、意味分かんねえし……」


ウゥーン、ウゥーン、カンカンカンカン――――


あちこちでなるサイレンの音。警察、消防、救急と赤ばかりが駐車場を埋め尽くしていた。サイレンの音も痛いほどに赤いランプも目に毒だった。

要請があったわけでもないのに、空に車を飛ばして貰い、俺達はジュエリーランドに来ていた。

嫌な胸騒ぎがする。

一年前から、彼奴らは変わった。時々連絡してくるようにもなった。そうして、今日、空とその事について話していた矢先だった。彼奴らが、またデートする、なんて惚気を送ってきたとき、微笑ましいと思った。だが、そのデート当日、彼奴らがデートに選んだ、遊園地が爆破したとニュースが入った。

今は管轄がいから外れている街ではあったが、俺達は警察手帳を見せ現場へと入れて貰った。駐車場には多くの人が避難しており、遠くの方に黒煙が上がっているのが見えた。聞くところに寄れば、誰一人犠牲者はいないとか。だが、まだ中に誰かが残っているという情報も聞きつけ、見渡す限りあの二人がいないことに気がつき、さらに心臓が跳ねた。


(まさか、彼奴らまだ中に居るんじゃねえだろうな!?)


そう思い、一刻も早く連れ戻さなければと方向を変えると不意に服を引っ張られる感覚がし、俺は足を止めた。


「あ、あのぅ……刑事、さんですか?」

「ん? ああ、刑事……刑事だな。非番だったが急用できて。それで、嬢ちゃんは何用で?」


俺を引き止めたのは蜂蜜色のツインテールの少女だった。怯えたように目をクリクリとさせて上目遣いをしてくる。何故呼び止めたのか分からず、今すぐにでも現場にと彼奴らの元に行かなければと思ってイライラしていると、少女はさらに怯えたように萎縮した。そんなつもりはなかったため、すぐに謝れば「一刻を争いますからね、焦るのも分かりますぅ」といわれてしまう。少し、鼻についたがここで怒っても何にもならないと呼び止めた理由をもう一度尋ねる。


「それで、どうしたんだ? お前も逃げてきたんだろ?」

「そうです。それで、プラネタリウムにいたんですけど……上映が終わった後、爆発音が聞えて。それから、プラネタリウムの中でそこに爆弾が仕掛けてあるっていう放送があって」


と、少女は丁寧に教えてくれた。その情報を聞きつけ、きっと明智達はそこにいると俺は少女に礼を言う。


「いくんですか?」

「ああ、ダチがそこにいる気がしてな」

「ミオミオ、入れるみたいだから、早く!」


俺は少女にそれだけいうと、むかえに来た空と合流しパーク内に入った。パーク内は静まりかえっており、双馬市の警察達が総出で他に爆弾が仕掛けられていないか捜索していた。俺達はそんな間を縫って、プラネタリウムに走る。

走っている最中心の中で何度も「間に合ってくれ」と縁起でもないことを思ってしまっていた。どうしてそう思ったのか、そんなはずない、絶対に起らないと言い聞かせようとしても中々聞いてくれなかった。そして、プラネタリウムの屋根が見えてきたその時だった。

大きな音とともに、丸い屋根から黒い煙がもくもくと上がりだしたのだ。


「……ッ」

「ミオミオ、立ち止まってないで、早く!」


空の声が遠くにいるように聞えた気がした。俺は目の前の光景を見て、もう手遅れだと何処かで諦めている自分がいることに気がついた。あそこに行かなければ、分からない。だが、動きたくない、受け止めたくないと、足がいうことを聞かない。

そんな俺の腕を掴んで無理に空は走り出した。俺は引っ張られるままについて行く。何で空は歩けるのかとか、空はまだ希望を持っているのだとかそういう事ばかりが頭の中を巡る。でももっと、悲しんでいる奴がプラネタリウムの前にいるのでは無いかと、想像してしまった。


「……はぁ、……はぁ」


いつもなら息など切れないはずなのに、息が上がって呼吸をするのもままならなかった。膝に手を当てその場で呼吸を整える。目と鼻の先にあるプラネタリウムからは確かに黒煙が上がっており、そこら中に吹き飛んだ破片が散らばっていた。あの中に人がいたとして助かっている可能性はゼロに近いだろう。


(まに……あわなかった? いや、そんなはずねえ、そもそも彼奴らがここにいるって証拠も何も……)


どうにか、違うと頭では言い聞かせたくて、そうじゃないと否定して欲しくて言い訳を探すが、上手く呼吸も出来なければ、酸素がまわっていないせいか思考の速度も下がっていく。心の何処かでそうじゃないかと決めつけて、直感的にそう感じていたからだ。


「澪!」


と、親友に名前を呼ばれハッと顔を上げる。

そこには空が心配そうな表情で俺を見つめていた。だが、何かを見てしまったと言うように絶望した顔をしていた。それを見てサッと血の気が引いていく。

空は、俺を抱きしめると頭を何度も撫でた。見なくてもいいというように俺の目を塞ぐ。


「澪、大丈夫、大丈夫だから」

「そ……ら?」


それはまるで自分に言い聞かせるようだった。

空の心臓の音がうるさく聞え、彼も動揺していることが分かった。すすり泣く音も聞えたが、俺には空の顔が見えなかった。

そうして俺は顔を上げ辺りを見渡した。すると、目に飛び込んできたのは数名のスタッフに囲まれその場で崩れ落ち泣き叫んでいる明智の姿だった。


「あけ……ち? うそ……だろ、だって……じゃあ」


全てを理解した。

周りの音など耳に一切入ってこなかった。サイレンの音も、黒煙と燃える音も、空のすすり泣く声も、明智の叫びも。何もかも聞えない、無音だった。

ただただ目の前で突きつけられた事実に絶望し、その大きな絶望を受け止められずにいた。


(俺、あの時言えばよかったのか……? それとも、誕生日を忘れてたから……? 意味がわからねぇ、こんなの、こんなの――――)


スッとプラネタリウムに伸びた手は信じられないほど震えていて、目尻がいっきり熱くなった。

開くことも閉じることも中途半端なその口は、あの燃える虚像の星の中にいるであろう、いたであろう人物の名前を口にする。


「――神津ッ!」

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