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「あれで子供が2人もいるなんて信じられないよ。しかも相当苦労してきたみたいでね。旦那さんの浮気が原因で離婚して、女手1つで子供を育てているんだってさ。いやぁー、同世代とは思えないくらいすごいなぁ。俺も見習わなきゃ。」
ーーズキンズキンーー
『同世代』。その言葉が私の心を深く抉る。
そんな深い話をするほど仲がよくなったんだ。
すぐ収まると思っていた痛みは、なかなか消えてくれない。
それどころかどんどん増していくばかり。その理由すら分からず、相づち打つこともできなかった。
訳が分からない。私は…店長に何を期待したのだろう。
「あ、でも別に深い意味はな…」
「その話、本当なんですかね?」
「へ…?」
店長の丸くなった眼が、私を捉える。
自分でも驚いていた。私は一体、何を言おうとしてるのだろう。
「だ…だってそうじゃないですか。そんな不幸な話、普通人に言えます?同情してほしいだけに思いますけど。」
刺々しい言葉で容赦なく店長を貫く。しかし店長は笑顔を崩さなかった。
「いやぁー、まさかそんなはずないよ。雛瀨瀬さんみたいなまじめでいい人が…」
「店長は騙されやすいから分からないんですよ!ああいう女に限って、腹黒いんです。実は店長に気があったりして…」
声が自然と震えてるのが分かる。心臓の音があり得ないくらいうるさい。
この発言は果たして、本当に私が言っているのだろうか。そんな錯覚をするくらい、信じられなかった。
今ならまだ否定することはできたはずなのに、喉がカラカラに乾いて、うまく言葉が出てこなかった。
その時、店長の顔からすーっと笑顔が消えた。
そして、真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめる。仕事場ですらこんな顔は見たことない。
「藤塚さん。俺に気がある…とかはよく分からないけど、あまり話したことのない人を裏で悪く言うのは、感心しないなぁ。」
「っ……」
初めて見る、店長の鋭い視線と僅かに寄った眉間のしわ。
普段の頼りない姿からは想像できない。
…ああ、私今…怒られているんだ。
いつもみたいに言い返すことができない。胸の中にあるのは、ドロドロと冷たさが混じった感情。