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「テラ……て、ら……」
「_____様、お離れ下さい!!」
「いや……おいて、いかないで…………」
「_____様!!!」
「そうだ、あれを……」
「あれ……? なんで、なんで……」
「何をしていらっしゃるのですか!!! 早く離れてください!」
「あ…………」
「お気持ちは分かります。ですが今は、弔ってあげるのが一番です」
「あ、あぁ、ぁぁ…………」
「やだよ…………もう、何も失いたくないのに…………」
「あなたがいないと、だめなのに…………」
■△■△■△
「よし、これで全部」
「教えてくれてありがとう」
「いいの!! それより、テラ、すごーく物覚え早いのね」
「そうかな……?」
確かに、あの子からも物覚えが早いとは言われたな。
誇るべき所なのかもしれない。
「そうだ、ずっと聞きたかったんだけど、」
「? なに?」
「前言ってた、あの子、って?」
「あぁ、それ?」
「そう。あの子が名前を付けてくれたって言ってたじゃない?」
「その、あの子の名前を聞きたいな、って!」
「……えっと、ヴィーナスだよ」
「ふふ、こっちも星の名前だ」
「今度はなんの星?」
「えーっとね、金星、だったかな?」
「金星、明るそう」
凄く偏見だけど。
そして綺麗そう。あの子にピッタリだな。
「金星って、「地球の姉妹惑星」「地球の兄弟星」なんて言われてるんだよ。テラと、運命的だね」
「……なんだか、嬉しい」
あの子と近しい名前、か。
知れて、良かった。
またあの子と会えたら、教えてあげようかな。
「それで、もう少し聞きたいんだけれど、そのヴィーナスちゃん? くん? て、どんな子だったの?」
「あぁ、それは……」
「___とても、優しい子、だよ」
「へぇ、!」
「優しくて優しくて、優しすぎて、一人で頑張っちゃって…………でも、すごく強い子で、一見、傲慢で利己的に見えるけど、でも優しさが滲み出てて、本当、本当……」
「優しい、子」
「__大切な存在なんだね」
「そう、ですね」
「あっ、敬語!」
「えっ、あ、すみまっ、……ごめん……」
「ふふ、いいのよ、謝んなくたって」
「テラがヴィーナスちゃんを好きなのは伝わったから!! あ、ちゃん、であってる??」
「すっ……!? あぁ、まぁ……照れるけど…… ……性別は合ってるよ」
「良かった! _____ヴィーナスちゃん、好きなの?」
「恥ずかしいから言いたくありまっ……ない………」
「ありゃ、そっか、じゃあ、ヴィーナスちゃんの見た目と声は?」
「見た目と声?」
あの子の見た目と声か……
思えば、関係は俺の一目惚れで始まったんだっけか。
あの時のあの子は、本当にメシアだったなぁ。
「見た目と声は…………」
白金の、流れるような艶髪。
あの髪を梳かしてあげるのが好きなんだよなぁ。
美しい、硝子細工のようなガーネットの瞳。
あの瞳に見つめられるとドキリとする。
細くて、雪のように白い指。
あの指に頬を撫でられるとひんやりして心地良い。
雪のように、ふわりとしていて、けれども、芯のある強くて儚い、耳馴染みの良い秀麗な声。
あの声で名前を呼ばれるのが大好きなのだ。
「へぇ、なんか私と似てるね」
「あ、確かに……」
「私は単純にアルビノなだけだけど、テラの故郷は少しへんてこなところだからね、普通なのかも」
「へんてこ……」
「あっ、悪い意味じゃないわ! 本当よ!」
「うん、安曇先輩が嫌味とか言わないの、分かってるから」
「___!」
? なんだろう、凄く嬉しそうだ。
よく分からないけど、悪い事を言ったのでないならいいか。
「テラって、すごーく天然よね……」
「天然?」
「気にしないで! 独り言」
「そう……?」
「あ、お客さんだ。接客してみる?」
「えっ? あ、頑張、る!」
「頑張ってね!」
初仕事だ。かなり緊張する。
お客さんに変な事言わないといいけど。
小太りのスーツを着た男性だ。
仕事終わりなのだろうか。
男性はポテチ、というお菓子とてにぎり__こちらではおにぎりというらしい__とチュコ__これもこちらではチョコというそう__を一気にカゴに入れ、レジにスタスタと歩いてきた。
そしてダンッ、と強くカゴをレジに置いた。少し怖い。
「テラ、教えた通りに!」
「は、はいっ、」
ぴっ、と謎の音をたてながら次々と商品をレジに通す。
これで合っているのだろうか……?
「ねぇ、」
「へっ?」
頑張ってレジ打ちをしていると、突然お客さんに話しかけられた。
かなり低い声だ。
「きみ、新人さん? 別嬪さんだねぇ」
「じ、自分には勿体ない言葉ですよ……」
「いやぁ、そんな事ないって。」
ゆっくりと、俺にお客さんの手が近づく。
これは、普通の事なのか?
「ちょっと」
ふと後ろから耳馴染みの良い秀麗な声がした。
_____安曇先輩だ。
「すみませんが、この子に触らないでください。繊細な子なんです。あと、店員にセクハラ紛いのことしないでください」
「おぉ、君も可愛いね。その髪も綺麗だ」
「_____聞いてる?」
急に声が低くなった。
途端、お客さんの頬に冷や汗が流れる。
「日本語、通じてます? セクハラするなって、言ってるの」
「あ、あぁ………はい……」
「では、お代いらないのでさっさと帰ってください」
「ひ、」
いつの間にか俺の前に来ていた先輩の顔は、
よく、分からなかった。
■△■△■△
「ごめんね、たまにいるんだ。ああいうお客さん」
「いや、別に……」
「そう? それならいいけれど……」
「……えっと、ありがとう。助けてくれて」
「! どういたしまして!」
「正直、嬉しかった。本当に、ありがとう」
「もぉ、そんなに感謝しなくたって大丈夫よ! 照れちゃうじゃない」
「……ふふ」
「な、なんで笑ったの?!」
「いや、なんだか照れてる姿が珍しくって」
「も、もぉ〜!」
「あ、そうだ」
「___羽白、って呼んでいい?」
「えっ!? 呼んでくれるの?」
「うん、だって、俺だけ名前なの、いやだから」
「か、かわいい……」
「今度は俺が照れそう」
なんて会話をし、最終的にはお互い名前で呼ぶ事になった。
なんだか、懐かしい気持ちになるな。
……ああ、あの子との思い出と似ているからか。
本当、似てるよな、この人。
まぁ、世界に自分と似てる人は二人いるって聞くし、そのうちの一人なのだろう。それはそれで運命的で良いな。
_____さて、これからこの職場で働いていくのだ。
なら、この違和感も一旦忘れてしまおう。
これで、いいのだ。
■■■■
___テラ。
ねぇ、テラ。
どうして、私を置いていくの?
私の事が嫌いなの?
なんでなんで。
私、あなたのこと大好きよ。
何か悪い事をしてしまった?
なら謝るわ。
何か嫌な所があったの?
なら治すわ。
だから、ねぇ。
「おきて」
女の白金の髪が肩から滑り落ちる。
その細い指は、膝に眠るカラダを優しく撫でる。
女の姿は、まるで美を具現化したかのようだ。
それは到底人間とは思えないほど、人外的な美しさで。
そんな女は、空っぽのカラダを愛しているのだ。
正しく、
______愛と美の女神である。
羽白のキャラデザ出そうと思ったのですが、
何やらエラーが発生していまして。
サムネも同じようなことになっていて変えられない状態です。
しばらくイラストなどは載せられないかもしれません。すみません。