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ベッドの上で上体を起こしたまま、陽葵はぶんぶんと首を振った。
「いやいやいや、三属性とか意味わかんないし! たまたまですよ、きっと! 偶然! そう、偶然です!」
スーツ姿の男は微動だにしない。
「偶然で三属性は発現しない」
「します! たぶんします! 私、そういうタイプなんで!」
「どういうタイプだ」
「えっと……ノリと勢い?」
母が小声で言う。
「陽葵……」
「だってさ!? 私、普通にテストとかあるし、部活も決めてないし、ヒーロー科とか無理だし!」
「ヒーロー科ではない」
「え、違うんですか!?」
一瞬食いついてしまってから、はっとする。
「いや違くないです! とにかく! 私は普通の高校行きます! 以上!」
言い切った。
沈黙。
男はゆっくりと口を開く。
「では確認するが、君はあの現場で何をしたか理解しているか?」
陽葵の喉が、ひくりと鳴る。
覚えている。
冷たい感覚。
焼けるような熱。
光。
「……助けただけ、です」
「自分が倒れるまでな」
「倒れたのは、ちょっと寝不足で……」
「三日間か?」
「……」
言葉が詰まる。
男の声は責めていない。
ただ、事実を並べているだけ。
「君の能力は強い。だが制御が未熟だ。今後、同じことが起きれば」
一瞬だけ、視線が鋭くなる。
「助けられない可能性がある」
胸が、きゅっと締まった。
「……え?」
「君が倒れる。あるいは暴走する。結果、守りたかったものを壊す」
陽葵は思わず言い返す。
「そんなことしません!」
「今はな」
その一言が、刺さる。
炎が暴れた瞬間を思い出す。
あれは、本当に制御できていたのか?
もし、誰かを巻き込んでいたら?
陽葵は唇を噛む。
「……でも」
それでも顔を上げる。
「私、自分が特別とか思いたくないんです」
ぽつりと、本音がこぼれた。
「普通でいいんです。普通に学校行って、普通に笑って……それでいい」
男は、しばらく黙って彼女を見ていた。
そして静かに言う。
「だからこそだ」
「……え?」
「普通でいたいのなら、力を理解しろ」
低く、真っ直ぐな声。
「知らないままでは、普通は守れない」
病室に、重い沈黙が落ちる。
陽葵の拳が、シーツを握りしめた。