『久しぶり!乱数!』
『え、はな、び?』
『そうそう!僕だよ!』
ある日突然海外に行った友達がシブヤに帰ってきた。正直渋谷からシブヤに変わったから帰ってきたと言っていいか分からないが……
そんな中舞城華灯は強引に事務所に入れてくれと急かしてきた。背中を押されわっと声が出るがそれすらも華灯は笑ってきた。
『乱数すごいよ!』
『は?何が……』
『前は最強チームTDDに属して、』
『今は第二回DRB優勝のF.Pにいるって?』
そうやって悟ったかのように俺は言った。そうすると華灯は笑った。
『何が面白い?』
『乱数は超能力使い手か何か、かな?』
そうやっておなかを抱え笑いながら懐かしいことを言った。俺が感情を示さなかった時のそんな昔のことを。
『顔に書いてある』
『そっか!』
華灯はにこりと笑うと話をつづけた。最近は何をしているのか、笑えるようになっただとか、そんな他愛の無い話だった。しばらくたってまたこういった。
『乱数アトリエとか大分変えたね~!やっぱりポップなのが好きなんだね~!!』
『まぁそれなりには』
『それに僕のブランドも人気にしてくれちゃって~』
『華灯こそどうせ人気なんだろ』
『エスパーじゃん!乱数程ではないけどね』
あはは、と笑いなんだかんだ昔と変わらなかった。一つ変わったことといえば俺が感情を露にするようになったことくらいだろう。そう話してるうちに聞きたいことを思い出した。話しかけようと息を呑んだが、その前に華灯がこちらに話しかけてきた。
『正直言ってオリジナルって何か分かんなかったんだよね、でもでも乱数は笑えるようになったよね!』
『それがなんだ?』
『ねぇねぇ!!おネーサンって言ってよ!笑えるでしょ?』
そうやって無茶ぶりをされ急かされる。いつもならふつーにいえるだろうが華灯の前なのか上手く言えない。
『あれ?いえない?』
ひょこっと顔を出した。あれ?と予想外だと言わんばかりの顔で覗かれる。仕方なく小さな声でリクエストに応えた。すると華灯はニヤけた顔でこう言った。
『おや?おやや?照れてますな??』
『しらない』
否定するもいじられて終わる。
『それよりお前何時までここにいるんだよ!!』
『あー、一応海外に戻るけど』
『そう、なのか』
『あれ?寂しかった?意外だな~前よりもっと感情が分かりやすくなったよ!でも』
『でも?』
焦らされている様でムカつく……そう思っていると華灯が少し静かな表情で言った。
『無理に笑ってない?』
『え…………?』
『確かに真似してればいいって言ったけど生き生きしてないっていうか……ね?』
なんだ。作り笑いだってとっくにバレてるじゃないか、ただ愛想を振りまいて怪しまれないようにしているだけ。でも、華灯、心から笑えるようにはなったんだ。何より大切なPosseができたから。
『あ、でも1つ訂正!乱数FlingPosseの仲間といる時はすっごく生き生きしてる!』
ほら華灯はなんでもお見通しだ。
『ほんと楽しそうでよかった!じゃあ僕はお暇させていただきますか!』
『まて、泊まってけよ』
そういうと俺は華灯の腕を掴んだ。華灯は少し驚くとまた笑いながらこういった。
『強引だね〜』
『デザイナーは強引なんだよ、お前が言ったことだろ?』
『はいはいそーでした、でも今回は無理かな!大事な仲間を優先してくださいっと』
そう言って帰ろうとする華灯の手を引いて止めた。
『今度は何〜?』
『せめてモデルになっていけ、お前も散々俺をモデルにしただろ?』
『ん〜』
華灯は少し悩んだ際にうん、と笑顔で頷いた。
『いいよ!』
○
数十分が経った。俺は服を作るのに集中している。
『乱数って彼女いるの?』
『なんでそうなる』
『色んな女性と遊んでるから』
『彼女はいない』
そういうと意外だ、と言わんばかりな眼差しで見られた。そこで俺も聞き返した。
『華灯は?』
『僕もいない!でも意外だなぁ、乱数彼女いないんだ。』
『何が言いたいんだ?』
『あれだけ色んな人と遊んでるから彼女の1人や2人いてもいいんじゃないかな〜って』
そうやって少しニヤけて華灯は言う。なんとなく心から笑ってるような笑っていないような、そんな変な感じがする笑顔だった。
『あれはほとんどモデルだ』
『え〜?そうなの?』
『そうだよ、それが現実だ』
本当のことしか言っていない。周りからの印象を崩さないように、それと服を作るのに必要な人を集めているだけ。たったそれだけの話だ。それに、彼女なんていなくても俺には最高の仲間がいる。
しばらくすると華灯はこう言った。
『そのデザインだと大分時間かからない…?』
『うっ』
それは分かっていた。先にめんどくさいものから終わらせようと凝ったデザインのものを先に回していた。
『明日ならまだここの近くいるし、明日また来るよ』
『で、でもまだ時間は…!』
『乱数の仲間を優先したいからね!』
そうやって華灯はくしゃっと笑った。華灯は出ていこうとする、その間際こう言った。
『よかったじゃん、いい仲間にあえて、よく笑うようになったし!』
そう言われ安心してもらえる言葉を返したかった。
『最高のPosseだよ』
『!なーんだ、もう僕いらないじゃん』
驚いた様子だけは分かったが何かを小さな声で言ったため聞き取ることは出来なかった。
○
『乱数?いますか?』
『ん?なーに?げんたろ』
『いや、集合をかけておいてなぜまだ服を作ってるのか、と思いまして』
『うーん、一応必要だからね!コレ』
華灯のために必要だから何も嘘は言っていない、早めに完成させたかった。
✕
『明日行くのはやめとこうかな』
僕、舞城華灯は明日飴村乱数に会うのをやめた。彼にはもう笑える理由があるのだから。
『なんかアイデア湧いてきたきがする!』
ここにいる間も少し服を作ったりして、また”オリジナル”を探す旅に出よう。
『じゃあね、乱数、また逢う日まで』
夕日に染った午後の空にそうやって独り言をもらした。
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