テラーノベル
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「こんにちはお二人さん、とても良い週末をお過ごしのようですね、調査すると私は言いましたよ」
なぜここに?どうして旅館を?—ジンの頭の中で言葉が断片のまま渦巻いた、思考がまとまらない、隣で桜の息が止まるのが気配でわかった
「この方から事情は聞きましたよ、どこぞの外国人がうちの娘をたぶらかしている様で、怒りがおさまりませんね、だから都会なんぞに憧れて田舎娘がホイホイ出て行くとロクなことにならないのですよ」
フネがきっぱりと言い放つ、浜崎は帽子のつばを指先でわずかに持ち上げ、二人を見据えている
「あなた達は嘘をついていますね」
フネの言葉は一言ずつ、くさびを打ち込むような鋭さがあった
「この方が言うにはあなた方二人が企てていることが偽装国際結婚だったら、刑務所行きだと言ってますよ」
ハッと二人は目をみはった、ジンは反射的に桜を庇うように半歩前に出たが、全身の力が抜けていくような感覚の中で、ただフネの声だけが耳に刺さった
浜崎がゴホンと一つ咳をして言った
「君達に代わり、お母様と取引をしました、今この場であなた方が偽装婚だと認めたら刑務所は無しにしましょう、パク・ジンさんは24時間以内に韓国へ帰れば、お嬢様には何のお咎めもありません」
フネも言う
「浜崎さんは本人達が全面的に協力して白状すれば、可能な限り穏便にすませてくれると言ってるのですよ、さぁ、本当のことを言いなさい!この結婚は偽装なんでしょう?」
ジンは答えられなかった、頭が麻痺してしまったかのようだった、二十四時間以内に帰国・・・という言葉が頭の中で反響する
―どうしよう・・・バレた・・・―
父の夢、五年間、会社、そして——桜の顔が、頭をよぎった、ただ当惑してその場に立ち尽くすことしかできなかった
「さぁ!!嘘もここまでよ!白状しなさいっっ!」
フネの怒声がロビーに鋭く響いた、桜とフネが睨み合った、一瞬の静寂の後、厳しい顔をした桜がズイッとフネの前に一歩踏み出した
「本当のことを言うわ、ママ・・・私はジンさんの元で3年間働き、二人は恋に落ちた。そして付き合って結婚したの!」
フネの眉がぴくりと動いた
「嘘をおっしゃい!あなたからこの男の名前はこの三年間、今まで一度も聞かなかったわ」
「言う必要がなかったからよ!旅館の運営に忙しくて娘の恋愛なんて興味なかったでしょうからね!」
桜の肩が震えていた、怒りなのか、悲しみなのかジンにはわからなかった、ただ、その小さな背中が今にも壊れそうなほど力を込めて張っているのが見えた
フネがジロリとジンを睨んだ、ゴクリとジンは唾を呑み込んだ、そして桜が低い声で感情を抑えるように言った
「私達は愛し合って結婚したの!これからも私は大阪でジンさんの元で働くわ、こんな旅館どうなっても私には関係ないっっ!!」
「桜っ!」
「桜・・・」
声を上げたのが同時にジンなのか、フネなのか、自分でも分からなかった
「行きましょう!ジンさん」
桜がためらっているジンの手を強引に引いてドアへ向かった、ジンは引きずられるように一歩踏み出しながら、ドアの向こうへ消えていく桜の横顔を見た
きつく噛み締めた唇が、かすかに震えていた
・.。. .。.:・
コメント
4件
フネさんと桜ちゃん…平行線のままなのかな💦難しい問題だね🥺
娘のことを想わない母はいないと考えたいんだけど、この母娘は子供の頃から対話が少なすぎてわかり合えていないのかもしれないですね…
フネさんも浜やん🥸もキライ😭 偽装婚だけど… 今となってはもう相思相愛なんだよ〜😭