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車でなだらかな坂道を登っていくと、目の前に広がるのはまるで50年前から時間が止まったような淡路島の小さな町並みだった



おそらくこの町のメイン通りなのだろう、昔懐かしい小さな商店が点々と道路沿いに並んでいる、色褪せた看板、軒先に吊るされた干物、どこか懐かしい駄菓子屋の佇まい、桜が以前話してくれた「10タコ」の店はどこだろう? 行ってみたいなとジンはぼんやり考えていた



その時、ふとあることに気づいた、どの店の看板にも、決まって「山田」の文字が踊っている 『山田服飾店』 『山田雑貨店』 『米屋・山田』 『山田魚商店』 ジンの眉がピクリと動いた



まさか・・・ これ全部桜の家と何か関係があるのかな?



彼女の天然な笑顔を思い浮かべながら、ジンは助手席の桜に目をやった、彼女は窓の外を眺めて鼻歌まじりに「ふんふん♪」と懐かしそうに楽しげだ、聞こうか迷った瞬間、桜が突然身を乗り出した



「あ! パパだわ!」


「え? うそっ!」



ジンは思わずハンドルを握る手に力を入れた、前方の道の脇に大きく幅を取って停車している白い商業バンから、陽気に手を振る男性の姿が見えた



桜の父、松吉(まつきち)だった、バンの側面にはデカデカと「山田旅館」と書かれていた



「パパ!」



桜はジンのレクサスから飛び降りるなり、松吉に走り寄って抱きついた、まるで子犬が飼い主に飛びつくような勢いだ



ハハハハッ! 「 待ちきれなくてな! 途中まで迎えに来たよ!」



松吉の声は嬉しそうに弾んでいた、小柄でポッコリお腹の彼は、白いポロシャツに「山田旅館」と黄色い刺繍が入ったユニフォームを着ている、ベージュのスラックスはベルトの上にお腹が乗っかって、なんとも愛らしいシルエットだ、頭は見事なバーコード禿げで、陽光を反射してキラリと光る



「久しぶり! パパ! 会いたかったわ! ママは?」


「いつだって仕事だよ! お前のママは、旅館の女将としてバリバリやってるからな!」



松吉は愉快に笑い、桜を抱きしめてグルグル回った、二人の笑い声が潮風に運ばれて辺りに響く、ジンは車から降りて微笑ましくその光景を見守った



桜から事前に見せられた写真通り、松吉は低身長で小太り、朗らかで温かい印象そのものだ、桜とはあまり似ていないが、彼女の底抜けの明るさは確実にこの父親から受け継がれている



ジンはふと、人柄の良かった自分の亡き母を思い出し、胸がチクリと疼いた



「じいさまにも会ってやってくれ!」 松吉が嬉しそうにバンの後部扉をガラリと開けた



「さくぅ~~~~!」


「キャー! おじいちゃん!!」



後部座席から身を乗り出して腕を広げているのは、桜の祖父、米吉よねきちだった グレーのスウェットをだぼっと着たおじいさんは、松吉にそっくりな小柄でぽっちゃり体型、松吉とは黒髪か白髪かぐらいしか判別がつかないほどよく似ていた、間違いなくこの二人は親子だ



くぼんだ優しい目が特徴的だ、まるで松吉のクローンが20年歳を取ったような姿に、ジンは思わず吹き出しそうになった 二人はまるで、高身長のジンからしたら、ドワーフの様にぷくぷくと愛嬌たっぷりだ



うっうっ・・・・ 「 おおっ! よくぞ、よくぞ帰ってきてくれたぞ、お前の母親は気が強いから、ワシはもうてっきりお前は帰ってこないものとぉ~」


「やだ! おじいちゃん、泣かないで~~!」



米吉は目を真っ赤にして、桜をぎゅーっと抱きしめる、 桜も目を潤ませ、米吉のスウェットの袖で涙を拭う、そこに松吉も加わり、三人は抱き合って数年ぶりの再会にオイオイと泣き出した



ジンは少し離れて立って三人を微笑ましい気持ちで眺めていた



こんな家族の温かさを桜を通して天涯孤独のジンは、なぜか自分が孤独だったその記憶が少しだけ軽くなる気がした






韓国CEOと私の国際契約結婚~半年後に幸せな離婚にむけて~

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