※この作品には(多分)全体的に不快と思わせる部分や、ショッキングな表現がされています。検索してはいけない言葉オールスターと合コンしてる様な感覚になるので合コンが苦手な方は逃げて下さい。
明け、溶けた白昼夢。
私を優しく包み込む。
私は未だにあの過去の中に居る。
未完成の姿を浮かばせている。
そんな私を、俯瞰する。
死んだような瞳で、見つめていた
いつかの、雨の降る栗花落に、
私も
連れ
て
い
っ
て
…
────今、どのくらい経った?──
周りがよく見えない。
此処は何処だろうか?
忘れた。
そんなもの、顰蹙な気持ちと共に置いていった。
…………置いて、いった…?
…嗚呼、そうだ。違うんだ。
私は、
『置いて行かれた』。
瞳は夙に死んでいった。
家の窓から見える大きな家。いや、あれだけ大きいと「屋敷」と言うべきか。
私の居る直線上にその屋敷の扉がある。
そこからは幼気な少女がよく出入りしていた。
長髪に碧眼の、お嬢様、お姫様といった印象の少女。
最近はあまり見かけなくなったが。
生きるのに精一杯で、目前の屋敷の様子を見ては
希望を抱いたり、嫉んだりしていた。
そんなある日、ある男が私を見つけ、
不意に話し掛けて来た。
「アイツを殺してくれ」と。
よく判らない。
殺しとは、何ですか
「そう、きっと俺の為になるぞ、
多分喜ぶぞ」
喜ぶ。
たったそれだけの事で
喜んでくれる。
その言葉だけに視界が寄った。
その言葉に、酔われた。
当時の私は「殺生」というものを軽く見ていた。
死とは、只の眠りだと。
墓石に眠る生涯の一部だと。
未だ四有の内、本有だと。
だからなのか、だからこそ、
私はそれを、受け入れてしまった。
甘んじて、
人の役に立てる、そう聞いて。それだけを想って。
『やってしまった』
刃物の音、肉が切れる音。
まるで料理の様な、手応え。
何度も。何度も。何度も。
──現場。元、憩いの場は
家主の血で尽くされた。
私の、服が血に染まる。
赤く、紅くなる。
白藍色の服
黄色のリボン
黒髪に月白色のリボン。
どこにも無かった、赤。
幸せに生きれば、生涯染まる事無かった
血塗れ色。
私の持っていた包丁の持ち手は、
目が痛くなる程の躑躅色。
生涯、私にとっての剣呑的な色。
当時の私の気持ちに応えるように、
後ろから男の声が聞こえた。
「ありがとう、蟷サ譛ちゃん。」
「喜んでくれるのか?」
「あぁ勿論!」
「クスッ…よかった……」
今、思う事は、何故あの男が私の名を知っていたのか。
何故、私はあの男の言う事を曇りなく信じたのか。
それは好奇心だったからだろうか
今更、そんな事考えても遅いが。
あぁ。あぁあああ。
今だったら、絶対に信じないのに。
何故、コイツの意図すら聞かず、死を浅く受け、
何故今更、省みるのか。
この執着こそ、私なりの「愛」だったのだろうか。
過去の事。疑わず、齢九つの私は
あの屋敷に足を踏み入れた。
髴ァ髮ィ邸。
広い。
よくも判らない所から入った私からしたら
余計、此処がどこなのか判らない。
私は隠れつつ、目標を探した。
廊下にこんなに幅は要らない。
そんな事を思い、一際狭い、物置の様な部屋を見つけた。
私はそこに長男が居るとみた。
ふすまをよく見ると、少し開いていた。
小さく、何かが聞こえる。
すう、すう、と、髪を梳くような音が。
余りにも気になったもので、
少し覗いてみた。
「!」
違う。長男では無かった。
あの娘だ。私が昔よく見ていた、
あのお姫様。繝槭Μ
でも、あの時見ていた姿とは全く違う。
腕や足、ひどく整った顔にすらも、
肌がみえる部分にびっしりと痣、傷、血の跡があった。
あの時、屋敷から出入りが少なくなってきた頃から、
だろうか。
とても、痛々しい。
奥の鏡を見ては、綺麗な櫛で髪を梳いている。
ずっと、手を止めず、ぼーっとした目で
ひたすら梳いている。
ぷっくらとした桜唇は半開きになって、
今にもよだれが垂れてきそうだ。
意識があるのかすら疑わしい。
座っている髪が畳を覆う。
それが窓の光で硝子の様に光っている。
その御髪は、
子供ながらに魅せられた。
腰より伸びた長い髪の毛。良くも悪くも、
彼女の母親譲りのもの。
一瞬、傷に目をやって、また髪を梳く。
「………(気味の悪い)。」
何処か異様だ。何かがおかしい。
この家は、特別、狂っているのだろう。
私は知る由も無い。
と、意識を手元に戻して気付いた。
私は「繝槭Μ」をじっと見つめていた為か、気づかぬ内に
無意識にふすまを開けていたのだ。
「あっ…」
少し声を上げてしまった。
彼女の手が止まる。気付かれてしまったのか。
すると繝槭Μは突如私の方を見ては、
少し驚いた様子で
「………あ、ごきげんよう…」
と、口を開いた。
「…ん。」
私はふすまを閉めた。
そうして始まった。
私と、繝槭Μとの
地獄絵図が。
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続きは気が向いたら書く(多分)