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「さて、メアリー。『赤毛の聖女』内で、暴行事件が起きたって話が聞けるイベントがあるのは覚えているかしら?」


私の問いに、メアリーは目を丸くした。


「えーと……確か、一番好感度の高い攻略対象キャラが、警告してくれるイベントでしたよね。校内でレイ――性的暴行があったから、気をつけて、っていう」

「そう。主人公視点だと、そういう事件が起きた程度で済む話なんだけれど、ここはゲーム世界のようであってゲームではない。……この意味はわかる?」

「実際に、犠牲者が出る」

「そういうこと」


まったく不愉快極まりないことだけど。

メアリーは考えながら言った。


「確か、このイベント以外に言及がなかったと思うんですけど、この事件ってどういう決着がつくんですか?」

「暴行された娘のひとりが自殺する」


私は目を伏せた。


「それまで何度も凶行に走られるのだけれど、被害者が平民生だったことで、中々事件が表に出てこなくてね……」

「そんな……」

「大半が泣き寝入りだったのだけれど、耐えきれなくなった子が命を絶って、それでおしまい。それ以上は事件も起きなくなったけれど、犯人が貴族生だったこともあって、全容が解明もされず、うやむやになったの」

「複数って……」


許せないし、平民生たちにとっては恐怖以外の何ものでもない。


「犯人は貴族生……」

「貴族の横暴、ここに極まれり、ね」

「何とかできないのでしょうか……?」


メアリーは血の気の引いた顔色で言った。


「やっぱり、そういう怖いことをする人が学校にいるなんて、気持ち悪いですし、怖いです」

「そうね」


私は頷く。メアリーは恐る恐る言った。


「アイリス様は、犯人をご存じですか?」

「ペルダンよ。入学の日を覚えているわね。平民生に難癖つけて、あなたに決闘を申し込んだ愚か者」

「……!」


メアリーの顔が強張った。無理もない。


「心配しないで、メアリー。あいつがいつ、どこでナニをするかは、ループでわかっているわ。ここ最近では、あいつの好き勝手にさせてはいないから。今回もやらせないわ」

「そ、そうですか。よかった……」


祈るように目を閉じるメアリー。そうしていると神様にお祈りしているように見えるけれど、位置的に私を拝んでいるように見えるのは考えすぎかしら?


「犯罪者が学校にいるなんて気持ち悪いから、まだ事件は起きていないけれど、早々に決着をつけるつもり」

「早いほうがいいですもんね」

「ただ、さっき言った攻略対象男子が警告してくるイベント自体も存在しなくなるから、そのあたりは覚えておいてね」

「わかりました」


メアリーは首肯した。

本来あるはずのイベントがなくなるけど、あらかじめ知っていれば不安になることもなりでしょう。


さて、この事件、第一の被害者は今夜、部屋に呼び出されて襲われる。その前に暴漢をどうにかしないといけないわけだけれど、『この学校』ではまだ事件が起きていないために、ペルダンは無実もいいところだ。

だから、やってもいないことを学校なり教師に通報したところで、罪には問えない。

現行犯であるところを現場に教師なりに抑えさせる手もあるけれど、それだと被害者がトラウマもののショックを受けてしまうし、貴族社会は複雑怪奇。どこにどんな横やりが入るかわかったものではなく、未遂だからと軽度な罰で済んでしまうこともある。


ではどうするか?

私刑である。






その日の夜、貴族生男子寮に私は潜り込んだ。

黒いツーピース。下は動きやすいミニスカート。普段なら絶対着ることができない格好だ。長い髪もリボンで束ね、素顔を隠すために灰色の仮面をつけている。

髪の色はともかく、服装はドレスによって体格が違って見えることだろう。見ようによっては、どこかの怪盗、いえ暗殺者ね。


消灯時間は過ぎている。もっとも貴族の子らは自分の家から明かりになるものを持ち込んでいる者も多く、学業に差し支えない程度は夜更かしも許されている。

前世だと、貴族だろうが学校のルールの従うもの、というイメージがあったのだけど、この世界では王族、貴族が絶対なるもの、という意識が強いのかもね。

……だから、貴族は平民を殺しても罪に問われることはなく、性的に食い物にすることも平然とやる。


もちろん、すべての貴族がそうではない。私の両親はまともだし、王族のヴァイス王子だって常識人である。

さて、ペルダンのお部屋は……。


真っ暗の廊下。窓から月明かりが差し込むのが唯一の光源。なおこの時間に見回りはいない。……ああ、ここね。

私は扉を軽くノックした。


『入れ』


すぐに返事がきた。私は扉を開けて入室。そして静かに扉を閉めた。室内もまた真っ暗だが、例によって窓からの月い光のおかげで、シルエットは見える。


「遅かったな。貴族を待たせるな、グズめ!」


いきなり罵倒が飛ぶ。自分が呼び出した女子生だと思い込んでいるのだ。平民は貴族に逆らわないもの、だから相手を見ずとも誰だかわかっている――そう言いたいようね。

ダンっ、と床を蹴り、私は、ペルダンとの距離を詰めた。

魔力を手の先に集めて、物質化。ダガーを作り出すと同時に、ペルダンに肉薄、振り返りざまのその首に刃を当てた。


「ひっ!?」


ペルダンの表情が引きつる。月明かりに私の仮面が反射して、得体の知れない化け物が眼前にいるように見えているようだろう。


「だっ、誰だ――」

『しー……。大声を出したら首を切って、お前は死ぬ』


仮面ごしの声は、少しくぐもる。


「お、女!?」

『呼んだ女じゃなくて残念だったわね。……だが、お前がこれからやろうとしていたことは、万死に値する』

「ひぇっ、オレをこ、殺すのか……?」


武器を突きつけられ、殺されるかも知れないとペルダンは怯えている。ここで脅しが強いと、こいつは漏らす。ループで経験済み。


『お前の悪行は知っている。ここに来る前も、散々、娘たちを暴行したな?』


そう、このグズ男子。学校が初犯ではないのだ。過去のループで、お前の罪は調べさせたことがあるからね。

だから、私も、こいつが『ここではまだ何もしていなくても』、制裁する気持ちが鈍ったりはしない。


『殺しはしない。だが、お前の股間のモノは二度と使えなくしてやる……!』


私刑執行。

悪役令嬢に私はなる!

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