夜になって親父から連絡が入った。本部との話し合いが終わり、これから警察に向かうらしい。帰ってくるまで待ってろと何度も念を押された。井上さんは若者組に煙草を買ってくるように言い、俺はコーヒーを頼んだ。三人が出て行ったのを確認して俺は井上さんに聞いた。
「〈鳴門組〉と一緒になるっていつ決まったんですか? というか〈鳴門組〉とか俺は知らないですけど」
「若頭から聞いてねえの?」井上さんは驚いたようにそう言った。俺は頷いた。
「ここの若頭だった清川さんが怪我して引退するって時に本部から言われたんだ、解散しろって。人数もシノギも足りねえって。そんで解散してこっちで引き取るからってな。そうしたら若頭が人数もシノギも何とかするからって言って。それで連れて来たのが木崎、てめえだ」
なるほど。俺は人数合わせで誘われたってわけか。
「シノギもきっちり毎月何とかしてくるからよ。それで本部がだったら三次団体の〈鳴門組〉と一緒になれって。〈鳴門組〉は人数もシノギもウチよりちょっと多いくらいだな。勢いはあるけど歴史が浅い。だったらちょうどいいんじゃねえかって」
「〈鳴門組〉ってどんなとこなんですか?」
「〈鳴門組〉の上は〈門田組〉ってとこよ。その〈門田組〉の若頭が〈鳴門組〉の組長だ。組長の若生さんがあっちのほうの出身だから鳴門ってつけたって聞いたな」
ああ、鳴門海峡の辺りってことか。
「その若生さんってのがやたら勢いがあってなあ。結構ヤバい橋を渡りたがるって聞いてたから俺は乗り気じゃなかったんだけど、若頭はやたら話を進めたがってたけどな」
「合併の時にかなり譲ったって言ってましたけど?」
「ああ。親父はどのみち引退になるだろう。そんで組長は〈鳴門組〉の若生。若頭も向こうの若頭な。ウチの若頭は若頭補佐になるって」
なるほど。格が下がるってことか。けれど本部に引き受けられたら若頭補佐どころかただのヒラになるだろう。石川はそれよりもマシだと判断したんじゃなかろうか。
「井上さんはどっちがいいと思ったんですか」
俺がそう言うと井上さんは最後の煙草に火をつけてゆっくり吸い込んだ。
「──俺らはどこだって一緒よ。それに引退したって仕事もねえしな。コレを続けていくしかねえのよ」
煙を吐き出しながらそう呟いた。
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