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1周年すごいですね😊 yellはめっちゃいい曲ですし感動しますね♡♡今回のお話も最高すぎました🥰また楽しみにしてますね(⁎˃ᴗ˂⁎)
素敵すぎた…😭✨1周年👏🏻👏🏻👏🏻
もう1周年なんですね🥺私が月乃さんのお話と出会ったのがほんの数ヶ月前で、月乃さんのお話を読むと、毎回元気が湧いてきます☺️これからも、ずっと読ませていただきます! yellは、感動しますよね😭いつか、結婚式をする時は、yellを流したいと思ってます笑 シンみなは、式場が似合いますよね!
聖堂の外扉の前で待つように言われた。
「なぁ…シン。なんでこんな事なってんだぁ?」
何がなんだか分からぬまま連れて来られ、正装に着替えさせられた湊は現状を把握しようとシンに尋ねた。
「前に写真だけでも撮りたいって言ってたの覚えてますか?」
人差し指を顎に置き首を傾げ、記憶をさかのぼる。
「お前が勝手に盛り上がってたのは……覚えてる…」
「最初は記念に写真撮影だけできる場所はないかと、柊さんに聞いてみたんです。そしたら、それなら。と、この場所を教えてくれて…」
「だったらさっさと撮影だけして終わりで良いんじゃねぇか?なんで、これから如何(いか)にもって事しようとしてんだ?」
「実は…こちらのオーナーさんが、柊さんの知り合いらしくて。今日なら空いている時間があるからその時間内なら好きに使って構わないって言われたらしく、それを知った英と桜子がノリノリになってフリだけでもって…」
「あぁ…あの2人も絡んでんだな…」
少しだけ納得できたと呆れる湊。
どうやら逃げ場はなさそうだ。観念し諦めざるを得ないらしい…。
それならば…とことんやってやろうじゃないかっ!
湊の闘志に火がついた。。。
※※※
「あのさ…シン…」ふと、疑問に思った事をシンに聞いてみた。
「ご両親は呼ばなくて良かったのか?」
「……」
「……」
「…急に決まったので、どうしても仕事を休めないからって…」
なんだか、答え難い感じな返答だったような……。
答えるまでに間が空いたのも気になる。考え過ぎではないかと思いながら「そうか…それは残念だな…」当たり障りのない返答をする。
複雑な思いが湊の心の中で渦巻いていた。
もしかしたら、来れない。のではなく、来ない。のではないかと…。
あの時、賛成されたが、反対へと意見が変わる事もあるだろう。ましてや、手塩にかけた大事な息子が年上の男と…なんて…。
何やら1人で考えている湊をシンは黙って見ていた。
考えれば考える程に落ち込んでいく気持ちを紛らわせようと
「そういや…」
話題を変えようと話しかけてみたもののそれ以上言葉が見つからず「やっぱ…なんでもない…」そう言って口を閉ざす。心に引っかかった棘のようなものは簡単には拭い去る事ができない。
今すぐシンに真相を聞けばこのモヤッとした気持ちに片がつくのかもしれない。しかし、聞いた後で後悔してしまう答えが返ってきたら…。
1人悩む湊を見かねて
「湊さん…。渡したい物があります」
シンはジャケットの内ポケットから紙を出し「両親からの手紙です」そう言って、湊に渡した。
終わった後で渡す様に両親には言われていた。だが、湊の姿にシンは渡すのは今なのではないかと思った。
「俺…に……?」
自分を指さす湊に、コクンとシンは頷いた。
受け取る湊の手は少しだけ震えていた。
負の思いが感情を揺さぶらせる。抑えきれない恐怖心が神経をぴんっと張り巡らせる。
そんな湊の手を優しくシンの手が包み込んだ。
「大丈夫です…」
シンのその言葉で気持ちが少しだけ解れた気がした。
手紙の表面には、『湊晃様』。
達筆な字で自分の名前が書かれていた。
シンによく似た、温かみを感じる丁寧な形。優しさが滲み出るような文字だからこそ中を見るのが余計に怖かった。
唾を飲み込む音が耳のすぐそばで聞こえた気がした。
心臓が煩いほど強く打ち始める。
中を見るのが怖い…。
目を閉じふぅっと息を吐く。
恐る恐る手紙の封を切り、ゆっくりと手紙を開く。書かれた文に目を通すと、湊の動きが止まった。
そして再び、震える湊の手が手紙を揺らす。
湊の肩が小刻みに震えていた。
手紙を持つ反対の手で口元を押さえると、一筋の雫が頬を伝い落ち、手紙の文字を滲ませた。
声を出して泣き出したい気持ちを唇をぐっと噛んで堪えた。
涙で滲んだ瞳を天井に向けた。止めどなくこぼれそうになる涙を上を向いて必至で塞き止める。
はぁ…と、息を吐き眼球を揺らす。
声にならない声で湊は小さく囁いた。
「…ありがとう」
と。
瞼をきつく閉じた湊の目から、大粒の涙が両の目から勢いよく流れた。
※ ※ ※
湊が受け取った手紙には
『湊さん、慎太郎の我儘を聞いてくれて、ありがとう。慎太郎を、よろしくお願いします』
そう書かれていた。
※ ※ ※
シンがどれだけ両親に愛されて育ってきたのか。大切にされていたのか。この文面だけで十分伝わってきた。
心配などいらなかった。
少しでも疑った自分を後悔した。
一筋の光が真っ直ぐ未来に向かって伸びた気がした。
迷いが無くなった瞬間、心に刺さった棘は跡形もなく湊の中から消え去っていた。
後にシンが言った。
「今朝まで出席できない事を両親は悔やんでいたんですよ…」
と…。
※※※
シンはポケットからハンカチを取り出し湊に差し出した。
そして、湊を真っ直ぐ見つめる。
「どんな事があっても、俺はあんたから絶対に離れない」
「……っ」
その言葉はまるで、プロポーズのように聞こえ湊は一瞬目を丸くした。
潤んだ瞳のまま湊は、ふっと笑うと
「クソガキが…生意気なんだよ、ばーかっ……」
シンからハンカチを奪い涙を拭いた。
湊の精一杯の強がる姿をシンは優しく微笑みながら見つめる。そして
「好きです。湊さん」
いつもの言葉を伝える。
「……………知ってる」
そう言って湊は笑う。
息をするように…気がつけばそれは当たり前の様にいつも湊のそばにあった。
無くなれば生きて行けないくらい、必要で失いたくない大切な言葉だった。
※※※
中から音楽が流れてきた。
「準備が出来たみたいですね…」
シンは、扉わきの椅子に置いてあった包みを手に取る。
「湊さん…手、出して…」
湊に向けて差し出されたシンの手に湊は自分の手を重ねた。
「行きましょう…」
「…おぅ……」
聖堂へと続く大きな扉を2人で同時に開け放つ。
眩しいほど明るい光が飛び込み、思わず目を細める。
ステンドガラスが幾か所かはめ込まれた此処もまた、異世界に迷い込んだような錯覚をしてしまいそうだ。
壁一面ステンドガラスと窓に覆われ、色とりどりの光が降りそそぐ。その広い空間には参列者が2人だけ。
明日香と桜子の拍手が響くその中をシンと2人手を繋いでゆっくり歩いて行く。
シンと繋いだ手は、とても温かくて…見上げる横顔は光を纏い煌やいていた。
初めて出会った時より何倍も凛々しく、大人びた顔をしていた。
「湊さん俺に見惚れてないで…ちゃんと前見ないと転びますよ…」
「…っ!見惚れてねぇって!!」
図星を突かれて、つい声が大きくなってしまった。
クスッとシンが笑う。
「相変わらず分かりやすいですね…」
「うるせぇ……」
今度は、声を潜めた。
「シン兄!湊さん!こっち向いて!」
参列席にいる桜子がカメラを構えながら言った。
シンは立ち止まり、湊の肩を引き寄せ「湊さん笑って」そう言って桜子の方を見ながら微笑んだ。しゃーねぇな…。そう言いながら湊も笑った。
※※※
十字架の立つ祭壇の前まで来ると、牧師に扮した柊が待っていた。
「柊…さん?」
驚く湊の後ろから
「柊くん、可愛いっ!」
明日香の声が聖堂に響き渡る。
「明日香。静かに…」
人差し指を口に当て照れながら柊が咳払いをする。
その様子をシンと湊は顔を見合わせ笑った。
※※※
それから、終始笑いの絶えないプログラムが進められた。
笑いに疲れた頃、お決まりのあの場面へと続いた。
「それでは…誓いの…」
牧師役の柊の言葉を遮るように
「柊くんストップっ!!それはなしでっ!!」
湊が止める。
あいつらの前で…キ…キスとか絶対にありえねぇ…。
例え十字架の前に立ったとしても、後世に語り継がれるような恥を晒すのだけはなんとしても避けたい。
「アキラさん、うるさい!」
「湊さん、せっかくのシャッターチャンスなんですから続けてください!」
参列席から野次が飛ぶ。
「……ぅるっせぇ……」
拗ねる湊の頬は少し赤らんでいた。
「湊さん…」
シンは、扉の前から持ってきた包みを開け、中から取り出した白い布を広げるとフワッと湊に掛けた。
突然、湊の視界が遮られる。
「ちょ……何して…」
驚きながらもその布の感触を確かめる。
それは、薄いベールのようだった。
シンは湊にかぶせた布を静かにめくり、一緒にそれをかぶる。
「これで、周りからは見えません…」
「……さすがだな……良くわかってんじゃねぇか……」
みんなには見えないとなれば話は別だ。
測ったかのように
「準備が出来たみたいだね。それじゃ、誓いのキスを…」
柊が進行を続けた。
「可愛い顔でキスする湊さんの顔を誰にも見せたくなんかありません…」
真面目な顔して、シンがそう言うものだから湊の顔が一気に赤く染まる。
「…ば…か」
照れくさそうにシンを見つめた湊は、シンの首に腕をまわすとゆっくり顔を近づけ唇を重ねた。
俯きながら離れようとする湊の腰をシンは引き寄せ、もう一度強く重ねる。
その時、教会の鐘が鳴った。
その響き渡る鐘の音は、これから先の2人を祝福する始まりの合図のようにも聞こえた。
音が鳴り止んでも湊から離れようとしないシンを湊は肩を掴んで引き離す。
「相変わらず長げぇんだよっ!」
「当然です。誓いのキスなんですからっ」
「お前の場合は、いつもだろ…」
「今日は特別です」
「……まっ、そういう事にしといてやるよ…」
見つめ合い、互いの額をくっつけた。
顔を寄せたまま目を合わせる。
「シン……これからもよろしくな……」
「俺があんたを絶対…一生、幸せにします」
「ばーか…今でも十分幸せだっつうのっ」
「…ですね」
微笑み合った2人は、もう一度唇を重ねた。
※※※
パイプオルガンの優しい音色が講堂中に響き渡る。
湊は、柊から渡された花束を抱えていた。
明日香と桜子がバージンロードに花びらを掴み舞い散らせる。
その中を、湊とシンは手を繋ぎ、ゆっくりと扉に向かい歩いて行く。
「すみません…湊さん…」
突然、申し訳なさそうにシンが謝ってきた。
「あん?なにが…?」
「指輪…用意できなくて…」
そういえば、指輪の交換なんて儀式もあったな…言われるまで湊は忘れていた。
互いの右手首にはお揃いのブレスレットが光っている。これ以上指輪なんていらないのに…。
「んなもんいらねーよ」
「…でも……」
「っうか、それよりもっと大事なもんもう貰ってんだろ?…ほらっ」
繋いだシンの手をぎゅっと握る。
「指輪なんかより、俺が欲しいのはこの手だ…。この手があるだけで…それだけで十分だ…」
そう言ってにっこり笑ってみせる。
「湊さん……」
「シン……終わったらお前の実家に行っても良いか?」
「……もちろんです」
シンの事をもっと知りたい。
俺に出会う前のシンの事。
どんな思いで育てられ、自分に託されたのか…聞いてみたい。
舞い散る花びらのシャワーを潜り抜けながら、その先にある未来に向かって手を取り歩いて行く。
扉の前で立ち止まると、
「シン」
湊は、シンに持っていた花束を差し出し目で合図をする。
「はいっ」
一つの花束を半分に分け、同時に宙に投げた。それは、明日香と桜子の元へと飛んで行った。
「帰ろう。シン」
「はい。湊さん」
そう言って繋いだ手は、やはり温かくて絶対に離したくない。
そう思った…。
そして、永遠(とわ)へと続く扉をふたりで開けたーー。
終
【あとがき】
1周年記念作品いかがでしたでしょうか?
YELLを無性に聴きたくなった時期にEPの撮影場所が結婚式場だと知り、この偶然はなんだ…?このテーマの作品を書かなくてはっ!?と思い、 書いた作品です笑
頭の中で描いたことを上手く表現できているか心配ですが…お楽しみいただけたのなら幸いです♪
それでは、また…。
2025.4.28
月乃水萌