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1 - 第1話 サイド??

♥

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2022年03月22日

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画像 モンダイジ団


サイド ??


「はぁっ、はぁっ…!」

もう、どれくらいの間走っているのだろう。

私はそんなことを考える。そうやって現実逃避をしないと足を止めてしまいそうになるから。

「いたぞ!」

「そっちか!」

「っ…!」

ああ、本当にしつこい!

6月だというのに、平年よりも高い気温と、走り続けていたことで体が熱い。

頰から滴り落ちる汗をグイッと乱暴に拭った。

今はそうする時間すら惜しかった。

「止まれ!」

誰が止まるものかと、心の中で舌をだす。


でも、本当は気付いている。私が捕まるのも時間の問題だってことに。

相手は大人の男2、3人。私はただの女子中学生。

差は歴然としている。

(それでも……!)

私は、諦めたくない。諦めるわけにはいかない。

あの学校は、私たちの心を縛っている。

あのままあそこにいたら、私は私じゃなくなってしまう。

そんなのは、絶対に嫌だ!!

だから、なんとしてでも逃げ切らなきゃ。

私が私でいるために。


「っはぁっ、はぁっ…!!」

水が欲しい。

寮から持ち出したリュックが重い。

いや、違う。私の体が重いんだ。

「こっちだ!!」

ああ、しつこい…!まだついてくるなんて…!

私は人混みに紛れるために大通りに出る。

昼なのでたくさんの人がいた。けれど、誰もが私たちのことを見て見ぬ振りをしている。

(嫌いだ。)

酸素不足で白く霞んでいく視界の中、私は思う。

規則ばかりの学校も。

自分のことだけを考えて動く人々も。

それを当たり前としてしまったこの世界も。

そして、反抗すらできなくなった私も。

わかってしまったから。一人じゃどうしようもないことを。

だから、せめて私の心を守りたい。

そんな思いを胸に、私は一歩を踏み出す。

……グキッ、と嫌な音がした。

しまった、と思ったときにはもう遅かった。私の体が傾き、誰かに勢いよくぶつかった。

「いってぇ!!」

「ごめんなさい!!」

ぶつかったのは私と同じくらいの年の赤いジャージを着た少年だった。

私は慌てて謝ってまた走り出す。……いや、走り出そうとした。

走りだそうとした瞬間に腕を掴まれたのだ。

「?!」

驚いて振り返った私に、赤いジャージの少年はズバッと聞いてきた。

「あんたさ、追いかけられているよな?」

「っ……!」

いきなりのことで何も返事が出来なかった。

大方、さっきからあの騒動を見ていたのだろう。

最悪すぎる。こいつのあげた悲鳴であいつらもこっちへ向かって来ているというのに。

まずい、このままじゃ……!

「お願いだから、離して……!」

体に力が入らなくて振り解けない。今だって気を抜けば意識が飛びそうなのに。

「見つけた!そこの君、そのまま捕まえててくれ!!」

「………………」

少年は黙ったまま私のことを見つめている。

「なぁ、この人、なんかしたのか?」

大人に臆せず堂々と質問する姿は私よりも大人っぽく見えた。

「こいつは大人をコケにした挙句、我が由緒ある学校の特別寮から逃げ出したのだ!!」

「授業もほとんどサボっているモンダイジなんです」

ばっと手を振り上げて私を叩こうとする姿が見えた。

違う。私は私を大切にしているだけなのに。

今の私には、そんなことを言い返す気力もなかった。

捕まってしまったのだ。私は逃げられなかったのだ。

もう、何もかもどうでもいい。

そう思った瞬間、張り詰めていた糸がプツリと切れた。

ぐらりと体から力が抜ける。

意識が暗闇に沈んでいく。

倒れる寸前、私の目に飛び込んできたのは、


赤い帽子を斜めにかぶり、目を光らせて不敵に笑った少年の顔だった。

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