力が拮抗し、ヒノトと咲良の風魔力が互いに反発し合う中、リリムとグラムは、伏見と明地からの攻撃から、ヒノトを守ることで手一杯になっていた。
戦況として、指揮官 リムル=リスティアーナは、医療班長 ルギア・スティアと、倭国統領 徳川勝利、倭国兵士 山本大智に抑えられているが、他のキルロンド生や倭国兵たちは、謎の属性シールドを持った花に苦戦させられていた。
そんな拮抗する戦況の中で、変化が起こる。
「ぐあああああああ!!!」
突如声を上げたのは、禍々しい黒いオーラを体外に放出させる、リゲル=スコーンだった。
「リゲル…………!?」
その声を幕切りに、遠方からはゾロゾロと邪気を宿した倭国民たちが大勢迫って来ていた。
「魔族化したわ倭国民か!!」
「俺の体内の闇魔力が…………魔族軍と魔族化した倭国民により、引き出させられる…………!!」
ザッ!!
リゲルを見遣った刹那、咲良の槍が眼前に迫る。
「しまっ…………!」
キィン!!
「余所見厳禁だぜ!! ガッハッハ!!」
「キラ…………!!」
ギリギリでヒノトを庇ったのは、属性シールドを帯びた謎の花たちを薙ぎ倒して来たキラ・ドラゴレオだった。
「あんな数…………どうして…………!?」
「気合いがありゃあ楽勝よ!!」
次の瞬間、「邪魔だァ!!」と声を上げながら、ルギアは炎すら宿していない拳でフラワーを倒していた。
「ある程度の攻撃力があれば、属性シールドと言っても物理攻撃なら割ることができるんだ!!」
(なら……咲良のシールドも……もしかして……! でも、リゲルも暴走寸前…………大軍の魔族化した倭国民たちも攻めてきた…………。圧倒的劣性だな…………)
キィン!!
ヒノトがいつになく頭を回していた刹那、ヒノトの顔面スレスレを横切り、一本の刀が降り注ぐ。
「これ…………倭国製の刀…………!?」
そして、投げ付けられた上空を見遣る。
「父さん…………!!」
ブオオオオオ!! と大きな音を鳴らし、無数の空を飛ぶ機械には、ヒノトの父、ラス・グレイマンが搭乗していた。
「ヒノト!! その刀を使え!! 師匠に習ったお前なら扱えるはずだ!!」
そう言うと、ラスはそのまま瞬時に飛び降りた。
バッ!!
「父さん…………キルロンドから増援が来ても…………この状況じゃ…………」
ラスは、静かにヒノトの瞳を見つめた。
「リゲルを救いたいか?」
「当たり前だ!! けど…………俺には何も……」
「咲良を救いたいか?」
ついに、ヒノトは俯いて黙り込んでしまう。
「いつ何時も忘れるな。 “笑え” 」
「こんな状況で……笑えるわけ…………」
しかし、ヒノトはハッとした顔をラスへ向け、次には、強引にでも笑顔をラスへと向けた。
「俺は、リゲルも咲良も……倭国の人たちも救いたい!」
そして、汗を滴らせながら、ニカっと笑った。
ゴォッ!!
その瞬間、
「え…………?」
ヒノトの手にした刀は、禍々しいオーラを放った炎魔力を纏い始めた。
「これ…………リゲルの炎魔の力か…………?」
「そうだ。今のお前なら、 “灰人” の力を少しは使える。リゲルの暴走も、お前が力を吸収することで、抑えられるはずだ。そして…………」
ラスは咲良を見遣る。
「その力は、お前の力となる」
ヒノトはニシっと笑うと、刀をギシっと掴んだ。
「そう言うことかよ……! 灰人の力……マジで意味分かんねえって思ってたけど、今なら断言できる。俺にこの力があって良かった…………。この力のお陰で……」
ボン!!
「仲間を救える…………!!」
ヒノトは、炎の刀を振り翳し、咲良へ襲い掛かる。
“岩斧・壁画”
邪気を放ち、明地は岩シールドを展開させる。
バリン!!
「岩シールドが…………割れた…………!!」
(今しかない…………!!)
ヒノトがそのまま突き進む瞬間、
「一度下がれ!! ヒノト!!」
ラスは、ヒノトの横を通り過ぎながらヒノトを前衛から一度引き下げた。
「何すんだよ!! 父さん!!」
“氷魔法・半月”
ラスも、ザッと氷の礫を三人に放つと、直ぐにその場を後退し、次にキラが前衛へと向かう。
“雷魔法・雷弾”
ダンダンダン!! と、キラの手から雷魔法が放出され、氷を付着された三人は、 “超伝導” の効果を受ける。
「ヒノト!! 相手がダウンしてる隙に行け!!」
ヒノトは、あまり理解が追い付かずにも、三人の眼前に迫り、刀を横薙ぎに構える。
(後退することを考えたら、坂本さんに教えてもらったあの技が使えるな…………)
“狐架・狼狽”
ガッ!! と、横に刀を振るいながら、刀の重心に合わせてヒノトは身体を後退させる。
その瞬間、刀からは炎の刃が飛び出る。
「ぐああ!!」
咲良、明地、伏見の三人は、キラに付けられた雷と炎による “過負荷” で吹き飛んだ。
「なんだ…………? すげぇ……戦いやすい…………」
「ヒノト、これが “戦争での戦い方” だ。ブレイバーゲームの四対四の公式戦とは違う。それに、今はヒーラーもいない。そうなると、一度の手傷で勝敗を分けることにもなり兼ねない。そんな時は、このように交代しながら魔法を放ち合い、相手の攻撃をできるだけ避けるんだ」
「一人が強けりゃいい……アタッカー、前衛だけが頑張る必要はない……ってことか…………」
「そうだ。その辺、キラは理解しているようだな。流石は三年にして、貴族院のトップになるだけのことはある」
明地、伏見がダウンする中、咲良は紅い目を光らせながら、ただ一人ふらっと立ち上がった。
「だが…………やはり “風の使徒” なだけはある。あの強固な風シールドは、この微弱な攻撃の連続では突破は厳しいだろう…………」
「じゃ、じゃあどうすれば…………!」
困惑するヒノトに、ラスは指を向ける。
「お前が救うと言ったんだろう。殺すだけなら俺の力だけで直ぐにできる。でも、本体の風の使徒から咲良を救い出せるのは、 “灰人” の力だけだ」
その言葉に、ヒノトは奮い立つ。
そして、再びニシっと笑った。
「キラ、やることは分かってるな! 他の二人がダウンしている今、あのシールドをぶち壊す!! リリム、グラム、お前たちもDIVERSITYの力を見せつけろ!!」
「は、はい…………!!」
その瞬間、ラスは一瞬で咲良の眼前に迫る。
「早い…………!!」
咲良は咄嗟に槍を構えるが、ラスの速度には追い付かなかった。
“氷魔法・新月”
ガキィン!!
一瞬の内に、咲良は凍り付いてしまう。
「水が付着されてないから強制的な氷付けだ! 一瞬で解かれると思え!! キラ!!」
「分かってます…………!!」
“雷狼・磁場”
ガッ!! と、キラは地面に斧を叩き付けると、巨大な穴が開き、そこから雷がバチバチと放出される。
ボン!!
「行け!! ヒノト!!」
ヒノトは氷付けになり、雷をバチバチと喰らっている咲良の眼前で刀を大きく構えた。
「私たちも、ちゃんとヒノトに合わせて強くなった!! 行くわよ、グラム!!」
「おう…………!!」
“闇魔法・由羅”
“岩防御魔法・花鳥”
ズォッ!!
「なん…………だ…………? 刀が……持ってねぇみたいに軽くなった…………」
その瞬間、グラムは声を上げる。
「ヒノト!! 倭国製の武器の重量はサイバーソードの比にならない重さだった! それを扱うことを見越して、俺の岩魔法を武器に掛けることで、その重量を軽くし、頑丈にした!! 思い切り振り下ろせ!!」
その言葉に、ヒノトは笑みを溢した。
「やっぱ、俺の仲間は最高だな…………!」
(リリム、グラム、そして、リゲル…………力、借りるぜ……………!!)
“陽飛剣・灰炎豪弾”
ゴォッ!!!
業火を纏ったヒノトの刀は、バリン!! と、勢い良く氷を砕き、そのまま咲良の風シールドを破壊した。
咲良の目から、紅の色は消えていた。
「よう…………待たせたな、咲良…………!」
「ヒノト……くん…………」
そして、そのままヒノトは咲良を抱き締めた。
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