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数日後。
紗季からの返信はなかった。
いや、たぶん“返せなかった”んだと思う。
そのことが、余計に胸を痛くした。
私は、何が欲しかったんだろう。
安心? 優先されること? それとも、“好きだよ”って言葉?
高校生のとき、教室で夕焼けを見ながらつないだ手。
あのときの温もりを、どうして今は感じられないんだろう。
(ねえ、紗季。私はまだ、あなたが好きだよ)
声に出せなかったその想いは、胸の奥でぐるぐると渦を巻いた。
でも――どこかで思ってしまう。
(もし、あの人に本気になったらどうしよう)
(私、もう届かないところに行っちゃうのかな)
夕暮れのアパートの部屋。
カーテンの隙間から差し込む光は、もうあの頃の夕焼けじゃなかった。
だけど、私はまだ待っていた。
あの教室の続きを、紗季と生きられる日が来ることを。