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「スモーカー…大佐……?」
俺の呟いた言葉を聞いて、スモーカーはこちらを見る。そして俺の顔を見ると少し驚いたような顔をした。
「あ、ありがとうございます」
「…………いや、気にするな」
そう言って煙を吐く。初めて会ったな。この人、基本はローグタウンにいるらしいし。マリンフォードでは見ないんだよな。いても見かけてないとかもありそうだな。海軍本部広いもん。
スモーカーは俺の後ろの男たちを一通り見てから、俺に視線を向ける。
「ガープ中将が海軍本部に連れてきたって言うガキだな?」
「あ、はい。そうです」
「名前は?」
「ジェイデンです。ジェディでいいです」
俺がそう答えると、スモーカーはそうか、と一言言った。
「ガープ中将は?」
「ローグタウンの本部の方にいるかと」
「ってことは1人なんだな、お前」
「そうです。書類を探すだけなので俺は観光していていいと言われて、それで……」
そう言い終わる前に、ぐぅ、とお腹が鳴る音が聞こえた。はい俺です。腹ペコなのがバレてしまうな……。
「腹減ってんのか?」
「はい、まぁ……」
「奢ってやるから、ちょっと付き合え」
「え、いいんですか?」
「ああ」
やったぜ。スモーカー大佐大好き。
近くのレストランに入り、メニュー表を開く。うーむ、どれが美味しいのかさっぱり分からん。俺が悩んでいると、向かい側に座っているスモーカー大佐が口を開いた。
スモーカー大佐が頼んだのはステーキセットだ。俺も同じので良いかな。注文をして料理が来るのを待つ。その間、俺の口からは自然と疑問が溢れていた。
「あの、どうして助けてくれたんですか?」
「……海軍が市民を助けるのは普通だろうが。まあ、一般人ではなかったがな」
「あはは。でもありがとうございます」
またお礼を言う。本当に助かったのだ。正直、あのままだと確実に面倒なことになってただろうし。
それから運ばれてきたステーキを食べながら話を続ける。なんというか、スモーカー大佐は思ったより喋ってくれる人だった。意外だな。もっと無愛想な感じだと思ってたんだが……。でも表情は無愛想なんだよな。
そんなことを考えているうちに食事は終わり、会計を済ませるのだが、本当にスモーカー大佐が全部払ってくれた。出すと言ったのに聞いてくれない。お礼の意味も含めてご馳走様をちゃんと言った。レストランを出て、スモーカー大佐に頭を下げる。
「今から基地の方に行くが、来るか?」
「あ、はい。ローグタウンも軽く見て回りましたし、そろそろガープさんのところに戻ろうと思っていたので」
そう言うと、スモーカー大佐はそうか、と言って歩き出した。
俺はその後ろをついていこうと思ったのだが、スモーカー大佐が隣を歩けと言ったので大人しく横に並んで歩くことにした。
ローグタウンの海軍基地に着く。スモーカー大佐は真っ直ぐに建物内に入っていった。俺もそれに続く。俺を見た海兵が誰か尋ねようとしたのだが、聞く前にスモーカー大佐が「俺の客だ」と短く答えた。
そしてそのままガープさんがいるであろう部屋まで連れていかれる。ノックして扉を開けると、そこにはガープさんとガープさんに何やら説明をしている海兵が1人いた。
「ガープさん、用事は終わりましたか?」
「ああ、バッチリじゃ。ジェイデンはもう観光は済んだのか?」
俺は首を縦に振る。するとガープさんはそうかそうか! と嬉しそうな声を上げた。
「それじゃあ帰るか。悪かったな、スモーカー」
「…いえ」
スモーカー大佐は何も言わずに俺たちの会話を見守る。俺も何も言うことはないので黙っていた。
そして俺たちは海軍本部に帰るために軍艦の方に向く。
「スモーカー大佐、改めてありがとうございました」
「あぁ」
スモーカー大佐がぐしゃっと俺の頭を撫でた。そしてすぐに手を離す。俺は一瞬何をされたのか理解できなかった。
「大佐?」
「大佐はいらねぇ、スモーカーでいい」
「い、いやぁ、さすがにそれは……スモーカーさんで許してください」
へへ、なんて笑う。スモーカーさんはそれを見て鼻で笑ってまた俺の頭をぐしゃぐしゃと雑に撫でる。うぇえ、髪が……。
「じゃあな、ジェディ」
「はい、スモーカーさん」
そう言って俺は軍艦に乗った。