テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
3,489
#ちょい腐
らむ
150
#生きてるだけで花丸満点❕
💮
3,196
放課後の教室には、西日のオレンジ色が傾きかけていた。
私は自分の机に突っ伏し、ぼんやりと瞼を閉じる。どれくらいそうしていただろう。ふと、顔を上げたときに目に入ったのは、黒板の端に書かれた<文化祭まで、あと3日>の文字だった。
「ねえ、七夏、そんなところで寝たら風邪ひくよ。早く帰ろ?」
顔を上げると、すぐ横に里奈がいた。高校に入ってからの半年間、ずっと一緒に登下校をして、お弁当もいつも一緒に食べている、私の大事な友達だ。
「もうそんな時間?」
里奈が私の腕を引いて、立ち上がらせようとした。
「ほら、早く帰ろ!」
里奈の手が私の手首を掴んだ瞬間、心臓が凍りついたように跳ねた。
その手は驚くほど冷たかった。私は思わず、里奈の顔を見上げる。
「里奈、手めっちゃ冷たいじゃん」
「私、冷え性だもん。てか、七夏の手が熱すぎるの! 寝てたから体温高いのかな」
里奈はニコリと微笑んだ。
「あ、そうかも。私、寝起きだもんね」
あくびを漏らしながら、私は里奈と教室を出る。ふと学校の中が静かなことに気づいて、違和感を覚える。
「もうすぐ文化祭なのに、みんな居残りしていないんだね」
去年なんて多くの生徒が暗くなるまで居残りをして準備をしていたはず。
「あー……そうだね。今年は準備が早く終わったのかも」
里奈の表情が曇っているように見える。どうしたんだろう。
……あれ、里奈って文化祭ではなにをするんだっけ。
私たち二年生は学年で演劇をする予定で、私はサブリーダーをしているからみんなの配役を覚えている。それなのに、里奈の役だけが思い出せない。
「ねえ、里奈」
「んー?」
「里奈ってさ、なんの役だっけ」
私の問いに、里奈が目を丸くする。
「役って?」
「え、文化祭の演劇の役だよ」
「……ああ」
不意に里奈が私の腕を再び掴む。
「忘れちゃった」
掴まれた手首が、痛いほどに締め付けられる。冷たかったはずの手が、今度は焼けるように熱く感じ始めた。
「わ、忘れたってそんなはず……」
「じゃあ、七夏の役ちょうだい」
低く気味の悪い声が頭に響き、周囲の空気を震わせた。
その瞬間、私の足元が大きく揺らぐ。
「お願い」
――違う。里奈は、私の友達じゃない。
「お願い、七夏」
そうだ、私は……誰かに背中を押されて階段から転げ落ちたんだ。
冷たい床の上で倒れていた私に、里奈が覆いかぶさるように顔を近づけてくる。
「ちょうだい。私と交換してよ」
い、嫌……! 来ないで……!
声が出ない。逃げたいのに体も動かない。
突然、誰かに腕を掴まれて、目の前が明るくなる。
すると、里奈は舌打ちをして、眩しそうに目を細めた。
「七夏! 大丈夫!?」
いつのまにか、私の隣に真っ青な顔をした日菜乃がいた。
「日菜乃……?」
「よかった! 七夏!」
「私……気を失ってたの?」
「そうだよ! 階段から滑り落ちて、全然目を覚さないから心配したんだよ!」
目に涙を浮かべながら、私に抱きついてくる。
周囲に里奈の姿はない。それもそうだ。
だって、里奈は三ヶ月前に亡くなっている。
もしも、里奈にちょうだいと言われたときに、いいよって言ったら……どうなっていたんだろう。
ぞっとして身震いをする。
「あーあ、あともうちょっとだったのに」
耳元で聞こえた声に、私は思わず悲鳴を上げた。
コメント
1件
うわぁ…最後の「あともうちょっとだったのに」でゾッとした!!😱💦 里奈ちゃんが三ヶ月前に亡くなってたって伏線、見事に引っかかってた… 「役ちょうだい」って交換おねだりするところ、手の温度が冷たい→熱くなる変化が不気味すぎて鳥肌たったよ🥶 日菜乃が助けに来てくれたときはホッとしたけど、まだ終わってないっぽいのが怖すぎる…続きが気になりすぎて今夜眠れないかも😭💕