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芙月みひろ
92
#王子
帰り道。駅に向かう主任の背中を、俺は追いかけた。
「……主任。さっきの……。少しだけでいいから、俺にも助けさせてほしかったっす。俺も母子家庭だったから放っておけなくて」
雨宮主任は足を止め、月を見上げたまま、ふっと口角をわずかに上げた。
「バカね。あそこであなたが動いたら、無駄な角が立つだけよ。木島はああ見えて前期の成績は上位よ。……私はああいう手合いのあしらいには、慣れているの」
彼女は再び前を向いて歩き出したが、去り際、夜風に溶けるような小さい声で付け加えた。
「……でも。横でずっと拳を握りしめてくれていたのは、ちゃんと見てたわ。……ありがとね、王子谷」
俺は、改札口に消えていく彼女の後ろ姿を見送った。
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