テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
匂いを辿って行くと、そこにはあの酒呑童子
酒呑童子が何かを作っていた。村から時々漂ってくるような少ししょっぱくて優しい匂いに似ていた。そのまま歩いていると
「矢ッ張腹減ってたンだろ?」
酒呑童子
酒呑童子は小皿に味噌汁を掬って口に寄せて味見をした。その小さな少年に向かってニッと笑って、小皿を差し出した。
「安心しろ、唯の味噌汁だ。」
「え、ぁ…いただき…ます?」
僕はその味噌汁というのを受け取り、おずおずと口に運んだ。僕は口に入った瞬間に目を見開いた。感じたことの無い温かさと優しい味が口いっぱいに広がって自然と涙が溢れてきた。初めて
「美味しい」
という言葉が口からこぼれ落ちた。すると目の前の鬼は
「そーかよ」
とぶっきらぼうに言ったが、なんだか口元が柔らかくなっているように見えた。
「オイ、飯にすっから持ってけ」
彼は釜から米を掬ってお椀によそって、僕の手に乗せた。
「は、はい!」
僕はパタパタと急ぎ足で先程いた座布団や卓袱台のある部屋に向かって卓袱台の上にお椀を置いてまた鬼の所を往復した。卓袱台の上には味噌汁、お米、そして焼き魚まで並んでいた
「うっし、終わったな」
彼は一息ついて座布団に胡座をかいて座る。
「ほら、食っていいぞ」
彼は箸を手に取ってお椀を持ち上げて食べ始める。
「……へ?」
僕はキョトンと目を丸くした。
(食べて…いい??僕が?本当に……?)
「早く食わねェと冷めちまうぞ」
彼はもぐもぐと食べながら言った。
「う、い、いただきます…」
僕は動揺しながらも目の前の酒呑童子
酒呑童子の箸の持ち方を見よう見まねで箸を持つが、なかなかちゃんと持てない。僕は諦めてそのままお椀の米を口に運んだ。
僕は初めてのお米の甘さに目を見開いた。お米ってこんなにも美味しいんだとまたポツリ、ポツリと涙が零れていく
「泣くほどかよ…」
彼は僕を横目で見て呆れたようにフッと笑って
「そういやァ、手前名前は?」
彼は箸を置いて卓袱台に肘をついた。
「え、ァ…僕の名前は、悠斗です」
「ふぅん、悠斗……か」
(何処かで聞いたことあンな……)
俺は少し目を細めてこの悠斗と名乗る餓鬼を見た。
(そう云や、此奴…何処かで見たような顔してンだよな……否、気の所為か)
「俺ァ、中原中也だ。まァ好きに呼べ」
「え、酒呑童子
酒呑童子さんじゃないんですか……?」
僕はキョトンとしながら彼を見つめた
「酒呑童子
酒呑童子は酒呑童子
酒呑童子だが、名前じゃねェな。通り名的なモンだ。」
「そう、なんですか………えっと…中原…さん?」
「さん付けすンな、中也でいい。」
「え、好きに呼べって……?!!」
僕は困惑した顔で目の前の中原中也を見た
「あ〜……まァ、善いだろ。」
彼は少し面倒くさそうにしながら、立ち上がって台所の床に置いてあった酒瓶を持ち上げてぐびぐびと口をつけて飲み始めた。僕は酒瓶を傾けて豪快に飲み始める中原中也を見て、少し呆れた。だが、なんだか不思議と悪い気持ちにはならなかった。ここから僕はどうなるのだろうか、そんな不安をよぎらせながらも、食事を終わらせた。
コメント
1件
第4話、拝読しました。酒呑童子=中原中也が悠斗に味噌汁を差し出す場面、もうたまらなく好きです。「そーかよ」と言いながら口元が柔らかくなる描写に、ぶっきらぼうな優しさがにじんでいて。悠斗が初めて「美味しい」と涙するシーンも、お米の甘さに驚く純粋な視点が胸に沁みました。名前のやりとりも絶妙な距離感で、続きが気になります。
389
#オリキャラ注意
透花
676
kurumi
5,340