テラーノベル
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僕は食事を終わらせた後、皿やお椀を重ねて片付けようと台所に向かう。
「オイ、手前はじっとしとけ。俺がやる。」
「え、でも……」
僕は眉を下げて中原中也を見た。が、中原中也は酒瓶を置いて僕の皿やお椀をひったくった。
「あ……う、ありがとうございます…」
中原中也は何も言わず、皿やお椀を洗っていた。水の流れる音だけが静かに響く。
「あの、中也………さん」
「あァ?」
「なんで、僕を……ここに?」
「さァな、唯の気まぐれだ。」
彼は手を拭いて、また酒瓶を持ち上げて座布団に胡座をかいた
「そう、ですか……」
「ほら、隣来いよ。」
彼は隣をトントンとぶっきらぼうに叩いて、酒瓶を傾けた。
(いきなり……隣?…いいのか?)
「し、失礼します…」
僕は困惑しながら隣に座った。
彼は黙々と酒を呷る。その静かさに僕は少し落ち着かなかった。僕はこのまま座っているだけでいいのか、もし、この後痛いことをされたら?またあの村に戻ることになるのか?そんなことが頭によぎった。
「オイ、悠斗。手前は……あの村に戻りてェか?」
彼は酒瓶から口を離して横目で僕を見た。
戻りたいわけがない。あんな村。でも、僕はこのまま中原中也さんと一緒に居る訳にもいかない。僕はどうすればいいんだ。僕は俯いたまま首を横に振った。
「そうかよ」
彼は淡々と答えた。
「オイ、悠斗風呂は?」
「え、ふろ……?」
「真逆……風呂を知らねェのか?」
彼は少し有り得ないという顔で僕を見た
「……その、知らないです…」
僕は気まずくて目を逸らした。
(ふろ、というものを知らないと、変なのかな…?……どうしよう、僕…変な子って思われた……?)
「別に知らねェなら、しょうがねェよ。風呂沸かしてくッからちっと待ッとけ」
彼は後頭部を少し掻いて立ち上がった。
少しして、奥の方から水を汲む音が聞こえてきた。
「……?」
僕はそわそわと落ち着かないまま中原中也を待った。待っていると、奥の方から彼の声が聞こえた
「オイ、悠斗!!!風呂沸いたから来い!!」
「え、ぁ…は、はいっ!」
慌てて僕は中也さんの声のする方へ向かった
「あの……来ました」
「おう、よく来たな。早速で悪りィが、脱げ」
「はい!…………へ?ぬ、脱ぐ……??」
「嗚呼、脱げ」
「え、いや、嫌ですよ?!!いきなり脱ぐなんて……!」
「風呂なンだから脱ぐに決まッてンだろ。湯が冷めンだろ」
中也は自分が着ていた着物を脱いで、全裸になった
「ちょっ?!!!な、なんで……!!」
僕は顔を赤くして目を逸らした。
「だから、風呂なンだから脱ぐに決まッてンだろ。手前もさッさと脱げよ」
彼は風呂場に入って、桶にお湯をくんだ。
(僕の体を見たら……きっと気持ち悪がられる…でも、このままでも怒られる……諦めて脱ぐしかないのか…?)
「あの、見ても……気持ち悪いって、言わないで欲しいです……」
僕は俯きながら言った。チラリと中也さんの方を見るとはぁ、とため息をついて「さっさと来い」と言わんばかりにじっとこちらを見ていた。僕は折れてボロボロの着物の帯を解いていった。僕が脱いでいる途中、中也さんは僕の体を見て顔を顰めていた。だが、気持ち悪いと思っているような顔ではなかった。まるで何かに怒っているようなそんな顔だった。
僕は恐る恐る風呂場に足を運んだ。
「ほら、ここ座れ」
中也さんは洗い場を指してそこに座るよう促した。
「…え、あ…はい?」
(座るって?どんな風に…?変に座ったら違うって怒られるのでは……?!)
僕が戸惑っていると、中也さんは痺れを切らしたのか僕の腰をグッと引き寄せて、適当に座らせた。
「遅せェよ。ほら、湯かけッから傷に染みて痛ェと思うが我慢しろ」
そのまま中也さんは桶に溜めていた湯を僕にかけた。
「ヴッ……!!!!?」
初めてかけられたお湯は丁度いい温度のはずなのに、傷にかかったところだけ熱く、痛かった。僕は思わず涙が零れ落ちた。
「…ッたく、あの村の連中め」
中也さんは不器用に僕の体を洗いながら呟いた。
僕が洗われる度に床には茶色く濁った水が流れていった。
(…こんなに汚れてたんだ…中也さんに洗ってもらうの申し訳ないな……)
僕がそう考えてるのを知らずに、中也さんは何も言わず、ただ僕の体や髪を綺麗になるまで洗ってくれた。
「悠斗、湯船入れそうか?」
中也さんがそう僕に聞いてきた
「ゆぶね……ですか?」
(ゆぶね……?……なんだろう?入るって……そのゆぶね?というものに?)
「…流石に傷に染みて痛ェよな、今日はやめとくか」
ふぅ、と息を吐いて彼は立ち上がって風呂場から出て置いてある布切れを取り、そのまま僕の方に向かって不器用に僕の体を拭いた。僕は彼に拭かれてる途中、彼の体にある様々な切り傷の痕を見つけた。まるで、僕と同じような体……でも、僕よりもしっかりしていてかっこよかった。
「悠斗、着るもンあのボロっちいのしかねェんだろ?なら今日は悪りィが、デケェだろうが俺の着物でも着とけ。」
彼が指を鳴らすと、廊下の奥から小さな女の子が畳んだ着物を抱えてこちらにやってきた。
「……どうぞ」
その少女はそれだけ言って僕に着物を渡して廊下の奥へと姿を消していった。
「えっと……あの子は?」
僕は中也さんを見上げて言った
「あ?彼奴はまァ、ここの座敷わらしみてェなモンだな」
「ざしき、わらし……」
「別に手前を喰ったりしねェから安心しろ」
彼は僕の手から畳んである着物を取って僕に着せた。だが、僕はある違和感に気付いた。僕はいつも村の人からは左の襟が前に来ると教えられたからだ。だが、この中也さんは右の襟が前になっていた。
「中也さん……襟、逆じゃないですか?」
「……あ”??」
彼はぽかんとした顔で固まったが、すぐに眉間に皺を寄せた。
「手前……其れ、自分が死人ですつッてる様なモンだぞ?」
「え……?」
僕は目を見開いて固まった
「知らなかッたのか?」
「だって……昔から村の人に教えられて……」
彼は僕の帯を締めて、舌打ちをした。
「彼奴らめ…碌な事しねェな……」
彼は村があるほうを睨んで、また僕の方を向いた
「次からは俺が教えてやる。取り敢えず、今日はもう寝ろ。布団は用意してある」
彼はぶっきらぼうに伝えて背を向けて歩いた。僕はその彼の背中をぽかんとした顔で見上げた。
(教えてくれる……いいのかな、僕なんかに)
僕は村の人以外に教えてもらうことなんてなかった、村で教えられる時は苦しいほどの痛みも一緒に来る。さっきのふろ?だって、美味しいご飯だって……こんなに、僕を見て優しくしてくれるのだって、全部初めて。中也さんに教えてもらう時は痛いのも苦しいのもない。
中也さんだけは……僕を追い出さずにいてくれてる……?それが本当なら、少し信じてもいいのかな……
コメント
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第5話、読み終えました……! 悠斗くんが中也さんに風呂に入れてもらうシーン、すごく胸に響きました。傷だらけの体を見て中也さんが怒ったような顔をしたところ、ただの気まぐれじゃないんだなって伝わってきて。襟の話も「村での間違った常識」をそっと教えてくれる優しさが沁みますね。悠斗くんが初めて「痛みのない優しさ」に触れた夜——中也さんがこれからどんなふうに彼を守っていくのか、続きが気になります🌷
389
#オリキャラ注意
透花
676
kurumi
5,340