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〈ニグ視点〉
あの時からの記憶は曖昧だった。
すぐに救急車とか警察とかが来て、俺たちは事情聴取を受けた。
あの時俺はなんて受け答えしたか覚えていない。
葬式で幸せそうに眠る二人を見て、そこで意識が途切れた。
気付けば病院だった。
どうやら急激に心労的ストレスを受けたせいで、体が持たなかったらしい。
数日入院して、今我が家に帰ってきた。
玄関の扉を開け、家に入る。
静かだ。ずっと前までは当たり前のことだったのに。
あ、そっか
うたいさんがいないんだ。
あの人は、俺の人生の一部になってしまっていたんだ。
「ぅ”、ぁ”ぁ”…」
床に座り込んで泣き出す。
涙は枯れきったと思ったのに、流れ始めてしまえばもう止まらない。
「ひ、ぐ、ごめんなさい、ごめんなさい…」
何のために謝っているのか分からない。うたいさんに?凸さんに?何でだ?
俺は…これからどうしたいんだ。死にたいのか?
どう、すれば…
ピロン
ズボンのポケットからスマホの通知音がする。
スマホを取り出すと、一件のメールが届いていた。
べる『思い出の場所、来て』
俺は何かに取り憑かれたかのように、まとまらない思考でフラフラと歩きだした。
…思い出の場所
あの二人の幸せの場所
そこにはべるさんだけでなく、さもさんもいた。
目元は赤くなっていて、さっきまで泣いていたと分かる。
何か話そうと口を開き、何も言えず言葉に詰まっていると、べるさんはココアを俺とさもさんに渡してくれた。
ベンチに座り、べるさんが話し出す。
べるさんは全てを皆に話した。
皆なんとなく察していたり、さもさんの落ち着かない態度から薄々気付いていたが、おどろくさんだけ何一つ気付いていなくてびっくりしすぎてフリーズしていたと、べるさんはその時のおどろくさんの顔を思い出したのか、くすっと笑った。
そしてすぐ真顔になる。
「これからさ、どうしようか」
途方もない何かを目の当たりにしたかのように、べるさんは力なく呟いた。
「…俺は」
そこで、今まで黙っていたさもさんが口を開いた。
「少しずつ、日常に戻れたらなって…いつまでも悲しんでたら、凸さんとうたいさんが心配しちゃうかもしれないから…」
…さもさん、強いな
俺は人生を諦めかけていたというのに、さもさんは前を向こうとしている。
その時、少しだけ強い風が吹いた。
『ありがとう、好きだったよ』
うたいさんの声、俺は反射的に周りを見渡したが、俺たち以外に人はいなかった。
「?どうしたの?」
べるさんが不思議そうにする。
さもさんは俺のことをじっと見つめていた。
「…俺、ちゃんと生きるよ。後悔はちゃんと背負わなきゃ」
二人は力強く頷いた。
ごめんね二人とも
まだ辛いけど、しっかり前向いて、生きて見せるから
…ありがとう