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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。マーサさん達を受け入れて二ヶ月が経過しました。マーサさん達には『黄昏商会』を経営しつつ『暁』の商売全般をお任せしています。
これによりロウやセレスティンの負担が大幅に軽減されました。それに合わせて内政専門の事務方もようやく教育が終わったので、『黄昏』の経営も今のところは順調です。
「お母さんの技術が評価されるのは嬉しいんですけど、もう少し人手を増やしていただければと思いまして」
領主の館の執務室でレイミとまったりしていると、エーリカが訪ねてきました。
彼女には被服担当として専用の工房を用意しました。剣の才能はもちろんありますが、仕立て屋の娘として母の技術を継承したいと。私はその願いを最大限に叶えました。ついでにロウと相談して綿花を大量に育てて材料に困らないようにしました。
……うん、『大樹』の影響か収穫された綿は光沢を持ち、加工すると良く伸びて柔らかくて頑丈な生地が出来るんですよね。
この生地をマーサさんに見せてみたら、新しい商材に成ると喜んでいました。
もちろん生地は販売にも使いますが、それを使ってエーリカ達が服を仕立てるようになると、それがまた飛ぶように売れてるんですよね。
私もいくつか服を仕立てて貰いましたが、軽くて頑丈。更に肌触りが良よくて私服として愛用しています。わざわざ他の街から商人が買い付けに来るレベルです。
「人手が足りないと?」
「はい、お嬢様。実は予約が満杯で新規のお客様には一年以上待っていて頂くことに成っていまして」
「それはまた、凄いわねエーリカ」
レイミも苦笑いです。
「分かりました。人はどんどん増えていきますから、手先が器用な人を最優先で回しますよ」
「感謝します、お嬢様。それと、お願いはもうひとつありまして」
はて?
「何ですか?エーリカ。私達の仲です。遠慮は無用ですよ?」
「ありがとうございます。それでその、お嬢様の公的なお召し物を私に作らせて頂ければと思いまして」
おや、私の服ですか。
「この服を、ですか?」
「はい、お身体に合っていないように見受けられますので」
私が公的な場で着ているのは、お母様から受け継いだ礼服です。
とは言え流石に十四歳から少しは成長したのでちょっとキツいのは事実ですが、出来れば着ていたい。でもエーリカの好意を無下にも出来ない。
「うむむ……ではエーリカ、この服を仕立て直してください。お母様の形見なので今後も着たいのですが、言われた通りサイズが合っていませんからね」
これが妥協でしょうか。
「その際はこちらの生地を使っても構いませんか?」
「もちろん、詳細はエーリカにお任せしますよ」
「ありがとうございます!」
「お姉さまだけですか?エーリカ」
「あっ、いえ。もちろんレイミお嬢様にも!」
あらら、慌ててる。
「レイミ、意地悪をしてはいけませんよ?」
「ふふっ、ごめんなさいエーリカ。別に怒ってないわ。私にも今と同じ服を仕立ててくれる?」
レイミは公的な場で赤い騎士服を身に纏っています。白光騎士団の制服を改造したものですね。
「はい!喜んで!」
うん、本人が良いならお任せしましょう。
さてここ『黄昏』では外部との取り引きを積極的に行っています。治安も比較的良く、シェルドハーフェンの外から商人が来ることもしばしば。彼等は『黄昏』で『暁』の農産物や生地、紙、石鹸、砂糖などを購入して他所で売りさばいています。
『黄昏商会』が直売店となっていて、輸送費などが掛からないから帝都などに卸している分に比べると安いので、それを狙ってきています。
マーサさん曰くそれでもしっかりと利益を確保しているのだとか。紙については、羊皮紙ギルドを無視して大々的に売り出すことにしました。文句があるなら実力でどうぞ、と言うやつです。
石鹸と紙は専用のチームを用意して大量生産を行っています。
「十六番街の様子はどうですか?レイミ。お義姉様の采配を疑うわけではありませんが、お隣ですからね」
夕方、専用の浴室でレイミと一緒に入浴します。魔石頼りでしたが、石炭を使ったボイラーの実用化により爆発的な普及を見せています。『黄昏』には大浴場がいくつも建設されているくらいには。
「ご安心を、復興は順調ですよ。ただ、最近小規模な小競り合いが増えてきました。下手人はまだ特定されていませんが、おそらく『血塗られた戦旗』です」
「まだ諦めていないと?」
「少しずつ動き始めたのかもしれませんが、今はまだ問題になるレベルではありません。お姉さまも気を付けてくださいね」
「もちろんです。軍備拡張に合わせて、私自身の鍛練も欠かしてはいませんから」
マスターの所にはほぼ毎日、サリアさんのところにも定期的に通って魔法を学んでいます。
私の特性は勇者と同じですが、汎用性は自在に魔法を操れるレイミに比べて大幅に下がりますからね。
「お姉さまの成長速度には驚かされます。私だって何年もかかったんですよ?」
「私は魔石を通して魔法を行使しているだけです。レイミのように術式を組み上げる必要な無いんです」
「それは……まあ、お姉さまは凄いと思っておきます」
「それで良いのです。使えるなら理屈は二の次です」
「ふふっ……んーっ!……やっぱり大きなお風呂は良いですね」
気持ち良さそうに伸びをするレイミ。当然その立派なお胸も激しく自己主張しています。なぜ姉妹でこんなにも違いがあるのか。
ライデン会長に測って貰ったところレイミは身長170cmと高くそれでいて体はスラッとしてお胸は豊か。燃えるような紅い髪を腰まで伸ばした紛れもない美少女。反論は許しません。
対する私は身長145cm……身長もお胸も同年代に比べても成長が不足しています。ファック。
「それより、お姉さま。聞きましたよ?マーサさん達を助ける時に空を飛んだみたいですね?」
「ああ、あれですか。やってみたら飛べました。前回の交易で魔石がいくつか手に入ったので、空を飛べるものを試作中です」
剣の柄では制御が難しいし、何より見映えが悪い。サリアさんがたまにホウキで空を飛んでいるので、それを模したものをドルマンさん、マスターと相談しながら試作中です。
「それがあっさり出来るお姉さまに脱帽です。流石は私のお姉さま」
「そんなに誉めても、膝枕くらいしかしませんよ?」
「それで十分ですよ」
いつもは凛々しいに、この甘えん坊め。もちろん夕食後に膝枕してあげたのは言うまでもありません。ただ疲れていたのか熟睡しちゃって朝までコースとは思いませんでしたが。
……膝がとっても痺れましたが、たまにはこんな平穏な一日も良いですね。