テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
しょっぴーが電話に出て、こっちを見てから置かれていたパソコンを慌てて起動した。
それから小声で『めめ、めめわからん』と呼ぶ。阿部ちゃんのパソコンのパスワードの事らしい。
この時ソファからのっそり立ち上がった俺は、冬眠明けのクマみたいだったとしょっぴーが言っていた。
迷いなくキーボードを打つと、パソコンが起動した。そしてほどなく画面に表示された『再起動プログラム完了』の文字。
🖤「再起動…プログラム?」
画面をぼんやり眺めていると寝室でベッドの軋む音がした。
しょっぴーが飛び上がり『俺ここいるから、めめ見てきて』と追いやる。
寝室のドアを開けるとベッドが膨らんでいる。
そこには、いつもの寝相の阿部ちゃんがいた。
🖤「あべちゃん」
口の中だけで呟いて、次に阿部ちゃん!と声が出て、枯れたと思っていた涙が溢れて、ベッドに駆け寄る。
呼吸をしているのを確認して、身体があたたかいのも確認して、そっと左手をとる。
ほんの薄っすら、指輪焼け。
アバターの阿部ちゃんは指輪焼けを完璧には認識しておらず、それがなかった。
本物の阿部ちゃんがちゃんと戻ってきたのを確信して、声をあげて泣く俺にしょっぴーが恐る恐るやってきた。
💙「え」
しょっぴーも慌ててこっちに来て、顔を覗き込み
💙「阿部ちゃん!阿部ちゃん!」
と俺を押しのけそうな勢いで抱きついて泣いた。
💚「……うん?」
阿部ちゃんが身じろいだので、先に俺を視界に入れて欲しくてしょっぴーと場所取りで軽く揉めている間に目を覚ました。
💚「あ…アバターの俺は?」
🖤「阿部ちゃん、阿部ちゃんおかえり。良かった」
💚「おかえり?えぇ?って翔太まで」
💙「あべちゃあぁん」
💚「なんでそんな泣いてんの…?」
どうやら、4日目からの記憶はないらしい。阿部ちゃんも弱ってしまったから、眠っている間にアバターは消去したこと、この開発はしばらく中止すると言っていた事を伝えた。
💚「俺やってみたいって、余計な事しちゃったな」
🖤「阿部ちゃんが元気に戻ってきてくれたからそれで充分。で、しょっぴーいつまでいるの」
💙「うるさい」
せっかく2人の時間を、と思ったけどしょっぴーが阿部ちゃんを離さない。それどころか、みんなに連絡したらしく次から次へとメンバーがやってきて阿部ちゃんはわけもわからず『良かった、良かった』と頭を撫で回されていた。
やっと静かになった室内。
🖤「ねぇ阿部ちゃん」
声をかけると、阿部ちゃんは既に俺の肩に凭れて眠っていた。
慌ただしくてつけっぱなしになっていたパソコンを切り、抱き上げて寝室に運ぶ。2人で寝転ぶなり、俺も激しい睡魔がやってきた。
🖤(あんまり寝られてなかったしな)
今回の事はもう忘れよう、と心に決める頃には深い眠りに落ちていた。
終
コメント
10件
しょっぴーが可愛い💕ずっとそれだけw
戻ってきて良かったです〜😭😭😭 指輪焼けで気づくとは❤️❤️❤️
よかったぁ…指輪焼け…素敵やん🖤💚