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───紀元前245年。中華西方の国 “秦”。
とある屋敷の太陽の光が包み込む中庭。
そこでは、剣を握った少女を取り囲み、侍女2人と老婆が何やら言い争っていた。
「はあ…」
この少女の名は──。大臣の父を持つまあまあなお嬢様であり、言い争いの元凶である。
「女は戦に出るものではないでしょう!尚嘉様、何故止めないのですか!?」
「淑女教育をなさって、名家に嫁ぐのが女の幸せです!」
そして、彼女達は先日入ったばかりの新人侍女。
その新人侍女に言い詰められている老婆は尚嘉。──付きのばあやだ。
ちなみに、先程放たれた
「女は戦に出るものではない」
「淑女教育をして、名家に嫁ぐのが女の幸せ」
この二つは──にとって呪いに近い何かである。
「それは旦那様もお認めになられていて…」
「旦那様は既に諦めていらっしゃるのです!それを認められているなんて…」
尚嘉はその穏やかで、平和主義な性格から、威圧的な態度を取られたり、喧嘩をすることが苦手だ。
小さな赤ん坊がスヤスヤと寝ているだけで涙を流すし、たった一輪の花が咲いたのを見るだけでも泣く程、涙脆い一面もある。
そんな尚嘉に育てられた──は、内心少し苛立っていた。
「さあ、──様、お怪我をされては大変です!」
「部屋に戻り、殿方に相応しい女となりましょう」
そう言ってむせ返る化粧と香を焚き、貼り付けの薄っぺらい笑みを浮かべた侍女が近寄ってくる。
(なまえ)はたっぷりと侍女の顔を見た後、素手で彼女達を打ちのめした。侍女達はその場にうずくまり、咳き込んでいる。そらそうだ、思いっきり腹を殴ったのだから。
「な…何をするのですか…!?」
「…言い過ぎ、やかましい、不愉快」
侍女達はあり得ないものを見るような目で彼女を見る。その瞳に──の指がピクッと動いた。
幼い頃、事故に遭った時のこと。薄い記憶の中で誰かにそんな目で見られた。
(嫌な思い出だ)
侍女達は腹を押さえながらその場を後にする。
すると、侍女達と入れ替わるように足音を荒らしながら伝令が駆けつけた。
その只事ではない様子に──は察した。
「…王弟のか」
「え?はっ、はい!」
目を閉じれば、とち狂った夢を志し、それを共有した秦国王の顔が浮かぶ。
馬に跨り、全速力で屋敷を飛び出した彼女の心の中は、
(仕事増やすな、クソ王弟)
だった。
これは、たった1人の王に全てを捧げたにも関わらず、名を刻まなかった女の話。
───国内統一編 / 1章「王都奪還」───
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コメント
1件
うわ、2話目もめっちゃ好み…っ🖤 秦の時代設定と、主人公の「やかましい、不愉快」の一言で侍女を殴り飛ばす強さ、たまらん。 「呪いに近い何か」って表現も刺さるし、王弟に振り回される感じももうすでに癖になる。 この子の過去の“嫌な記憶”も気になる…続き、静かに待ってます。