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あめ猫
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セブンはリビングのソファに深く沈み込んでいた。
部屋は暗い。
モニターの残光だけが、わずかに輪郭を浮かばせる。
履歴は消した。
トレースも遮断した。
痕跡は——ないはずだった。
それでも。
さっきのメール。
——見つけた。
「……っ」
指先が、無意識に強くなる。
髪を乱暴に掻く。
Noliが嗅ぎ取った。
“干渉”。
しかも、あの言い方。
——遊んでるみたいだ。
「……ふざけんな」
そのとき。
インターホンが鳴る。
短く、無機質な音。
セブンは顔を上げる。
一瞬だけ迷って、
立ち上がる。
ドアを開ける。
そこにいたのは——エリオット。
ピザの箱を持っている。
「……何の真似だ。頼んでない」
エリオットは肩をすくめる。
「いや、俺もおかしいと思ったんだけど」
箱を軽く持ち上げる。
「注文入ってんだよ。住所ここで」
「電話も通じないからさ、直接来た」
セブンの目が細くなる。
ポケットからスマホを取り出す。
画面を見る。
——着信履歴、なし。
発信も、なし。
「……」
沈黙。
Noliは、エリオットの事も既に知っている。
胸の奥に黒いものがじわりと広がる。
エリオットは軽く笑う。
「頼んでないなら、いいや。店戻るわ」
くるり、と背を向ける。
その背中が。
捕まえないと消えてしまいそうで。
「待て」
低い声。
エリオットが振り返る。
セブンは、一歩近づく。
距離が、一気に詰まる。
「——?」
言葉が出る前に、
唇が触れる。
一瞬。
ほんの、一瞬だけのキス。
エリオットの目がわずかに見開かれる。
ピザの箱が、ぐらりと傾く。
「おっと……」
落ちかけて、慌てて持ち直す。
その間に、セブンは離れている。
視線を逸らしたまま、ぽつりと。
「……クールキッドが言ってた」
「“パパが好き”って」
間。
「……本当だ。だから」
エリオットの視線が、少しだけ鋭くなる。
「どうした?」
静かな声。
「なんか様子、おかしくないか」
セブンは答えない。
一瞬だけ、迷って。
でも、すぐに。
「いや」
短く。
「何もない」
空気が、重く落ちる。
エリオットはため息をひとつついて、
少しだけ近づく。
「……嘘つくの、下手だな」
セブンの肩が、わずかに揺れる。
「クールキッド絡みだろ」
図星。
沈黙が、それを肯定する。
エリオットは視線を外さない。
「俺にも関係ある」
「違うか?」
セブンの手が、無意識に強く握られる。
言い返せない。
「……」
長い沈黙。
その奥で、
PCの画面が、かすかに光る。
——新着通知。
誰も見ていないはずのそれが、
静かに点滅している。