「明日……脱出だね、アイビー」
「うん。楽しみっ!」
「……不安じゃないのかい」
明日は待ちに待った脱出だ。
そして、アイビーが贄に出されるはずだった日でもある。
僕の心は不安で満ち溢れている……だって、見つかれば死ななければいけないから。
だけど、アイビーの目は僕と違って期待と、嬉しさで満ち溢れている気がする。
「全然?むしろ超楽しみだよ!」
「だって……見つかれば死ななくちゃいけないんだよ?僕達、一緒に思い出を作れなくなっちゃう」
そう言うと、彼女は綺麗な瞳を見開いて、同時にくすくすっと可笑しそうに笑い出す。
なぜ笑うんだろう、と僕はムッとして頬に空気を貯める。
「ごめんごめん……死ななくちゃいけない、なんて言わないでよ。愛する人に殺してもらえるんだ。私は幸せな限りだよ」
「……でも、思い出はっ」
作れない、そう言おうとした瞬間、彼女の細長くて白い綺麗な人差し指が僕の唇に触れ、微かに揺れてひんやりとした感触が伝わる。
そしてその人差し指を彼女は自分の唇に触れるか触れないかのところで止め、しーっと息を吐き出した。
口は狐を描いている。
出た、アイビーのイタズラな笑みだ。
「ねぇ、スカビオサ知ってる?こんな噂」
「……?噂?なんの?」
「相手と心中をするでしょ?そうするとね?来世でその人と会えて、幸せになれるらしいの」
「そうなの?……でも、来世なんて」
「来世なんてってなんだい。来世に期待なんかしてないって?」
「……まあ、そうなる」
ふふっと彼女は頬を赤らめて笑う。
かわいい、と直球にそう思った。
「なら、やりたいこと、今日全部やる?」
コメント
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ちがったらゴメンだけど須藤うぃさん?
僕来世wrwrdの世界に行きたい